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それから暫く、ナマエは殆ど部屋に篭りきりだった。偶に街に出て何かをしているが、基本的に姿を見せない。
そしてウォール・マリア奪還作戦の前祝いが行われる日にリヴァイはナマエの部屋をノックした。


「...ハンジ、またあなたなの」

「.....リヴァイだ」

「....何の用かしら」


開かれた扉の先には数日ぶりにしっかりと姿を見たナマエの姿があった。
新しいのか、見慣れない深緑のワンピースがよく似合っている。
つい、見入ってしまった。

「....ああ、今夜はリーブス商会から取り寄せた肉が食卓に上がる。街に出る予定がないなら皆で一緒に食おうとエルヴィンからの伝言だ」

「そう....104期の子達からも聞いたわ。前祝いだと。そうね...食堂で食べるのは久しぶりだから、行くわ」

「そうか、ならいい」

「....元気がないわね、いつも以上に険しい顔してるわ」

「....そうでもねぇ、出発の前は大体こうなる」

「....そう、それじゃあ 夜に」








夜、食卓に並ぶ肉の塊に兵士達は大騒ぎだった。
豪華な酒に振る舞われる酒、
取り合いになり所々で争いも起こる。
呆れたように傍観する上官達。



「随分楽しそうね」

「ナマエ!よかった、来てくれたんだね!」

「1時間ごとに代わる代わるお誘いが来るんだもの」

「はは、よかった!
さあ、食べてよ。酒もホラ」

「ええ、有り難くいただくわ」




酒も回ってきて騒がしい背景の中、
エルヴィンはナマエに声を掛けた。



「なんだか久しぶりだな、元気そうで良かった」

「そうね....あなたも」

「そのドレス、君の瞳と同じ色でとてもよく似合っている」

「ありがとう、あなたの瞳とも同じね」

「...ナマエ、今夜..」

「エルヴィン、明日は頑張って」

「...」

「ここから、あなた達の検討を祈ってるわ」

「ああ........ありがとう」






アレンとジャンがお決まりの取っ組み合いを始め、リヴァイがそれに終止符を打ち宴会はお開きとなった。
お腹いっぱい肉を食べ、酒も入り気持ちよくなった兵士達は今までで一番幸せそうに部屋に戻っていった。




ナマエも部屋に戻り、真新しいドレッサーの前に座り髪を梳かす。
エルヴィンは、きっと今夜部屋に来て欲しかったのだろう。
ハンジが言っていた、出陣の前は男性は特に人肌を求めることがあると。
無意識に、命を落とすかもしれない戦いの前に子孫を残そうとするものだと。

だけど、それを遠回しに拒否した。
それには色々な感情があった。
でも一番は、




コンコン、




「どなた?」

「私だ」

「....エルヴィン」

「扉は開けなくてもいい。
ただ伝えたい事があって来たんだ」


髪を梳かしたまま、扉を開けることはせずドレッサーチェアに座ったまま続きを待った。


「君は怒っていると思う。
私が何も話さなかったこと、君を"戦力外"にしたことを」

「....」

「だが分かって欲しい。君の力は何よりの戦力なる。人類の希望だ。だからこそ...」

この戦いには連れて行けない。

そう呟いたエルヴィンの声は、ひどく弱々しかった。



「あなたはこの組織のトップ.....
ここに置いてもらってる以上、あなたに従うわ」


「....ありがとう、明日は朝から忙しなく動いている。恐らく会えるのはこれが最期だ。
....少しだけ顔を見せてくれないか?」




少しだけ考えたが、その扉を開ける。
目の前にはエルヴィンがいて、目が合った瞬間強く抱き締められた。
胸いっぱいに広がる彼の香り、心なしか少し震えている。
明日はそれほどまでに危険な戦いなんだろう。




「あの日壁外でリヴァイと飛んできた君に出会った時、天使だと思った。
光に照らされて輝くこの髪、俺よりずっと澄んだその青い瞳。きっとその瞬間から君の虜になっていたんだ」

「...リヴァイにはこの見た目じゃなかったら殺してると言われたわ」

「君の我儘も、高飛車な性格も、本当は優しいのも、その自由を求める心も、全てをひっくるめて...俺は君に惚れている」

「....エルヴィン、私」

「待っていてくれ。
必ず君の元に戻り、この唇を奪いに来る」

「....あなたなら大丈夫、
帰ってきたら、食事に行きましょう。
とてもいいところを見つけたの」

「ああ...約束だ」






その夜、エルヴィンは私を抱くことはせず
優しいキスを残して部屋に帰っていった。





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