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愛に逆上せた






「やっぱり。来ていると思ったわ」

「...あァ、ココでは酒を飲めると聞いたからな」



温泉島の貸切露天風呂。
ローは頭にタオルを乗せ、湯船酒を楽しんでいた。
昼前にこの島に着き、各自温泉にゆっくり浸かり日頃の疲れを癒し、好き勝手食事や酒も嗜み、出航の夜まで寛いでいる。

「大浴場も凄かったけど、ここも素敵」

「おまえも入るか?
いい酒をもらった」

「じゃあ...お邪魔しようかしら」



ナマエはそう言うと、一度中に戻りバスタオルに着替え湯に入る。



「はあ...温かい。この季節に温泉は最高ね」

「...飲んでみろ。中々イケるぞ」

「........独特な味ね。それに結構強いわ」

「アツカン、という酒らしい。
ワノ国のものだな」




ナマエは余り口に合わなかったのか、
苦そうな顔をしながらもまた口をつけた。
冬の初め、もうすっかり寒くなった証拠に
口から出るのは白い息。


「もうすっかり冬なのね。空気が冷たい」

「すぐに雪が降る」

「雪は好きよ。ベポも喜ぶわ」

「前みたいに首から下を埋めるのはやめてやれ。
いくら熊だって寒ィからな」




かたん、音を立てて空になった徳利が倒れる。
ローはそれを片付けると、
正面にいたナマエを抱き寄せた。
温かい湯の中、二人の体は余計に熱を持つ。




「...こんな素敵な島があるなんて知らなかったわ」

「温泉もワノ国が有名だな」

「行ってみたい!
キモノという服を一度着てみたかったの」

「あァ.....近々、行くことになる」

「ふふ、鎖国国家に?
....楽しみ。あなたは何処へだって連れて行ってくれるのね」

「可能な限りだ」

「やさしいロー、大好きよ」



ナマエはローの頬に優しく口付けをする。
ひんやりとしたそれに、ローは一瞬反応してからナマエの首筋に唇を落とした。



「ロー....言っておくけどココではダメよ」

「おまえが誘って来たんだろ」

「もう、違うわよ。
こんな所でしたら風邪ひいちゃうでしょ?ドクター」

「...なら早く出ようぜ」

「...あなたの力強いこの腕も、だぁいすき」

「おい、煽るな」


抱きしめる腕に広がるタトゥにキスを落とすナマエに、ローは眉を顰める。
その瞳で見つめられれば
自分があっという間に我慢が出来なくなることを知っているからだ。



「ふふふ!
なんて可愛いの、ロー」

「おれで遊ぶんじゃねェ」

「だって 仕方ないじゃない。
あなたのことが大好きなんだもの」

「....逆上せた。もう出るぞ」

「恥ずかしいわ。先に出ていて」



ローは早々に露天風呂を後にした。
ナマエはそれを悪い微笑みで見送り、
もう一度肩まで湯船に浸かる。




「フゥ....」




黄昏時、空と海が混じる瞬間は何度見ても胸を打つ。
ポッ と淡い色のライトが灯る。
湯口から流れるお湯の音が耳に心地いい。
静かな空気の中、どこか遠くで誰かが笑う声が聞こえた。

夜になればここを出て、
またいつものように海へ出る。
きっと次の島までは長いはず。
毎日なんてことない日々を過ごすだけ、なのに
何故こんなにも満たされるのか。




それは、きっと、



「ナマエ、早く出てこい」






愛に逆上せた
愛しいロー、あなたがいるから





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