8.5



「良かったね、静雄も。」
 
臨也たちが屋上を去ってから、僕は痛む背中を摩りながら静雄に話しかける。
すると本人はとても複雑な表情をしていた。
僕らは静雄がずっと幼いときから臨也に思いを寄せているのを知っている。
だからたとえ男同士の恋愛でも応援してやりたくなるのだ。
というか、静雄が報われなさ過ぎていっそ哀れに思える。
もちろん高校から一緒のセルティも、すでに静雄の気持ちに気づいている。
つまり気づいていないのは臨也だけだ。
 
「けどよ、早くしねぇと臨也のやつ大学で彼氏でも彼女でも出来るだろうな。」
 
「今でも十分モテるしね。」
 
たまにこうして臨也がいないところで静雄を茶化して楽しんで・・・いや、応援しているんだよ!
僕らだって臨也はちょっと手のかかる奴だけど大事だし可愛いと思っている、ある意味お姫様なんだ。
お姫様の王子様になれるか、そばにかしずくだけの騎士になるのか・・・はたまた騎士との駆け落ちになったりしてね?
いずれにせよ、僕らはハッピーエンドを望んでいるんだ。
 
「…言ったところでしょうがねぇだろ。アイツは俺をそんな風に見てねぇよ。」
 
けど、静雄がヘタレすぎて終わりが見えないのが現実。
僕としては案外いけると思うんだけど、っていうかもう臨也に自覚させた方が早いかも。
臨也も無意識で静雄に依存しているところがあるし。
 
「お前誰かに臨也取られてもいいのか。」
 
「それは…っ。」
 
たまには素直になってみたらいいのに、まぁこれは臨也にも言えることか。
こうして僕らは少しでもお話を進めようとしてるんだ。

 



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