「なぁ、あんた男抱いたことないんだろ」
「ないよ。今までは、っていうべきかもしれないけどね」

じゃあなんだってこんな慣れた様子なのか。女と勝手は違うだろうに、そんな疑問を浮かべつつ、アレスは時折愛撫とキスを織り交ぜながら己の衣服を器用に剥いでいくヘパイストスに身を任せている。

そもそも気紛れに今と同じ問い掛けをしたのが事の始まりだ。
答えは勿論同じだ。だったらいつもと逆にしようか、いつかの提案を思い出して誘いかけた。

何故あんなことを言ってしまったのか。受け身になるのは慣れない。触れられる度になんだかむず痒い。熱い。いや、熱いのは触れられた場所だけではなくて、じわりじわりと痺れるように広がって、内臓が融けてしまいそうで、

「ところで私も聞きたいんだけど」
「…っ、なんだよ」
「お前は男に抱かれたことあるの?」
「あるわけないだろ!……今日の今までねぇよ」

珍しく口元に笑みを含ませたヘパイストスにアレスはギクリとする。嫌な予感しかしない。
ただでさえ密着しているのに、更にヘパイストスが顔を寄せた。

「私もだからさ、お前のやり方が手本な訳だ」
「はぁ?」
「お前を真似してなるだけやってみるから、後で泣き言、言わないでね?」

ちょっと待て、言いかけた制止は舌で絡め取られた。


倣い、手習い


<2015/12/25>



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