エピローグ
「お付き合いを始めるにあたっての約束事項。まゆが高校卒業して、かつトップアイドルになるまで手は出しません!」
「頭を撫でるのはダメですかぁ……?」
「そ、それくらいなら……。今までもやってるし」
「手を繋ぐのはぁ……?」
「そ、それもまぁ……。やったことあるし」
あの時はまゆが「人混みではぐれそうですぅ……」と言ったから手を繋いで歩いたわけだが、今思い返すと……。
「……ねえまゆ、あの時わざと私がそうするよう仕向けた?」
「さぁ……?」
疑わしげな眼差しを向けると、まゆは素知らぬ顔でかぶりを振った。
ま、まあ。とにかくだ。
「色恋にうつつを抜かしてお仕事や勉学がおろそかにならないように、最低限これくらいは決めておかないとね」
まゆはもじもじとこちらを伺う。
「あの……キス、とかは……?」
「……どう考えてもダメ」
「夢の中ではぎゅって抱き寄せたらキスをしてくれたのに……」
なぬ!?
動揺が走る。あれは私の夢だと思っていたけれど……誰の夢だったの!?
今更気恥ずかしさが込み上げてきて頭を壁に打ち付けてしまいそうだ。
「冗談、ですよぉ……?」
うっとりと微笑むまゆの左腕には相変わらずの真っ赤なリボン。
そして、私の左腕にも同じものがあった。
「ねえ、これ本当にしないとダメ? 服の下だからまゆからは見えないでしょうに」
まゆは恥ずかしそうに首を振る。はいはいそうですか。でも、こういうわがままなら大歓迎。嬉しそうな表情が可愛いと思ってしまう自分がいて、それでも構わないと思えるようになったのだから、私はよほどこの子が好きらしい。そう、認めてしまうと一気に気が楽になった。素直って大事。
「赤いリボンは、貴女とまゆを繋ぐ愛の糸です……♪」
まゆと指を絡め、しっかりと、繋ぐ。ここにいることをお互いに確かめ合うために。
これは誓いだ。
きっとこれから困難が待ち受けるだろうけれども、二人でなら乗り越えていける。
「まゆの人生はもうプロデューサーさんのものなんですから、これからも……ずーっと貴女好みのまゆにプロデュースして下さいね♪」
夢も現実も、共にあるために。
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