長編 続 | ナノ
Rouge with the lie

私の目の前に現れたのはヘルブラムが買ったという死体だった。
死者使役という方法で彼は復活を遂げたらしい。

「御前の魔力の糧となるだろう」
「ふーん、チミが糧に?
そんな魔力は感じられないけどなぁ」

ヘルブラムという其の男は私をジロジロと指先まで細々と眺め、私の制御装置を勝手に取り外した。
身体の中で蠢いていた魔力から心臓を握り潰す様な痛みが走ると、付和雷同(ブラインド・フォロー)という力で私の魔力を吸い取り目の前の扉を魔力で蹴破った。

其の力はヘルブラムの予想以上だったのか、扉に続くようにして罅が入り廊下と目の前の部屋が一瞬にして崩れていった。
余りの魔力に大きな物音と揺れが起き、聖騎士達の騒がしい声が城内に響き渡る。
ドレファスを心配して此方へと駆け寄ろうとする聖騎士達に「足の踏み場がない此処に態々来るな!俺ならば問題は無い」と聖騎士長という表向きの顔で彼は返答を寄越す。
其の言葉を疑う者など居ない。
否定を続ける私が除け者として扱われるだけだろう。

「おっと…?
此れは予想以上の力だ、軽く蹴っただけで此の威力とは…面白くなってきたじゃないか」

手を握り締めたり開いたりを繰り返し自身の手を見詰めるヘルブラムにドレファスが満足気に言う。

「此れで生前の力以上の物が得られただろう?」

魔力を使われた事で胸に仕えていた苦しみがすっと落ちて行った。
胸に宛行う様に握り締めていた私の手が緩んでいるのを目に留めたドレファスは卑しく笑う。

「どうだ?
此の苦しみから抜けたいと思うなら、此の男に命を差し出せ」

噛み付くようにドレファスの言葉を直ぐ様否定する。

「こんな事の為に自らの魔力を差し出すなんて、這い蹲って地面の泥を舐める事と同じ行為。
そんなんだったら苦しんだ方が数百倍マシ」

私の言葉が気に食わなかったのか、「御望み通り地面に這い蹲らせてやろう」と私の頭を地面に足で押し付けると其のまま背を向けヘルブラムと呼ばれた男に向き直る。

「此れで強さを得る事が出来るだろう、此の女を好きに使うと良い」

此の為だけに生かされてきたのか、私は…誰かを殺めるだけの兵器になる為に私は生きてきたんだ。
幾ら反抗的な態度で示そうとドレファスには敵わない。
小さく抗う様に呟いた私の声はドレファスにさえ届かなかった。

「そんな物で強さなんて手に入れられる筈ないじゃない」




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