Feels Like Love
「買うの?」
「ああ。他にも君のお勧めがあれば教えてほしい」
「いいよ、ちょっと古いのでも良ければ」

ジョークを交えつつ笑いながら「A」から順に赤羽となまえは2人で見ていく。なんだかんだでこうして一緒にCDを物色している時間がとても楽しい、と赤羽は思った。

「あ、このバンドの新しいのまだ残ってたー!」

ある欄にくると彼女は声を上げた。自分もお目当てのものを物色するなまえの横顔は本当に楽しそうでキラキラと輝いていた。何故だか分からないがその笑顔をみると、初めてギターのストリングの鼓動を感じた時と同じような気持ちを感じる。

「良かったね」
「うん、本当よかったー。最近CDの生産数が減ったせいかすぐなくなっちゃうからさ」

彼女の傍にいると落ち着いてはいるのだが、心臓が激しいビートを打っている。前にもこんなことはあった。いや…彼女の姿を見つけた時、彼女の傍にいる時、彼女と話している時はいつもこうなる。……こんな気持ちは初めてだ、と赤羽は左胸のあたりを手で押さえた。

「よし、買おうっと。これ中古であんまり見かけないんだよねー」

そう言いながらなまえの綺麗な指先がケースに触れたかと思えば、彼女はそのアルバムを手に取る。動作に見とれていた赤羽はハッとして相づちをうちながら訊ねた。

「どんなバンドだい?」
「メロディアスハードロックね。とても親しみやすいメロディーでギタリストも技巧派だしお勧めよ」
「そうか」
「あ、買うならこっちの方がいいよ。1stが超名盤!」

店員顔負けで進めてくる。しかしそう言って笑ったなまえの顔がとても心地よいリズムとして僕の胸に響いた。いつまでもこうやって君の隣でその顔を見ていたいと思ったんだ。



それから僕は彼女に勧められたアルバムをレジに持って行き、その日のうちに聴いた。ギターの弦を張り替えながらぼんやりと聞いていると、心に響くメロディーが聞こえてきた。暫くその曲に聴き入っていると、それは恋についての歌のようで、特に…恋をした時の気持ちについて歌っているようだ。その曲を聴き入りながら、僕はなまえについて感じていた感情を知った。

ああ、きっとこれは恋なのだと。……そう、僕はきっとなまえが好きなのだ。こんな気持ちは初めてだ。今まで彼女はいたけれども、なまえみたいに心をロックする体験は初めてだった。

だから分からなかった、この気持ちがなんなのか。でも……この曲を聴いて判明した。



「赤羽、聞いてる?」

なんかぼーっとしてるけど、と不満げな表情をしながらなまえは訊ねる。ああ、そういえば今は今月どの新譜を買うか話していたっけ。

「ああ」

すっかり彼女との思い出に意識を傾けていたから聞いていなかった。ハッと我に返って赤羽は返事した。

「じゃあ今度、赤羽が空いてる日あったらタワレコ行こう」
「……今日」
「今日!?」
「ダメかい?」
「いや……ええと、大丈夫よ」
「なら次の授業終わったら行こう」



そして授業が終わった後、あの日と同じくタワレコにて、2人して並んで新譜を聴く。

「FAIR WARNINGは今回も良かったね」
「ああ、さすがとしか言えないほどだ」
「よっし、買っちゃおっと」

なまえは声を弾ませて新譜コーナーにいくつも積まれている中から1枚を手に取った。しかし赤羽は新譜を手に取ろうとしない。好きなバンドなのに買わないなんて、となまえは不思議に思った。

「あれ、赤羽は買わないの?」
「…ああ。君と結婚したら持ってるCDが被るから別にいいかなと
「い、意味分かんないから!というか色々とぶっとびすぎでしょ!」

今はまだ、ただの趣味友達だけど……いつかは恋人の地位をきっと手に入れてやる。顔を少し赤くしながら反論するなまえに赤羽はそう思いながら笑った。


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タイトルはDanger Dangerの曲名から。書いたのは2013年4月で、ある意味時事ネタでした。新譜ラッシュの時は何をまず買おうかいつも迷いますね。だって全部買うと破産するからwww
赤羽さんは本命に対しては好きって気づくのに少し時間がかかりそうなイメージ。あとスキンシップ過剰なのは元々の気質だと思いま(殴)
音楽的には今回はメロディックなものをつめてみました。
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