楽しいζ
楽はいつまでも来なかった。
先ほど呼んだはずなのだが、と懐中電話に手をかけた時、研究室の扉が開いた。
長めの黒髪をサイドテールにした前方の男は楽という。
あまり似合っていない白衣と、適当に選んできたのだろうスリッパがどうにも精神年齢の低さを感じさせる。
「……時間遅れてますよぉ……」
ぼそぼそと呟く涅槃には目もくれず、楽は研究室内の機材ばかりを見ている。
思えばこいつが最大の失敗作かもしれない。
涅槃はため息をついて、話を聞かない三人目に語りかける。
「嘘と喜には話しましたけどぉ……少々荒事の予感なんですよねぇ……」
聞いていない。
いつもこうだ。
そもそも期待はしていなかったが、これほどまでに話を聞かないとなるとどうにもならない。
試薬の瓶が詰まった棚が気になるらしく、楽はじっとそこばかりを見ている。
「そこは開きませんよぉ……」
そう言うと、今度は聞いていたらしく、至極残念そうな顔でこちらを向いた。
精神年齢が見た目よりも限りなく低く出来てしまったのは誤算だった。
自分と顔だけは似ている楽はともすれば苛立ちを起こす原因でもある。
「……まあいいです、必要があれば呼びますので…………」
ため息をつきながら涅槃は語る。
にこっと笑って立ち去った楽は、スキップをしていた。
全く、緊張感というものがないのか。

続く
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