ξの放浪
憂はその名の通り憂えていた。
特に意味もなくアンニュイな気持ちに浸かっていたのだ。
意味などない、だがしかし、彼にとっては憂えていることが存在意義であり、存在理由なのだ。
途方にくれつつ、瓶に合致するスプレーパーツを探索している。
小瓶はなかなかに小さく、今までに見つけたものでは大きすぎて液体がこぼれかねない。
先程少しだけ瓶の中身の匂いを嗅いでみたが、ひどい刺激臭がして、涙がこぼれた。
どうやら催涙スプレーらしい。
確証はないのだが、性格の悪い主人のことだから、そういったものであることは想像するに容易い。
憂はながったらしい前髪を払うこともなく、ゆらゆらと廊下を歩いていく。
時折倉庫を見つけては入り込み、倉庫の中からパーツを物色する。
ふと、ちょうどいい大きさの瓶を発見し、憂はそっと中身の詰め替えをはかることにした。
さすがに手袋なしは危険だろうと、周囲から手袋を探しあて、手につけた。
赤い液体がとろりと少し大きな瓶に流し込まれていく。
憂はそれをぼんやりと眺め、最後の1滴が落ちたところで瓶の蓋をしめた。
前の瓶は倉庫に置き去りにしてしまった。
さて、次はどこにいこうか?

続く
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