οの早合点
悟は手にした資料と人々の顔を照合していた。
緻密な鉛筆画は完成度が高く、同じ顔の人間がいれば、すぐに見つけられるだろう。
悟は自分の手に入れられるかもしれない手柄に浮き足立っていた。
足元を掬われかけないほどに。
食堂にいる数人に似顔絵を見せれば、数人は見たような気がすると答えた。
近い、近付いてきている。
にやりと笑う姿は涅槃に酷似している。
白衣の裾を払い、再び研究機関のだだっ広い廊下を歩いていく。
途中で、先程壊されたとおぼしきカメラを修理している者を見かけた。
こうしてこの場所は、免疫を保つように修復されていくのだ。
さながら人体の一部のようだ。
ともすれば自分は赤血球の一つだろう。
悟はかつかつと廊下を靴で叩きながら、のんびりと歩いていく。
途中で建物が傾きだしていることに気付くようなこともなく、ただ、それが当然であるように歩き続けていった。

続く
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