ありがとう、青春
告白された体育祭の日から半年。
私とゆうやは本当に仲が良くて、そりゃクラス中に茶化されるし恥かしい思いもしたけど嬉しさの方が勝っていたと思う。
憧れてると思ってた先輩は廊下ですれ違う度に女々しくも私に話しかけてこようとしていたけど、いつだって隣にゆうやが居たからどうにか逃れることが出来た。
2人で歩いた駅までの道のりは、ゆうやの部活を待っていたせいでいつも教室からしか夕日を見れなかったけど、その代わり綺麗な月が追いかけてくれたり。
冬は冷えるねって繋いだ手の温もり、また明日っておでこにしてくれたキスの感触、初めて作った手作りチョコレートもバレンタインに綾かって渡したら箱の中はぐちゃぐちゃになってたのに美味しいって食べてくれた笑顔とか。
全部が愛しい思い出で、この先もずっと何かにつまずいたり、挫けそうになった時は元気つけてくれるに違いない。
「…ゆうや、合格おめでとう」
卒業式にゆうやが出席出来なかったのは遠く離れた大学へ歩みを進めると決めた彼の合格発表の日と重なっていたから。
丸めた卒業証書を手に駅まで迎えにいったら、私の名前を呼んで腕を広げたゆうやがホームにいて。
迷わずそこに飛び込むと、受かったよって嬉しそうに笑った。
だから良かったねって、よく頑張ったねって頭をナデナデ。
ゆうやの笑顔が見れるだけで私は何倍も、何十倍も強くなれる気がしたんだ。
「なまえ、あのさ、」
「頑張ってね」
続く言葉は聞きたくなくて、態と強がって見せたけど本当は、おめでとうって思う自分と離れたくないって嘆く自分がいるの。
もっと一緒に居たい、3年間も一緒に居たのに最後の半年しかゆうやを愛する事が出来なかった。
もっと早く気付いていればよかったんだ。
寄り道ばっかしちゃって、ごめんね。
「なまえ…笑わないで」
「…なんで?」
「俺は…今しか、なまえの涙を拭ってあげられない」
「……っ」
高校を卒業したらお互いの夢を叶える為に頑張るって約束した。
叶うまで会わないって、堅く小指を結んだ。
ゆうやの前で泣きたくなくて、自宅の枕は涙の跡でいっぱいになっちゃったけど。
「いいんだよ、泣いて。俺がいるから」
「ゆうや…好きだよ、大好きだから」
「うん」
「あっち、行っても、頑張って」
「…なまえもね」
ポロポロ零れだす涙をゆうやの指が拭って、唇に運んだ。
そしたら、甘いねって微笑むから私はもっと強くなりたいって思った。
たくさんのありがとうと、たくさんのキスをくれるゆうやをこの先もずっと私は嫌いになる事は出来ないだろうから今だけは甘えさせてください。
「なまえ、俺の事好きになってくれてありがとう。俺も大好きだよ」
4月、桜が舞い散る頃。
暫くの別れを惜しみながらゆうやは遠く離れた街へと向かう。
再び再会する日を待ち遠しく、楽しみにしながら。
end
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