愚か者の犯行
「ええと、どこだったかなぁ」
自分が縦横無尽に開けていった扉を閉めていきながら、嘘は部屋を探していた。
紙はまだ濡れている。
このままだと歪んだ状態で固まってしまい、後に読み返すのが面倒になる。
それは少し避けておきたい嘘だった。
しかし、自分がやったこととはいえ、扉が開きすぎている。
誰かが居る部屋はさすがに扉が閉じているが、他は開いたままだ。
「ちょっとやりすぎちゃったかなぁ」
ぼそぼそと嘘は呟く。
しかし、この言葉は嘘である。
自分では大したことはしていないし、この研究所ではありがちなことだろうと考えていた。
扉を閉めると、見覚えがあった。
嘘は喜びながら扉をもう一度開く。
書類を乾燥機に適当に置き、部屋の空気を存分に吸い込む。
室内には薬品が数個おいてある。
その中から、比較的被害の少なそうな薬品をつかみとり、ポケットに入れる。
自分のような馬鹿がひどい被害を出しては元も子もないからだ。
嘘は外を見渡してから室内をあとにする。
部屋の扉がしまった瞬間に、棒が飛んできた。
とっさに避け、嘘は背後にぶつかって跳ね返る棒をつかみとった。
「よぉ、さっきは世話になったじゃねえか!」
赤い髪の女は低い声でそう言った。


続く
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