「イドルさん?」
「どうした」
「え?いや、どうしたって…」

目の前の男を見る。何かが違うと、どこからか聞こえたような気がした。
でもどこが違うのかはわからない。そもそも本当にどこか違うのか。
いや、そんなはずは。

「調子でも悪いのか?」
「あ…いえ、大丈夫ですよ」
「…そう、か」

何か忘れてるような。ふわふわした感覚が少し煩わしいような。そんな。
でも目の前で手を握っているのは確かに見慣れた相手で。
…ふと繋がれた手の暖かさに夢心地で、つい頬が緩んだ。
ついっと相手のイドルの顔を見れば、表情が薄く口布をしていても微笑んでいるのがよくわかる。

「あ、れ」

目の前の人は誰だったか。
見知った相手だが、彼は、口布などしていただろうか。

「イドル、さん」
「なんだ?」

彼はこんな話し方だったろうか。

「…っ、あれ、」
「何を、泣いてるんだ」

彼は、イドルは、どんな人だったろうか。
思い出せないまま、ぱちんと何かがはじけた。




はっと目が覚める。
外はまだ少し薄暗く、ゆっくりと日が昇り始める時間だった。
部屋の中で一人、先ほどの夢を思い出して浅く息をつく。
妙に嫌な夢だった。嫌ではないが、いや、やっぱり嫌だった。
寝汗がひどく、少しばかり頭が痛い気もして、ため息をついた。

「…はぁ」
「ため息つくと幸せが逃げるぞ」
「は…?」

予想だにしない声にぱっとベッドサイドに目をやれば、夢の中で見たのと同じ格好に同じ喋りの彼がいた。気味が悪いと、寝汗とは違う冷たいものが背筋を降りていった。

「…いどるさん」
「ん?」
「…悪い冗談ですね、それ、ほんと」

どこかむしゃくしゃして、その口布をがっと引き下げれば、きょとんと目を丸くする。いつもの彼らしい反応を垣間見て、どこか安心感にも似たものを感じた、ような気がした。

「…神父様?」
「はやく、戻してくださいよ」
「気に食わないの?」
「落ち着きません。」
「いつもどおりでいいの?」
「……はい」

じゃあ、そうするよ。とそれはそれは嬉しそうに笑った。
つられるようにか、呆れてか、頬が緩んだ。


【まほうのじかんはもうおわり】





「イドルさんテンション高くてウザイ」
⇒「じゃあやめてやるよ!!(`;ω;´)」
⇒「え、まじで」
⇒「あぁ。これくらい朝飯前だ(キリッ」
⇒放置⇒「もう分かりましたから…分かりましたから…」
⇒「(不貞腐れてるからやめない)」
⇒その後なんか和解 ←イマココ!


お題:まばたき様


mae//tugi
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