嘘つきのε
「ところで、涅槃さんはどう思いますかねえ、今回の」
ぼそぼそと語るのは嘘である。
返答は望んでいないだろうことは自分の性格上理解している。
長い黒髪をポニーテールにまとめた目の前の男は、自分にとてもよく似ている。
嘘と名付けたのは嘘つきだから。
至極単純だが、この程度のネーミングで構わないのだ。
何せ、使い捨てなのだから。
「邪魔が入るのは望ましくないですねぇ……愚生もアレは必ず欲しいのですよぉ……」
「ふーん」
遮るように嘘は呟く。
やはり最初からどうでも良かったのではないか。
自分に似ているからこそ、わかることがあり、自分と違う考えや行動を起こされるのは不愉快でしかない。
だがしかし、涅槃にとっては嘘の精神は掌握できるものであり、どこまでしか考えが及ばないかまで理解している。
そういう風に作ったのだから。
「……嘘、喜はもう行きましたよぉ……貴方は行かないんですぅ……?」
沈黙。
ポニーテールを乱雑にほどき、嘘は更に自分に近づく。
「嫌だなぁ。行かないよ。だってまだ何も起きていないもの」
また嘘をついている。
こいつの嘘は面倒だ。
行かないなどと言いつつ、室内を出ていく嘘は滑稽であった。


続く
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