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―6月某日


『静雄!臨也アメリカ行くんだって!』

電話越しで大きな声を出す新羅にうるせぇと一言言ってやる。
それでもなお電話口で騒ぎ立てるもんだから俺は少し携帯を遠ざけた。

『どうするんだい!?しかも今日出発らしいよ。』

あぁ、とそっけない返事をするとおかしいと思ったのか途端に静かになった。
もしかして知っていたのか、と聞かれそれにも短い返事をしておいた。
すると再び騒ぎ出した。

『で!?どうするんだよ。』

用件はそれだけだな、と確認して俺は携帯を切った。
ため息を1つついて俺は腕時計に目をやる。
出発まであと少し。








「シーズちゃん!」

搭乗の手続きを済ませ、身軽になった臨也が戻ってきた。
俺は機内に持ち込む鞄を持ってやり、搭乗口に向う。

「誰から電話?って大体想像つくけど。」

くすくすと笑いながら言う臨也はきっと幼馴染を思い出しているんだろう。
電話は新羅からだったが、門田も心配しているに違いなかった。

「忘れ物はねぇか?」

鞄を渡してやるとごそごそとチケットを取り出して大丈夫と笑ってみせた。
これから2年会えない、そう思うと繋いだ手を離したくなくなる。
臨也の薬指には俺のリングが嵌められている。
もう一度、この手を握ることが出来るようにと願いゆっくりその手を離した。

「じゃあ…行ってくるね。」

「あぁ、行って来い。」

搭乗ゲートを潜ろうとした時、臨也はなぜかこっちに戻って来た。
どうかしたのかと心配してしまう。

「忘れ物。」

そう言って俺に抱きついて触れるだけのキスをした。
そんなベタな行動に俺は顔を赤くしてしまった。
ちくしょう、なんて可愛いことしやがるんだ。

「あはは、シズちゃん可愛いー。行って来まーす!」

「臨也帰ってきたら覚えてろよ!」



こうして俺たちはさよならをした。
片思いの相手に踏み込めなかった自分に。
相手を思い身を引こうとする自分に。

そして、また2年後に会えることを願って。


―END―


完結です!
思いのほか長くなって吃驚した←
2年後の再会編も書こうかなとも思うけど・・・需要ありますか?笑

最後までお付き合いくださってありがとうございました!


2010/07/26

 



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