長編 続 | ナノ
Rouge with the lie

おどろおどろしい魔力を抱えつつ、着実にあの人の望む城へと変貌していく。
王も城の一室に閉じ込められ身動きも取れない状態に関わらず誰も不審がる者が一人も居ない。
此の国事態が彼の手の内で見事に転がされているのだ。

此処まで到達するのに、時は十年の月日を得ていた。
私の耳には普段通りのように制御装置が、そして此処から逃げ出さない様にとビビアンの御用達の化物の監視下に置かれている。
姿を消せる為、ヒタヒタと気味の悪い音だけが私の周りを徘徊しているのだ。
今日も聞こえる足音、十年という月日の中で此の音が聞こえない日は一日たりとも無かった。
私は後から聞こえる足音の先を睨み付けると、カツカツとヒールの音を発てて走り出す。

「御呼びでしょうか、聖騎士長様」

明らか怪訝そうな声色の私を、笑うドレファス聖騎士長。
だが、扉が締まると其の笑顔は消え乱暴に私の肩を掴んだ。
遠慮の無い男性の力に痛みで顔が歪む。

「何に不満がある?
前よりもずっと快適な生活が送れているだろう?」

確かに城からも自由に出入りが効くようになったが、見知らぬ誰かの監視下に置かれている気味の悪さには勝てない。
七つの大罪の皆と居れたあの頃は…、と想い出す度に心細く感じ、此の城の現状に胸が苦しくなる。
私にはこんな事しか出来ないんだと力で押さえ付けられているような感覚。

「建前だけの自由ですが」

私とドレファス聖騎士長の間柄や関係性は誰一人として伝えていない。

あの日…私が記憶を無くしてゴウセルと出会う前の事。
ドレファス聖騎士長が人を殺めている現場を目撃してしまったために私は彼に目を付けられていた。
七つの大罪の皆と行動していた事もあり、警戒されていたのか二年間は此方に接触して来ようとはして来なかったが王国転覆の罪で彼等が城から追放されると同時に此の人は私を捕らえた。
実際に表沙汰に私と接触しているのはヘンドリクセンの方であるためビビアンにも気付かれる事無く私の監視下にあの気味の悪い化け物を置いた。

彼等が何を目的に、城内で態々敵対するような行動を取っているのか理解し難いが其れに私を関与させようとしているのが目に見えている。

「あまり我儘を言うな、今の幸せが維持出来るのは誰の御蔭だと思っているんだ?」

髪を引っ張られ、其のまま壁に打ち付けられる。
後頭部を強く強打し痛みで声が漏れた私を嘲笑うような視線が上から降ってくる。
こんな生活がもう十年。
あと何年続けたら良いんだろう。

「態々城の者を秤にかけ、御前なんぞを生かしている俺の身にもなれ…全ては此の日のために」

軽く脳震盪を起こしてしまったのか、ゆらゆらと視界が揺れる。
俯ける私の顔をドレファスが前髪を掴み前に向かせた。

覚束無い足が引き寄せられる様に地面に這うと見覚えの無い鎧姿の男が私の前で歩みを止める。

「御前は此の男の奴隷、といった所だ」




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