圏外からお届けします
楽は眠たそうに起き上がる。
ゆっくりと周囲を見渡し、殴られた場所を撫でる。
赤髪の女に殴られた場所が少し痛む。
先ほど防火扉で進行を阻害したが、あの火力の持ち主を放置するのは少しどうかと思わなくもない。
ダメージの回復はそれほど速くないが、痛みがあまり伝わってこないため、本人の感覚としてはあまり重症は負っていないようである。
「いってて、楽しくねえや」
楽は自分の名前になんとなく即した愚痴を吐く。
電気棒の充電はとうの昔に切れてしまったのだが、充電しようにも先ほどの階層からは大きく距離が離れている。
他の部屋に充電装置があるかどうかは定かではない。
そういった博打に出て、もし充電装置があったところでただ武器を失うだけである。
今持っている武器を最善の状況にしておきたい気持ちはあるが、今の武器を失ってまでしてやることではない。
楽は冷静であった。
少し痛みがあるので、壁にもたれて休む。
根本的な解決は一切なされていないが、今はダメージの回復に努めるべきだろう。
涅槃その他数人が今どこに居るのかはわからない。
情報収集のために、と楽は電話のダイヤルを回した。
圏外。
繋がらない。
楽はため息をつき、電波を探し求めて歩きだした。

続く
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