Can I Play With Madness
「それはすごいね。」
「いや、私が前にいた学校は学力重視だったから必然と叩き込まれたっていうか…。」

あははと乾いた笑いをするなまえ。そんな彼女の過去が少し気になったキッドは彼女に尋ねた。

「そういえば元々はどこ出身なの?」
「聖○○女学院高校。」
「うわ、それすごい名門じゃないの。」

あれだ、アメフトやってる高校で例えると王城高校くらい頭のいい学校である。そういう世界から離れた俺でも知ってるよとキッドは再度驚いた。それに対してなまえは苦笑する。

「…でも自由はあんまりなかったわ。」


「ちょっと暗くなっちゃったね。ごめんなさい。…さ、無駄話はこれくらいにして勉強しないと!」

少ししんみりしてしまった空気を感じてなまえは慌てて話題を変えた。
そうだ、そもそも紫苑の家に来たのはテスト勉強をするためなのだ。

「…そうだね。」

そろそろやるか、と教科書をようやく見る3人。ドキドキしてキッドの方をまともに見られないなまえは自分の教科書を見てテスト範囲を確認した。


「英語はの文法部分は分詞構文と仮定法と慣用表現か…厄介ね。」
「でも今回の範囲は前回より狭いらしいからなんとかなるよ鉄馬。」

難しい単元を一気に固められたテスト範囲に、ううーんと唸るなまえ。その横でだらだらと汗を流す鉄馬にキッドはフォローを入れた。英語は長文読解が基本だから、文法と単語、それから基本的な文の構造を覚えればなんとかなる……はず。テスト範囲の文法と単語や文の構造を確認して、覚えていないところがあれば、一生懸命覚えた。英語が終わると今度は科目を数学に変える。

「英語はこんな感じであとはもう運頼みよね……。」

長文なんて何が出るかなんて当日まで分からないし。
英語のテキストをしまって数学TAの教科書を開きながらなまえは言った。

「運って……。」
「えー、でも最後はそうだよね?鉄馬くん。」

呆れたように言うキッドに、ね、と鉄馬に同意を求めるなまえ。鉄馬も黙って頷く。

「ほらー鉄馬くんもそう言ってるもの。」
「無駄話してないで数学やるんじゃないの?」

苦笑しながらキッドは授業で取り扱った問題集をもう一度解き始めた。彼女や鉄馬もまた返事をしながら問題に手をつける。キッドが5問目くらいを解き終わった時、経ってチラリと2人を見れば2人ともまだ3問目。そこでつまずいているようだ。

「…大丈夫?なまえ、鉄馬。」
「うー…もうダメ脳が溶けちゃいそう。」
「そんな簡単に溶けないでしょ。ほらどこが分からないの?」

キッドは苦笑しつつも、ノートを見る為に身を乗り出して訊ねる。
そうしてみると、案外距離が近いということに気づいた。


自分の彼女が、好きな人が、なまえが自分の所有している空間にいるってだけでもまずいのに……理性もつかねえ。しかもこんなに近くにいる。手元を見れば、切りそろえられて丁寧に手入れされた綺麗な爪。視線をあげれば、伏せられた彼女の長い睫毛。

……もうちょっと近づいたらこれ、キスできるんじゃないの?
そこまで考えて彼女に触れたいという欲求がわきあがってくるのを感じた。
何を考えているんだ、なまえはここには勉強しに来てる。しかも鉄馬もいるのに。


「紫苑?」

名前を呼ばれてキッドはハッと我に返った。

「あ、ごめん。…何?」

そういえばどこが分からないのか聞いていたところだったな。

「あのね、ここまでは出来たんだけど、ここからどうしたらいいか分からなくて……。」
「最初から順を追って説明するよ。まずここはこうして…。」

キッドの持つシャーペンが紙の上を滑らかに動いていく。
そうすることでキッドは意識をなまえ以外に向けて気持ちを落ち着けようとしていた。

「あ、なるほど!だからこうなるのね。」

分かったー!とうれしそうに笑うなまえ。
そうして互いに分からないところは教え合い、時間は過ぎていった。



「そろそろお開きにしようか。」
「頑張ったー!」

時計を見るともう7時前だ。キッドが終了の提案をするとなまえは手を組んで、ぐーっと頭上に腕を伸ばして伸びをする。

「はいはい、早く帰る準備して。……鉄馬、なまえを送ってあげて。結構遅い時間だから。」

2人が帰る準備をしている中、キッドが彼女に分からないようにこっそりと鉄馬に耳打ちすると、鉄馬は勿論だと言わんばかりに力強く頷いた。


「2人とも、また明日。」
「うん、紫苑もまた明日ね。」

玄関まで―――といってもかなり短い距離だが、鉄馬となまえをキッドは見送った。頷く鉄馬に、にこにこと笑って手を振るなまえ。


紫苑の住むアパートを後にすると、鉄馬がなまえの隣に並んだ。

「…家まで送る。」
「え?でも…鉄馬くん、お家の人が心配するよ?」
「俺はいい。…お前が心配だ。」
「…ありがとう。」
「紫苑も同じことを言うだろう?」
「うん。…そうだね。」

その言葉に、多分キッドがそう言ったのだろうとなまえは悟った。
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