■ 雨からの贈り物

 いつものように無事に任務を終わらせて、報告しようと携帯を開いた矢先ポツポツと雨が降ってきた。まぁ、降っても強くないだろうと思って呑気に歩いていたら、どんどん雨は強くなり僕は慌ててまだ開いていた店に飛び込んだ。濡れてしまったら風邪を引いてしまうと思い、少しの間雨宿もかねて店員さんにドルチェと珈琲を頼んだ。待っている間にさっき送りそびれたメールを打つ。
『任務無事に終わりました。ちょっと雨宿りをしているので帰るのが遅れます。 凜』
 メールを送ってから数分もしないうちに返信があり、どこにいるのか書かれていたので店名とだいたいの場所を打ち送ったのだった。 

 大雨、滝落し、村雨、肘傘雨……日本語では雨と言っても、驚くほどの名前と種類があるが、今降っているこの雨はどれにあたるかと、ドルチェを食べた後の湯気立つ珈琲を飲みながらぼんやりと考える。できるだけゆっくり食べて時間を稼ごうかと思ったが、雨は止みそうもなかった。濡れてでも帰るかと、底が見えるカップを置いた。椅子から腰を上げたのと同時に、店のドアが開かれる。無意識にそっちに目を向けると、太陽みたいに煌めく髪の毛に目を奪われた。
「あっ……」
「おっ、いたな。迎えに来たぞ」
 一本だけの傘を持ったプロシュートが、優しく笑った。
 
 雨の音しか聞こえない街を、二人で黙々と歩く。肩を抱き寄せられプロシュートの身体にぴったりくっつき、傘で雨をしのいだ。
 店先でプロシュートも任務だったのかと聞いたが、違うと答えられた。じゃあ、もう一本傘を持ってくるのを忘れたのかと問えば、それも違うと否定する。一体どうしたのだろうと不思議に思っていたら、凜とこうやって帰りたかったんだ。言わせるな恥ずかしいと、彼にしては珍しく頬を染めてグイッと肩を抱かれた。
 雨は相変わらず降り止まない。でも服越しから感じる体温と照れくさそうにする彼を見て、こんな日も悪くないものだと思うのだった。
 

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