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「失礼しました。」

職員室を後にして教室に向かい歩く。
すると背後から肩を叩かれた。
振り返るとセルティが片手を挙げて立っていた。
それを確認しおはようと声をかけた。
もちろん笑顔は忘れないよ?

>おはよう。今日は早いんだな。

そう、いつもならぎりぎりに登校する。
今日はドタチンたちよりも先に家を出て来たのだ。
それは別に避けてるとかそういうわけではなく、単に昨日休んだせいで進路希望を提出できなかったからだ。
そのことを告げると進路を決めたのかと聞いてきた。

「決めたよ、やーっと。頑張らないとね。」

>そうか…。昨日は何で休んだんだ?

「ちょっと具合悪くてさ。」

セルティは納得していないみたいだけど本当のことだ。
あれからなぜか熱が出てしまって寝込んでいたのだから。

>臨也。ちゃんと話してくれないか。

「ちゃんとって何?昨日は熱が出たから家で寝てたんだよ。メールなんてダルくて返す気力もなかったし、何なら診断書持ってくる?」

きっとシズちゃんがあの日のことを言ったんだろう。
普段ならセルティはここまで聞いてこないから。

>いや、いい。


教室への階段のところでドタチンを見つけ、後ろから走っていって背中に抱き着いてみた。
するとすぐに昨日のことを怒られた。
俺は長々とお説教されたくなかったから適当にごめんねーなんて返しておいた。
それを受けて呆れたような表情を浮かべている。

「ったく、静雄も心配してたぞ。」

シズちゃんが俺の心配だって?

いらない いらない

そんなもの

何の意味も感情も伴っていない。
義務的に、反射的にそう感じてしまうだけ。まるで無意識。


「シズちゃんが?あははっ、ないでしょ。」

だから俺はそれを素直に受け取ることが出来なかった。
それでもセルティが一生懸命にシズちゃんの様子を伝えてくれた。
俺はそんなことを知りたいわけじゃないのに。

>本当に心配してたんだ。

「ホント、ないから。俺を気にするヒマがあるなら彼女の1人や2人作ったらいいと思わな…い"っ!?何すんのさドタチン!暴力反対。」

突然ドタチンの拳が頭にヒットした。
いや、マジで意味わかんないし。
しかもセルティまで今のは俺が悪いと言ってくる。
一体俺が何したって言うのさ!

「お前なぁ、もっとよく考えろ。」

「はぁ?考えた結果だよ。」

だってそうだろう?
俺はただの幼馴染なんだ。
それよりもこの間の子とか、もっと他の子のこととか考えてればいい。
ドタチンはため息をついてセルティと2人で対話をし始めてしまった。
そしてあらかた話し終えたところでもう一度ため息をついて俺を見た。
まったくもって失礼だ。

 



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