I Wanna Touch U
※裏までいきませんが少しアダルティーな表現が含まれます。ご注意下さい。
9月25日、107-16でガンマンズは裏原宿ボーダーズに大差をつけて勝利した。ガンマンズは春大会の時もすごかったけど、さらに磨きがかかっているように感じる。スコアが3桁なのはうちのチームくらいであるからだ。
「わーついに8強ね!」
帰りのバスの中でトーナメント表を見ながらなまえははしゃいだ。そんな彼女の姿さえも愛おしく思いながらキッドは優しいまなざしで彼女を見つめる。
ここ最近、なまえに触れたいとよく考えるようになった。勿論、なまえに初めて触れたいと思ったのは、ここ最近のことじゃない。付き合いだしてからずっと考えていたことだ。彼女と仲直りしてから心の距離が縮まった気がするし、この前ようやくフレンチキスまでこぎ着けた。なら次は身体の距離も近づけたい。端的に言えば、まあ、その…肉体関係を持てればとも思っている。俺だってそういうのが気になるお年頃だし、合宿でアメリカに行った時にヒル魔氏に言われた言葉が頭から離れないのだ。
―――いつか寝取られちまうぞ、と。
誰にも奪われたくないけれど、彼女が良いというまで俺は待つつもりだし、誰にも手を出させない。座席に無防備に置かれている彼女の手をキッドはそっと握った。
「楽勝だぜ!アメリカ合宿で練習した技が全然使えなくてつまんねーくらいだ。」
「まあ今のところはそれくらいでいいんじゃないスか?」
なまえの言葉にまだ暴れ足りないという感じで言う仁科に苦笑しながら答えるキッド。
「次の対戦相手はどこだっけ?」
「江戸前フィッシャーズ。…このチームの対策もばっちりですよ。」
なまえはにっこりと笑って言った。うちの有能な主務はもう対策も練っているらしい。
「勝率どれくらいなの?」
「ほぼ100%かな。…完璧なものって存在しないから断言はできないけど勝てる相手よ、それもスタメンでなくてもね。」
「そりゃ頼もしいな!」
「なら他のメンツの練習のために鉄馬は休ませるか。」
なまえの根拠ある強気な発言に牛島と監督はご機嫌であった。
「ただ問題は…次にどっちが上がってくるかなのよね。」
「どっちって?」
トーナメント表を指でなぞりながら呟くなまえに波多が訊ねる。
「泥門か巨深。波多くんはどっちが勝つと思う?」
「えー…雑誌にはどう書いてあったんだ?」
「泥門がCランクで巨深がDランク。でも筧くんや水町くんをはじめ、長身の選手が出てきたから実力は拮抗してると思うわ。」
これから賊学vs巨深、独播vs泥門のビデオを分析しないとなーとなまえは思いながら巨深の選手で分かっている部分のデータをまとめたものをパラパラと眺めた。来週には巨深vs泥門の試合があるから最終的にはそれを見てから考えれば良いんだけれどもやれることは早いうちからやっておきたい。
「なまえ、今日も残る?」
隣に座っていたキッドが会話を終えた彼女にこっそりと尋ねる。
「うーん、どうしようかな…。」
「家に来てやる?」
キッドは悩むなまえの耳元でひっそり囁いた。残念ながら今回はほんのちょーっとだけ下心はある。期待はしてないけど。キッドの予想通り、そんな彼の思惑等全く気づかずに彼女はじゃあお言葉に甘えようかななんて笑って頷いた。
その後、学校にて反省会を少し行った後に、なまえはキッドと共に彼の家へと行った。
「お邪魔しまーす。紫苑の家、久しぶりね。」
「そうだったかねえ。……あー、2学期始まってからは来てないか。」
確か彼女が最後にここに来たのは太陽スフィンクスとの練習試合の前日だったはず。しかしもうすっかり慣れた様子で荷物を置くとなまえは机の前に座った。俺も荷物を置くと飲み物を準備する。彼女はその間、必要なものを机の上に出している。
「準備早いねえ。」
「だってあんまり遅くなると貴方が心配するでしょう?」
マグカップ2つを手に戻って来たキッドになまえは冗談まじりに答えた。
それから暫くは泥門と巨深の対策の試合をビデオで見ながら敵チームの分析をしていた。分析が一区切りついた時、俺は自然な動作でなまえを抱き寄せてキスをする。逃げられないように腰をがっちり掴んで何度も何度も唇を重ねた。
「ん、…」
彼女の口からもれでる悩ましい声が俺の耳を刺激する。そして彼女は現在正座して床に座っているためやわらかそうな太ももが俺の目を刺激している。たまらないねぇ…。そう思うと、やはり彼女の身体に触れたいという欲求が高まった。なまえの舌をぺろりと舐めて、彼女の口が開いたところですかさず彼女の口内に舌を捩じ込む。
「っん!…んん、っふ…ん…」
くちゅり、と互いの舌を絡ませる音を響かせてディープキスをするとなまえは恥ずかしそうに耳を赤く染めて俺のキスにこたえてくれた。それがうれしくて舌をもっと深く絡める。なまえとのキスはとても情熱的で気持ち良い。
この先の関係に進みたい―――無意識にそう思っていたのだろう。
キッドは舌を絡めながら彼女を抱きしめていない方の手で肉付きの良い彼女の太ももにそっと触れると、内股を軽く撫でた。するとなまえは身体をびくつかせて、両腕で俺の胸板をグッと強く押した。
「っ…ごめん!」
そこでようやく自分のしようとしていたことに気づいて俺は彼女の身体を離す。何を考えているんだ俺は…。彼女が良いと言うまで待つと決めていたのに。
「いえ、ちょっとびっくりしただけ…。……も、もう帰るね!」
気まずくなってしまってそう言ってなまえはバッと立ち上がって自分が持ち込んだものを手際よく鞄につめた。
「…そうだね、その方がいいよ。結構時間経ってるしねぇ。」
やっぱりまだ早かったか…。
拒絶されてしまったことにショックを受けつつも少し罪悪感を感じた。
「…じゃあ、あの…また明日ね。」
玄関で少し身体を硬くしてキッドから視線をそらしながらなまえは言う。キスは怖がらせちゃうかなと思ったので、今回は頭を撫でて俺はまた明日、返した。そうするとなまえはうれしそうに俺を見て笑ったので少し安心した。
少しぎこちない空気が2人の間にできてしまった。しかしそれはほんの微妙なもので2人きりになる時以外は問題ないほどだったので普段の学校生活においては特に差し支えはなかった。ただ、2人きりで会う回数は減ってしまっていた。
「比奈ちゃんたちに、相談したいことがあるんだけど…。」
それがなんだか寂しくてなまえはとうとう恋愛経験のある比奈やチアの友達に相談することにした。因みにここはチアの部室で、今は部活が終わった後だ。
[*prev] [next#]