茜色の誓い/カナタマ
 
 
「ねぇ、タマキ君。遊園地、行かない?」
 
どうしてこうなったのだろうか。そもそもはこのカナエの一言から始まった。
青々とした爽やかな冬晴れのとある休日。成人男性二人組が平日の遊園地を回っているその光景は、正直言って実に寒い、とタマキは心の中で独りごちた。
平日というだけあってそこは人も疎(まば)らで、乗り物は乗り放題。休憩に丁度よさそうなカフェやレストランはガラガラ。遊園地なのに、子どもの声も絶叫する女性たちの悲鳴も少ないやたらうるさすぎないその空間。
 
「で、なんで遊園地なんだ」
「ん?んー…」
「たまの休日くらい…」
 
二人きりでゆっくりのんびりしたかったのに、というタマキの言い分は飲み込まれる。そんなこと恥ずかしくてとてもじゃないがタマキには口に出す勇気はなかった。
一方のカナエはニコニコしながら楽しそうに、特に宛てもなく園内を回っている。メリーゴーラウンドやコーヒーカップを見ては子どものように無邪気にはしゃいで、乗ろう乗ろうとせがんだ。大の大人、しかも男が二人で夢のような乗り物に乗るのはとても抵抗があったが、次第にカナエのペースに流されて少しだけ楽しんでいたのも事実である。
 
「あっ、あれ!次、あれ乗ろう!」
「げっ…」
 
カナエが指差したのは、この遊園地最恐と謳われている絶叫マシーンだった。さきほどジェットコースターに乗ったばかりだというのに、なんてタフな男なのだろうとタマキはげんなりする。仕方なく付き合うことにしたが恐怖からか膝が微かに笑う。しかしここでカッコ悪いところを見せるわけにはいかないとばかりに、いきり立ってタマキはその絶叫マシーンに臨んだ。
降りた瞬間、腰が抜けてふらふらとよろけカナエに抱き止められるという無惨な結果に終わったが。
 
「大丈夫?」
「…むしろなんでおまえは平気なんだよ」
「え、楽しくない?高いところから落ちる感覚とかさ」
「……」
「タマキ君、苦手だったかな」
 

 
 
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