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もう陽は落ちたというのにジメジメとした暑さ、
これだから夏島の春は嫌いだ。

長い髪を纏め上げ、
カランカランと鳴った鈴の音にナマエは思い腰を上げた。









「いらっしゃいませ」







とある夏島の街にある小さなバー。
祖母から続くこの店をナマエは一人で切り盛りしていた。


海軍の屯所が近くにある為、客は殆どが仕事終わりの海兵だった。





「ふ〜疲れたー、お、ナマエちゃん今日も綺麗だね〜」



ぞろぞろと入ってくる常連の海兵達にナマエはにこりと微笑む。

彼らはいつものカウンター席につき、ナマエは手早くウイスキーを出した。





「流石、わかってるねナマエちゃん」




「ふふ、いつもありがとうね」





マジで今日こそいい返事聞かせてよー、なんて言って来る海兵達に困ったような笑みで返し、おつまみに出すキャベツを刻んだ。






もう大分長いこの店はその古さがまたいい味を出し、薄暗い内装はナマエのセンスでお洒落にデザインされていた。

酒が好きなナマエのこだわりで揃える酒の種類も多く、ナマエの背後にはずらりと様々なラベルの酒瓶が並んでいる。

他店では取り扱わないようなマイナーな酒もあるここは、酒好きにはたまらない店とも言える。







「なあナマエちゃん、ナマエちゃんってどんな男がタイプなの?」





「聞きたい聞きたい!」






酒に呑まれつつある海兵の質問に、ナマエは少し考える素振りをしてからにこりと笑った。






「純粋な人かしら」






その答えに、海兵達はやれお前はダメだ。お前こそダメだと騒ぎ出す。
ナマエは「あなた達はみんなダメよ」と笑い、お代わりのお酒を注いだ。









「あ、そういやお前、明日さ..」





「ああそうだな、いやーやだな..」







海兵達はふと思い出したように顔を見合わせ渋い顔をした。
なにやら明日は彼らの屯所に新しい軍曹が配置されるらしい。

最近は海賊が増えて来たのでその用心棒だろうと彼らは話すが、なかまが増えるというのに何故か嬉しそうではなかった。







「なぜそんなに浮かない顔してるの?」





「だってよ、その軍曹、いい噂聞かねェんだよ」




「なんでも上の命令にも従わない”狂犬”らしくてさ...」




「ロギア系の能力者らしいし、怖ェ上司が増えるって訳だよ」






はあー、と溜息をつく海兵達。
ナマエは話を聞いた所、あまりいい印象は受けないその”狂犬”にはあまり来て欲しくない、そう思った。










午前2時を回り、すっかり酔っ払った海兵達を追い出し、ナマエはやっと店を閉めて自宅である二階に上がれた。







メイクをオフし、歯を磨く。

そして窓際に飾られた写真に向かって手を合わせ、ふかふかのベッドに入り長い眠りへと落ちて行った。








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mae tugi

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