彼と出会ったのは、高校を卒業してすぐのことだった。
両親が専門職で、私もその手の大学に進学するつもりだったけど、その頃の私は敷かれたレールにただ従うだけの人生に嫌気を感じていた。
だから両親から逃れるように家を出て、夜の仕事をして、男の家を転々としながら荒れた暮らしをしていたの。
それである日、いつも通り仕事終わりに一人でバーで飲んでた。
そしたら偶然カウンターの隣に座ったのがシャンクスだった。
「この可愛らしいレディにマティーニを」
なんて、まるで80年代の映画みたいな口説き文句を放った彼に、思わず飲んでたジンを吹きそうになった。
それから私達は頻繁に会うようになって、
お互いが惹かれあっていた。
二人が恋に落ちるまで時間はかからなかったわ。
シャンクスの強い要望で彼の会社で働くようになって、運良くそれは私に向いていたみたいで、仕事もとっても楽しかったし充実してた。
彼は私が望むものは全てくれた。
マンションも車も服も最高級のお料理も。
世の女の子なら泣いて喜ぶような一流のものばかり。
なにも不自由はないし、幸せだったの。
彼からの愛はいつも感じていたし、私も愛していたわ。
彼が知らない女の子とベッドで愛し合っているのを見てしまったあの日までは。
その日はレッドフォースとドンキホーテの契約記念パーティーだった。
ホテルの広間を貸し切ってそれは豪華なパーティーだったわ。
そのあとはドフラミンゴが主催した二次会のようなもので彼がホテルにあるクラブに行ったの。
そこはまあ想像できるように暗い部屋の中、裸同然のお姉さんや怪しい匂いのする男ばかり。
シャンクスもその男達に飲まされて、そこまで酒の強くない彼はすぐに酔っ払ってた。
私はドフラミンゴに捕まって適当にあしらってたんだけどかなり飲まされて、もういい時間だったからとってあるホテルの部屋に帰ろうとシャンクスを捕まえて二人で戻った。
ベロベロになった彼をベッドに寝かせて私はうっかり携帯を忘れたみたいでクラブへ探しに戻った。
そして、30分ほど探して帰ったら、ベッドではシャンクスが女の子にキスしてた。
私達のベッドに、裸でね。
電気を付けると、彼はとっても驚いたような顔して女と私を交互に見てた。
飛び跳ねるように女の子から離れるとなにやら女の子に怒鳴っていたけど、私はそんなのもうどうでもよかった。
女の子の白い肌に散らされたキスマーク。
乱れたベッド。
女の子を追い出して、
床に頭擦り付けながら謝るシャンクスに一言別れの挨拶をしてから部屋を出たの。
服を着たら彼が追ってくるだろうから、走ってタクシーに飛び乗った。
彼のくれたこのマンションにも戻れないし、適当に離れた公園で降ろしてもらった。
携帯はひっきりなしに鳴りっぱなしだから噴水に捨てて、ただただベンチで泣いたわ。
男のことで泣くなんて思ってもいなかったけど、馬鹿みたいにわんわん泣いたの。
でも私ってきっと切り替えが早いのね。
暫くすれば涙は出なくなって、もうシャンクスのこおは過去になった。彼のことはもう吹っ切ろうと決めたの。
ホテルに戻れば、私を探しに行っただろう部屋には誰もいなくて、ホールで偶然ドフラミンゴに会って、泣き腫らした目をした私を見た彼は半ば無理矢理彼の家に連れて行かれたわ。
その夜は彼の家で彼に抱かれた。
抱いて、と私から頼んだの。
シャンクスを忘れたくて、
塗り替えて欲しくて、
彼の好意を利用したの。
ずるい女よね。
だからその夜ね、
私とシャンクスが終わったのは。
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