青春時代





高校の3年間なんてあっという間だ。
そういや誰かがそんなことを言っていたかな。まぁ、その通りあっという間にすぎてしまった気がする。

「あお〜げば〜とう〜とし〜・・・・」

卒業式の定番曲が、どこかの教室から聴こえてくる。たぶん来週の卒業式の練習なのだろう。そっか、もう1週間もないんだな、なんてふと思う。毎日めんどうだと思っていた学校も終わりだと考えると淋しいものだ。もう、くることもないんだろうな。

「はぁ〜、このながめも最後か」

夕日がよく見える屋上。意外とこの時間のこの場所がいいスポットだって知ってるやつは少ない。だから結構気に入ってたんだけど。
どこかの教室から聴こえる仰げば尊しの曲と、遠くを走る野球部の陽に照らされた影が重なってる。こんな景色が大好きで、辛いことがあったらいつでもここのきていた。そういや、さぼったこともあったっけか?たまにはそういう時もあるさ。

「や〜っぱりここにいた」

屋上の入り口から聞こえた声にふりむくと、この3年間でいちばん見慣れた顔。最後の最後までこいつの顔を見てないといけないのか。

「もう今のクラスでいることないんだよ。HRちゃんと出なきゃ」

「・・・・おせっかい」

「やかせてるのはそっちでしょ!?」

本当におせっかい。ここにいると必ず彼女が探しにくる。というか自分もワンパターンなんか。先生もなんか彼女を専属の係りだって考えてるみたいだけど、とんだ勘違いだ。

「それにしてもいつきてもここの景色はきれーだなぁ」

「・・・・見つけたんだから、先生に報告しに行ったら?」

横に並んでフェンスに寄りかかりながら景色をながめる彼女にそう一言。もうHRは終わってるだろうけど、のんびりこんなとこで景色を見てていいのか。景色がきれいなのはもちろん保証するけど。

「・・・・いいじゃん、もう会うこともないかもしれないんだし」

びっくりした。なんだそんなにしおらしくなるなんて。今まで3年間同じクラスで、いっつも強気で弱い姿なんて見せたこともないくせに。

自分がすごしてきた高校の3年間を、青春だったなんて思わない。勉強のことばかり言われていた気がするし、自由なことの方が少なかった気がする。実際、どんな仕事に就きたいかとかどこの大学に進みたいかとか、そんな話が先生の話の半分以上を占めていた。
それでもいつか大人になって、学生の頃が遠くなった時「あの時は青春してたな」なんて、こっぱずかしいことを考えるんだろう。

「会えばいいじゃん。会おうと思えば会えるだろ?」

「・・・・え?」

ただなんとなく入った高校。目標もなんにもなくてただぼーっとすぎるだけだろうと思ってた3年間が少しだけ輝いて見えたのはきみのおかげかもしれない。
青春なんて口に出すのもはずかしいと思ってたけど、きみと一緒ならそれもいいと思える。





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青春ってすごしている時はわからないもんなんだろうなと。
自分の卒業を重ねて書いてみたお話ですね。
曲をイメージして書いてみましたが、ちょっとはなれてます(汗)
でもバックで聴いてたらこの文もジーンとするかもしれないのでぜひ。

song by 森.田公/一とト.ップギ.ャラン


09/3/7 up










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