Kickstart My Heart
周りは知らない人だらけだし、どうやら趣味に関するお仲間も見つかりそうにない。
そうだよ、だからちょっと赤羽に惹かれるんだ。

勝手に下の名前で呼ぶなとか色々ツッコミたいことはあったが、"赤羽はハードロックが好き"という事実に、全てが消し飛んでしまった。そして学科が同じこともあって、それ以降、気づけば赤羽と行動を共にすることが多かった。




「……って感じかな、なれそめは」

友達であるアメフト部マネージャーのまもりに赤羽とのなれそめを聞かれたので(ここ重要)、彼と初めてたくさん話した時のことを語ると彼女は複雑な表情をしていた。因みにここは大学内のカフェテリアである。まもりとは学部は違うけれども、赤羽の陰謀(だって就活に有利とか言うから!)によりアメフト部のマネージャーのお手伝いをさせられてから仲良くなった。

「えーっと、じゃあ赤羽くんと仲良くなったのは音楽の趣味があったから、ということね?」
「そうそう。じゃなきゃ絶対友達になってなかった。実際、高校同じだったけどその時は顔見知り程度だったし」
「そっか…。面白いつながりね、とても個性的だわ」
「うん、今かなーり言葉濁したよね、まも」

軽く笑ってなまえはツッコミを入れた。


「……ヘヴィメタルが好きですって言うとみんな引いちゃうもの。同族にしか理解されないのよメタラーって。だから、同族にあうと親近感を抱いたりそれだけで好感度が上がっちゃうの」

なまえはちゅーとストローで豆乳ラテを飲む。引かなかったのはまもだけね、と寂しそうに笑った彼女を見て、彼女は同族がいなくて寂しい思いをしてたんだとまもりは理解した。だからこそ、2人は急速に仲良くなったのだろう。そして、だからこそなんだかんだで一緒にいるのだろう。まもりは微笑ましくなって優しい表情で彼女を見る。

「変人だけどそう悪い奴じゃないし、いい趣味友達だよ」
「え、まだ付き合ってないの!?」

衝撃の事実にまもりは目を丸くして訊ねた。

「まだってどういう意味よ、まもー」
「だ、だってあんなに仲良いのに…!」
「本当にただの趣味仲間よ」

思わず出てしまった本音を隠すようにまもりは口を塞いだが、それでは既に時は遅かったらしくなまえは苦笑いを浮かべながら問いつめる。慌ててまもりが付け加えて言うと、空になった容器を机の上に置いてなまえは冷静に答えた。


「フー…期待に応えられないで悪いが、なまえの言う通りだよ」
「そうそう……って赤羽!?」

なまえはガタガタガタッと椅子ごと赤羽の近くから身を引いた。それはもうとても俊敏な動きで奇妙な光景だったとまもりは後にアメフト部員に語る。

「なんであんたがここにいるのよ!!」

彼女はバッと椅子から立ち上がって近づく赤羽と距離を取った。

「なまえ…今日は一緒にタワレコに行こうって約束してたじゃないか」
「してないしてない」

ぶんぶんとなまえは首を横に振る。それを見た赤羽は少し不満そうなすねたような表情を見せた。

「いや、したよ。この前、君が今日提出のレポートやってる時に訊ねたら行くって言ったじゃないか」

今日提出のレポート。……学習心理学のレポートだ。なまえは脳みそを動かして、その時のことを一生懸命思い出す。4000字のレポートを早く終わらせたくてせっせとパソコンで打ち込んでいたら、隣から赤羽が話しかけてきて…。とりあえず作業を終わらせたくて必死だったから、適当に頷いてしまったかもしれない。「あーはいはい行くからちょっと黙ってて」と言ってしまった気がする。



「……」
「思い出したかい?」

なまえは思い出すと血の気が引いた。嫌になるほどキラッキラの良い笑顔を向けて赤羽は言う。どうしようコイツ殴りたい。

「というか!人が必死にレポートやってる時に話しかけられたらそりゃそう言うわよ!セコすぎる!」

なまえの言葉を聴いて、まもりは赤羽の巧妙な手口に彼女はつい頷いてしまったのだろうと推測した。

「だが君は今からHELLOWEENの新譜買いに行くだろう?」
「買いに行きますけどっ…!」

あんたと一緒に行くのは絶対嫌だと思ったが、頷いてしまったものは仕方がない。約束を破るのはよくないもの。はめられたことに対して悔しいと思うのをぐっとこらえてなまえは答えた。

2人のやりとりを見て、まもりは表情を緩ませる。わざわざ一緒にCDを買いに行くくらい、赤羽くんはなまえのことが好きなのね。赤羽くんはたまに変なことを言っているけれども、なまえに対していつも優しい笑顔を向けている。そしてなまえも赤羽くんと一緒にいる時、文句は言いつつも満更でもなさそうなのは本人も気づいていないんだろうな。


「という訳でなまえを借りるよ」
「どうぞー」

よそいきのクールフェイスで赤羽はまもりに言い放ってなまえを連れて行こうとする。仲良く音楽トークを始めながらカフェテリアを出て行く2人の背中をまもりは笑って見送った。


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タイトルはMötley Crüeの曲名から。赤羽があんまり変態になってないけどこれから変態にしていきます← Helloweenの新譜ようやく買いました。"Straight Out Of Hell"良いよ!
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