足元のソレに垂直に杖を突き立てる。なにかパーツがひび割れる音が聞こえた。先ほど右肩の関節をくだいたので、その片腕は機能を失っているようだ。打ち付けた時に命令中枢もどこかに損傷をきたしたのか、立とうとしても芋虫のようにのたうつばかり。その目ばかりは獰猛さを秘めたままだが、壊れかけの機械を相手にしてもなんの面白みもない。
「ぐっ…が……ぁ、ああああ!」
「やれやれ、もう終わりか」
腹部に突き立てた杖を引き抜いけばぱらぱらと粉砕された部品が宙に舞った。すかさず動こうとするソレの鬱陶しい目と視線が交わる。つい口元が歪んだ。右目に向かって振り下ろす。ややほかの器官よりも柔らかい感覚の直後、がつ、と床にあたり杖は止まった。さすがは偶像。血の代わりに流れ出たのはそれに模して作られたオイルだ。それらしくやや赤い色をしているそれは表面用に作ったであろうもので、後から後から流れ出るのは黒々とした液体だ。この様子だと畳はダメになっただろう。ばちりと目の奥がショートを起こしたのを見届け、その小奇麗に作られていた顔を軽く蹴飛ばす。ぎしりと音がした。壊れてしまったのだろうか、やはり人が作った型は脆いと思いながらその胸部を踏み潰す。これで動けまい。粗大ゴミが増えてしまった。
「ゴミ袋でもとっってくるか……っ?」
「……」
「…まだ動けたのか、流石にしぶといな。」
胸元を貫通した刃を体外に押し出す。殆どを壊されてもなお立てたらしいそれには驚いたが、言葉を発する器官もことごとく壊れたからか片目で睨みつけてくるだけだ。このまま残った目も潰してしまおうかと思ったが、それを実行するよりも早く、動くたびに部品が欠落していく体で素早く動き、姿を消してしまった。床にいくらかの部品や破片、それからオイルを撒き散らしたままで、これを掃除をしなくてはならないと思うと…随分と鬱陶しい襲撃だった。
「偶像ごときが面倒事を…」
 だが、激昂した人形というのもなかなか愉快だった。今度からはあの神父にへばりつくだろうから、ちょっかいもかけにくいかもしれないが。
「そろそろ夕食を用意しないといかんな…」
掃除はその後だ。…ぱたん、と静かに襖が閉められた。



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オイル踏んで滑って転ぶ黒田っていうネタも。
イドルが黒田に一度目の殴り込みをした時のお話。
現実世界においては、イドルの方が弱体してしまうし、黒田の方が経験豊富なので、ボロボロにされる。
電子空間とかならイドルさん圧勝なのにね!

mae//tugi
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