044「特技放置プレイ」
にぃが日本に帰ってから、早一週間。
ヴァリアーには平穏な毎日が流れています。
そこで、平穏すぎて忘れそうになることランキング第一位、わたし達は暗殺部隊だということ。
最近そんな素振り見せなかったから油断してたけど、実際人殺し集団ですからね。
毎日皆でいただきますしてるけど。
ボスとか新婚旅行堂々と行くけど。
これでも暗殺部隊なのだ。
(これホント忘れがち。要注意。)
そこで、わたしは一つ、重大なことを思い出した。
今更な設定ではあるが、大事な事。
「ヴァリアークオリティって、いつ身につくんだよ。」
そう、ヴァリアークオリティ。
その仕事の的確さ・早さ・巧妙さから、ヴァリアーの人員の能力の高さを畏怖してそう呼ぶらしい。
例えば、めっちゃ高く飛べるとか、めっちゃ足速いとか、めっちゃ頭いいとか…髪めっちゃ綺麗に出来るとか。
主に殺しに関するスキルが高いらしいけど、人によりけりだそうだ。
そこで能力の高いものが、所謂幹部になるのだろう。
しかし、よく考えてみろ。
わたし…雲雀珠紀に、そんなやべー力があるか?ないよね?
なのに来て早々に幹部ですよ。
これって…おかしくね。
もっとこう、幹部になりたかった人いるんじゃね?
いや、幹部っつってもね、組織ですから。
何人かいるわけですよ。
嵐雨雷晴雲霧の他にも。
組織内では同じ位に位置する幹部でも、ヴァリアーリングを持っているか、そうでないかの違いだけで。
んで、今まで雲が用意されてなくて、そこに突然わたしが入れられたワケですよ。
…話出来すぎてね?
「ね、おかしいよね。」
「知らねーし。俺に聞かれても。
つーかお前、日本に帰るんじゃなかったっけ。
兄貴は説得出来たわけ?」
「なんか、スクアーロさんが結婚するって言ってくれたから助かったぽいよ。」
「まるで他人事だな。
あとあのカスザメ後でコロス。」
「殺すなよ!一生独身だぞ!
マジで結婚できないっぽかったら『あの時の言葉、本当にウソだったんですか!』とか言って脅そうと思ってるんだぞ!
殺すなよ!」
「心配すんなって、俺が結婚してやるから。」
「マジか。
王子(仮)の嫁ってお姫様じゃん。次期お妃様じゃん。
玉の輿じゃん、ひゃっはー。」
脅せる人が増えた。
わたしの未来も明るみを帯びてきたぞ。
すると、そこにフラン…と、知らない子がやってきた。
背丈はフランと変わらないくらい。
フードを深く被った、頬にペインティングした…
って、あれ?
これ見たことあるくね?
たぶんあの、何回か見た記憶があるから…あれ、ほら、あれだ。
「マーモンじゃん。」
うん、明らかにマーモンだ。
あれだよ、がっつり見た記憶がある。
マーモンとフランが、距離を開けてわたし達の向かい側のソファーに腰掛ける。
たしか、そうだ。
初めて会ったのは、十年前のリング争奪戦。
あの時、にぃがあんまり不機嫌だったから、毎晩何してるのか問い詰めたんだ。
で「別に何も」とか言うから、同じ疑問を抱いていた満天と一緒に、夜家を抜け出して並中まで覗きに行った。
(モチロン、危険の匂いを感じて玉錘は持って行きました。)
「あれ、珠紀さん、このオチビのこと知ってんですかー?」
「ム、君だって小さいじゃないか。
と言うより、さっきから言ってるだろ。
珠紀のことは知ってるって。」
「珠紀さんの方は知らないかもしれないでしょー。」
そうだ。
それで、覗いた日がちょうど、霧の対決の日で…
結局見つかったわたしと満天は、リボーン達に会うことになって、一緒に観覧席に入れられたんだ。
(その場ににぃはいなかったから、恐らく、他の場所で見ていたんじゃないかと思う。)
そして、わたし達はその日、マフィアのことを知った。
それから間もなく、わたし達は皆と一緒に十年後の世界に行って、それで、帰る直前、アルコバレーノ達に会った。
帰ってからも、虹の呪いを解くための、あれなんだっけ、皆で戦ったんだっけ。
わたしはプラプラ観戦してるだけだったけど、にぃがボスにやられかけたって聞いたのが印象的。
その時も、マーモンには会ってる。
ついでにフランも見かけた。
…って、考えたらマーモン以外にもヴァリアーの人結構前に会ってね?
いや、会ってるわ。
「…ベル。」
「ん?」
「わたし、前ベルにナンパされなかったっけ。
ナンパという名の攻撃。」
「いつ?」
「チェッカーフェイスさん?と戦った時。十年前に。」
「………。
あー…したね。」
うん、そうだよ。
なんかスクアーロさんやボスとは話してないんだけど、見かけたことくらいならある気がする。
ルッスとか、思えば衝撃的だった。
「え、なんですかー、それ。」
「ベル、そんなことしたのかい?」
「食いつかなくていーって。」
うん、確かあれだ。
確か人気ないとこプラプラ歩いてて、『ヒバリじゃん』とか言われた記憶がある。
『なに化粧して、お前そんなシュミあったわけ?
まあいーけど、暇なら相手してよ。』
とか言ってね。
馬鹿なのかと思ったよ。
多分あれだよ。
こいつにぃに負かされかけてるから、いいチャンスだと思ったんだろうね。
玉錘持ってた私も悪いんだけどさ。
メンテ出す途中だったんだよ。
んでちょっと攻撃避けて女ですから、って言ったら、声で分かったみたいで、
『じゃあ、違う意味でヤっちゃう?』
とかはぐらかされて、そのあと適当にごまかして帰ってきたんだった。
前に会ったとはいえ、リング争奪戦の時は髪も長かったからなあ…
その頃はちょうど髪を切ったあたりだったから、誰かわからなかったのだろうけど。
(確かに、にぃともよく似てた。)
「最悪ですねー、センパイ。」
「本当にサイアクだよ、ベル。」
「おめーらの性格の方が最悪だっつの。
つーか今仲いいんだからいーじゃん。」
「風呂覗きして、風呂改造されたのはどこのどいつですかー。」
「僕がいない間、そんなことしたの、ベル。
サイアクだね。」
「ちょっ、ベルがかわいそう、なんかかわいそうだから。
てかマーモン、ほんと久しぶり。
でかくなったね。」
無理やり話を変えてやれば、案外乗ってくるもので、少し機嫌の悪いベルとフランもおとなしくなった。
「当時は通常の速さで成長するんじゃないか、って仮定を立てていたんだけど…
どうやら、他のアルコバレーノたちの様子を見ていても、違うみたいでね。」
「え、どゆこと。」
「およそ10年で、もとの年齢まで体が戻るらしいんだ。
つくづく、僕らは10という数字に縁があるみたいだ。」
ってことは、マーモンは今、ほとんどもとの姿に戻ったということか。
「よかったじゃん。
アルコバレーノを身近で見ていたわけじゃないから、正直なところ、どれくらいの苦痛なのかは分からなかったけど…
マーモン、相当呪いのこと恨んでたもんね。」
「本当にね。
あの30年間が忌まわしくて仕方が無いよ。」
しみじみと頷いて話していると、フランが口を開く。
「…珠紀さん、ずいぶんこのオチビがお気に入りなようですねー。」
「え?」
「どーかん。
久しぶりに会ったにしても、そんなに面識無いのに話弾みすぎじゃね?」
「ダメか。話に花咲かせちゃダメか!」
「君たち、嫉妬は醜いよ。」
「あ、マーモン嫉妬とか言わないで、レヴィ思い出して吐きそうになるから。」
うん。
確かに、わたしにとってマーモンは結構好きな人かもしれない。
波長超合うもん。
なんか実感すると照れるなオイ。
ベルとフランは、なんかよく知らないけどすっかり不機嫌だ。
なんだこいつら。
「てかマーモン、あれ、ルッスとかに言ったの?
帰ってきたよーって。
てか何でいなかったの、今まで。」
「まだ言ってないよ。
ボスには報告書だけ出しに行ったけどね。
まあ、長い任務だよ。
正直半年もかかるとは思ってなかったけど。」
「そっか、お疲れ。
んじゃ、ルッスにご馳走作ってもらいに行こう。」
「そうだね。行こうか。」
そして、わたしとマーモンは席を立って、ルッスの部屋へと向かった。
ベル?フラン?
うん、まあ、いいんじゃない。
―――――
マーモンやっときたよ。
おかえり話。
んで、ヴァリアークオリティの話はいずこ?
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