ごぼ、と息を吐いた。
気泡が揺らめく水面を目指して上っていく。強くなりはじめた陽射しは歪みながら、しかし其処に届いていた。
呼吸をしようとして、当然叶わない。気管に水が入り込む。反射的に咳をしようとして逆効果。肺の中まで水は満ちて、ああ、人の身であったなら黒い死に囚われたことだろう。

呼吸が出来ないのなら、する必要はない。

ヘパイストスはやはり当然のように呼吸をやめた。
養母のエウリュノメの神殿へ出向くのは久方ぶりだった。養母が住まうのはオケアノスの涯、その海底にある。詳しくは知らないが、かつてクロノスとレアと王の座をかけて争い敗れ追放されたなどとも聞く。ヘパイストスにとっては関心も関係もないことだが。
さて、今回はいつまで捜索の目を掻い潜れるだろうか。
より深みに降りていきながらぼんやりと思った。





<2016/04/18>



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