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20 一緒にいたいなぁ



満天の星空の下、二人は並んで石段に腰掛けて空を眺めていた。

おもむろに口を開いたのは、リヴァイだった。


「ユフィ、お前のやりたいことが叶ったら、そのあとはどうする。」

「そのあと?」


ユフィは考えてもみなかったというようにキョトンとリヴァイを見て、思案するように再び星空を眺めた。

彼女の目的は、誰もが自由に空を飛べる世界を作ること。

その目的はある意味巨人をこの世から絶滅させたときに初めて一歩全身するものであり、調査兵であるリヴァイにとっては無関係であるはずがなく、その目的は達成できる……いや達成させなければいけないとさえ思っていた。


「んー……。」


さすがに答えはすぐには出てこないかと思われたが、ぷらぷらと足を揺らしながら彼女は熱心に考え続けているのでリヴァイは黙って待つ。

夜景なんて洒落たものは見えないが、調査兵団本部の屋上から見る夜空をリヴァイは密かに気に入っていた。
遮るものなど何もない漆黒のスクリーンにちりばめられた星たちはチラチラと瞬き、ずっと眺めていても飽きない。


「リヴァイ……。」

「なんだ。」


不意に名前を呼ばれて返事をすると、無意識に声になっていたらしくユフィは我に返った様子で口を開く。


「あ、えっと、叶ったときを想像してたんだ。みんなが楽しそうに森や林で飛んでてね。私はそれを眺めてるの。で、隣を見たらね、」


松明の灯りできらめくこげ茶色の瞳がリヴァイを見上げた。


「リヴァイがいたの。」

「!」

「リヴァイと……一緒にいたいなぁ。」


目を細めてはにかむように笑うユフィに、どうしようもなく胸が甘く締めつけられたリヴァイは彼女のあごをすくって唇を寄せた。

触れるだけのキスをして、くしゃくしゃと頭を撫でる。


「分かった。覚えておく。」

「……リヴァイってキス好きだよね。」

「うるせぇ。」


共に戦う仲間。
お互いを尊敬し高め合える友。
かけがえのない大切な恋人。

言葉の枠にはめ込んでしまうこともできるが、ユフィとの間には筆舌に尽くしがたい繋がりがあるとリヴァイは感じていた。

出会ってからただただ引き寄せられるままに、心も体も繋がった。
そうなることが自然で、当たり前のような不思議な感覚だった。

確かなのは、お互いを想う気持ち。
今はその想いの強さや熱さを噛みしめることで十分な気がした。

そしていつの日にか訪れる希望の未来を見据えて、二人は現実に挑み続けることを決めたのだった。



**



「あー!リヴァイとユフィってば二人仲良くどこ行ってたのさぁ!主役がいなくなっちゃ困るんだからねっ?」


部屋に戻るとアルコールで顔を赤くしたハンジが二人を指差して楽しそうに大声を上げた。

今夜は前に延期されたユフィのお疲れ様会と歓迎会を兼ねた食事会なのだ。
が、すでに飲み会と化している会場にリヴァイは顔をしかめた。


「うるせぇクソメガネ。他のやつらも隙あらば酒飲みやがって。」

「ねーリヴァイ、あたしもお酒飲んでみたい。」

「こらユフィ、お前はまだ未成年だから駄目に決まってるじゃないか!」


機材の搬入を手伝いにきたついでに参加していた、他の面子と同じように顔の赤いハイオが怪しい足取りでやってきて口を尖らせるユフィにオレンジジュースの入ったコップを押し付け、リヴァイの肩にがしりと腕を回した。


「リヴァイ兵士長。娘のことは頼みましたよ。」

「は?」


リヴァイは面食らう。
どこでユフィとの関係が漏れたのだろうか。

ハイオは声をひそめながらも、酔っ払いらしく大袈裟なジェスチャーを加えながら熱くリヴァイに語りかけてくる。


「娘はどうやらあなたに好意を持っているようだ。彼女は技術部という閉じられた世界にいたせいで真っ当な恋愛経験もないし恐らく処女でしょう。下手したらファーストキスもまだかもしれない!くれぐれも大切にしてやってください。」

「あぁ……もちろんだ。」


すでに処女は美味しくいただいたし毎晩のようにディープなキスをしながらセックスしてますだなんて言えるはずもなく、リヴァイはハイオから目を反らしながら答えた。


「さぁさぁ!主役が戻ってきたことだし、もう一度新しい仲間のユフィに乾杯しようじゃないか!みんなグラスを持って!」


子煩悩な父親はリヴァイを解放してどこかに置いてきた自分のグラスを探しに行ったので、このタイミングでハンジが場の流れを変えてくれたことに彼は内心で感謝した。

何回目かも分からない乾杯だけれどユフィは会場の全員から注目が集まり、珍しくもじもじしているようだった。


「ユフィ、立体機動装置の修理お疲れ様!そして改めて、ようこそ調査兵団へ!これからもよろしくね!かんぱーい!!」


かんぱーい!と合唱のように声が響き、酒のお陰で陽気になった兵士達がユフィのコップに次々にグラスをぶつけにくる。


「わっ、わっ、」

「てめぇらグラスを割ったらしょうちしねぇぞ。」

「俺はぶつけなくても片手で割れる!」

「ちょっ、あの酔っ払いゲルガーどうにかして!」


ハチャメチャな大人に囲まれて揉みくちゃになっているユフィとリヴァイの目が合う。

二人は同時に、ふ、と口元を緩めた。






end.


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