ナデシコが咲いたら | ナノ

04


「甘いもの同盟?」
「そ、甘いもの同盟。」

今日は珍しく図書室のいつもの指定席に来たのは赤也とジャッカルだった。
ブン太と仁王は?と聞くと、ふたり揃って国語の時間をサボって居残りだってよとジャッカルがため息混じりに答えた。

「で、何なんすかその甘いもの同盟って。」
「その名前の通り、甘いものが大好きな人の同盟だけど。」
「誰が入ってんだ?その同盟。」
「私が会長でブン太が名誉会長、んで柳君が和菓子大臣。」
「なんすかその役職。てか人少なっ。」
「うるさいなぁ、良いの!」

机の上に色々と広げられたお菓子の雑誌や本を片付けながら、私は赤也を睨みつけた。

「その同盟、仁王は入ってねぇんだな。」
「甘いものそんなに好きじゃないって言って断られた。」
「まあ、確かに仁王先輩ってあんま菓子とか食ってるイメージ無いッスね。」
「てか仁王ってご飯自体あんまり食べてるイメージ無くない?」

前からちょっと思っていたことをふたりに聞くと、確かに!と返された。お昼ごはんとかでもいつもお弁当がっついてるのとか見たこと無いし。

「だからあんなにひょろくて色も白いんすよ。」
「誰がひょろくて白いんじゃ?」

後ろから突然声をかけられた赤也はワァ!とここが図書室だと言うことも忘れ大声を出して叫んだ。
すると後ろに立っていた仁王は満足そうにククッと笑って赤也の横に座った。

「よっ。」
「よっ。」

仁王の後ろに立っていたブン太に軽く右手を上げながら挨拶すれば、ブン太はそのままこっち側に回ってきて私の左隣の椅子を引いてどかりと座った。

「瑞穂先輩、分かってたんすか・・・?」
「ん、何が?」

若干とぼけたフリをしながら赤也に返事をすれば、仁王先輩達が俺の後ろに近づいていたことッスよと口を尖らせながら尋ねた。

「うん、だってこっちから見えたし。」

赤也は入口に背を向けて座ってたけど、私はその向かい側。つまり仁王とブン太が図書室に入ってきてこっそりこちらに近づいてくるのまで全部見えていたということだ。

「見えてたならなんで教えてくれなかったんすか!」
「え、だって面白そうだったから。」
「んで赤也、誰がひょろくて白くて弱そうなんじゃ?」

がっしりと赤也の肩に腕を回して逃げられないようにして仁王が楽しそうに問いただす。
あの距離からだったんだから、聞こえていたはずなのに。相変わらず意地が悪い。
それに弱そうまでは言ってなかったから。

「あ、なあ次さ、ここ行ってみねぇ?」
「ん、どこどこ?」

仁王に苛められている赤也はまぁ置いておいて、ブン太が指差す雑誌を私も横から覗き込むとそこには最近オープンしたと書かれているケーキ屋の写真があった。

「それ私も気になってた!隣の駅で近いし、美味しそうだし。」
「しかも今ならオープン記念で10%引きだってよ。これ行くしかねぇだろぃ。」

隣の駅のどこに出来たんだ?とジャッカルが尋ねてきたので、雑誌を差し出してココだよと示す。
するとあぁなんかそういえば数日前に人が並んでたな、と思い出したように言った。

「やっぱり並んでたかー。まあオープンしたばっかだもんねー。」
「どうするよぃ?」
「やっぱりここは開店時間に行って全種類制覇っしょ。」
「げ、全種類ってお前ら・・・。」
「ジャッカルも行く?」
「いや、遠慮しておく・・・。」

そう言ってジャッカルは首を振って雑誌をこちらに返した。

「で、何時行く?私はいつでも平気だけど。」
「お前さん、何時だって暇じゃからな。」

ぐったりと伸びている赤也とは対照的に楽しそうに笑う仁王に、私はうるさいと言って消しゴムのカスを投げた。

「今週の日曜日だったら部活午後からだし、平気だぜ?」
「え、でも午後から部活ならいつもみたいに出来無いじゃん。」
「いつもみたいに?」
「いつもはブン太と私でケーキ全種類の半分ずつ買って、んで半分ずつ食べてるの。」
「あ、なんだ俺全種類まるごと1個食ってんのかと思ったぜ・・・。」
「さすがにそれは私とブン太でも1日じゃ無理だよ。」

まあ2日あればいけるかもしれないけど、と言ったらジャッカルがまた信じられないという顔をしていた。
いや、いけるから。余裕だから。

「だったらさ、お前も部活くれば良いじゃん。」
「は?」
「そんで俺が部活終わるの待ってて、その後食えば良くね?」
「え、無理でしょ。てか駄目でしょ。」
「部室に冷蔵庫あったし大丈夫だろ。」
「いや、別にケーキを冷やす心配をしてるんじゃなくて。」

だってこの立海の中でも一番部外者立ち入り禁止と有名のテニス部に行くなんて無理にきまってるでしょ。私テニス部と何にも関係ないんだし。
ましてやただブン太と買ったケーキを食べに行くためだけに行くとか。いやもうありえないでしょ。

「大丈夫だろ、お前別にミーハーじゃねぇし。一目惚れとかは良くしてっけど。」
「うるさいよ。」
「え、瑞穂先輩日曜に部活遊び来てくれるんすか!」
「いや行かないし。てか私真田君に彼女いますかとか思いっきりそっちの色恋沙汰の話をして怒鳴られた人なんですけど・・・!」

お、思い出しただけでもまだ怖いのに!そう私が言えばブン太はまぁ大丈夫だろぃと明るく私の肩を叩きながら言った。
何を根拠にそう言うのでしょうか。

「じゃ、日曜日そういうわけで。」
「え、どういうわけ!?」
「詳しいことまた前日ぐらいにメールすっから。じゃあな。」
「え、ちょ、」

それだけ言うと4人は一斉に席を立ち私の意見なんて無視して図書室から出て行った。

「・・・え、本当に、どういうこと・・・?」

ひとりぽつんと残された私は、ただただ呆然と椅子に座ったまましばらく動けずにいた。





(20101002)

- 4 -

[*前] | [次#] | [戻る]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -