The love seems to be a blue sky
I follow forever widely
The love seems to be the ocean
I follow forever deeply
The love seems to be a mountain range
I follow forever highly
To your cause
To your cause
Your smile seems to be a rose
It is warm if I smile
Your eyeball seems to be jade
If shine; shiningly
Your hair seems to be a waterfall
I am glossy if I drift
All of you is all of the world
All of me is all of the world
I love honey
I love you
This love is eternity!
愛は青空のよう
広くどこまでも続く
愛は大海のよう
深くどこまでも続く
愛は山脈のよう
高くどこまでも続く
君の元へ
君の元へ
君の笑顔は薔薇のよう
微笑めばポカポカ
君の目玉は翡翠のよう
輝けばキラキラ
君の髪の毛は滝のよう
流れればツヤツヤ
君の全てはこの世の全て
僕の全てはこの世の全て
愛してるよ
愛してる
この愛は永遠!
cElsie
ナマエが大きな声で叫んで演奏が終了すると、誰ともなく拍手が沸き起こった。ダンブルドア先生とシリウスは立ち上がってナマエに拍手した。ナマエはにこにこと笑いながらドレスを摘んで優雅にお辞儀をした。
「恥ずかしい。」
そうは言ったものの、ナマエは大分慣れてきた様子で、しっかりと胸を張って立っていた。
「この歌を、魅力的な人に歌ってもらうのが夢じゃった!」
ダンブルドア先生はご満悦な様子で熱っぽくそう言った。その後、アンコールに応えて2回ほど演奏すると、ナマエはいよいよくたくたになった。ダンブルドア先生はいつの間にかいなくなっていて、残されたナマエとシリウスは大勢の人に囲まれている。各寮の先生が躍起になって下級生を大広間から寮へ返そうと叫んでいるのを横目で見ながら、ナマエは頼りない足取りで近くにあった椅子に腰掛けた。途端にわっと囲まれる。
「とっても素敵だったよ!」
「ねぇナマエ、アンコール。」
「もっと早いの、お願い出来ないかな?」
ナマエは曖昧に笑ってお茶を濁そうとしたが、皆も中々引き下がろうとはしない。困りきったナマエを、シリウスが何気なく立たせた。
「悪いなー、俺らもちょっと休憩。」
どこからとも無くブーイングが沸き起こった。それは主にシリウスを取り巻いていた女の子たちからだったが、シリウスはさして気にする様子もなくナマエを連れて人込みに紛れた。
シリウスは大広間まで抜け出して、ナマエを中庭へ連れて行った。
「大丈夫?ちょっと疲れた?」
シリウスは歩きながらナマエの顔を覗き込むようにして尋ねた。
「うん、まあね、疲れた。」
ナマエは素直に頷いてちょっと笑ってみせる。うんざりしたような笑い方が妙に大人びて見えて、シリウスは背筋がぞくりとするのを感じた。雪の積もった辺りを高いハイヒールで歩くナマエは、制服からは想像も出来ない程近寄りがたかった。シリウスの隣を離れて1人先を行くナマエを、シリウスはのんびりと追いかける。まさに2人の恋を象徴しているようで、シリウスは自嘲気味に笑った。
「寒くないー?」
随分離れてしまったナマエに、少し大きな間延びした声でそう言うと、ナマエはくるりとシリウスを振り返って立ち止まった。
「大丈夫よー。難しい防寒の魔法を、念入りにかけてきたからー。」
そうは言うものの、ナマエの服装は夕方と変わらずドレスと手袋だけ。マグルが見たら思わず悲鳴を上げてしまうかもしれない格好だった。ナマエは適当な場所にぺたんと座り込むと、杖を構えた。シリウスが隣に腰をおろす頃、どこからとも無くハチミツ酒が並々と注がれたゴブレットが2杯飛んできて、ナマエの手に納まった。
「乾杯しましょう。」
ナマエは嬉しそうにそれをシリウスに手渡す。シリウスは受け取るとナマエのゴブレットにかちんとぶつけた。
「乾杯。」
「グリフィンドールの優勝に!」
「リリーとジェームズのダンスと、俺たちの演奏の成功に。」
ナマエはにっこり笑ってごくりと大きく一口飲んだ。
「ナマエはお酒平気なの?」
少し驚いてシリウスが尋ねると、ナマエは「嫌いじゃないわ。」とだけ答えた。
「それにしても本当に嬉しい、グリフィンドールが優勝して!」
「負けるはずなかったさ。」
「緊張で眠れなかったって言ってたのは、どこのどなた?」
「お互い様だろ。」
シリウスとナマエはけらけらと笑い合った。少し離れたところで、7年生のカップルが迷惑そうに2人を振り返っていたが、やがてもっとムードが出せる場所を探しに行ってしまった。おかげで、辺りには誰もいない。大広間から漏れてくる笑い声や音楽と、風が走る音しか聞こえなかった。
「ようやく終わったわね。」
ナマエが安堵したように言ったので、シリウスは少し寂しくなった。もう今までのように、練習と称して気軽に話したり出来なくなるのかと思うと恐ろしかった。
「エベレストにヤッホーってしに行くんだろ?」
「チョモランマよ。」
ナマエは、シリウスの表情の変化に気付かないふりをした。
「レタスだって食べられるし、廊下の端から端にいる人を呼ぶことも出来る。」
夢見る少女のような顔で言うので、シリウスは思わず笑ってしまった。
「お疲れ様。」
優しい声で言うシリウス。ナマエは、ここで顔を上げるべきか迷った。もういい加減はっきりしなければ、闇雲にシリウスを傷つけるだけだ。さっきのように。しかし、自分の中の正直な心境を探れば、それは実に中途半端なものだった。ナマエは考えることを放棄した。意を決したように顔を上げて、じっとシリウスを見た。
「でも、シリウスの飴が食べられなくなるのは、ちょっと寂しいと思う。」
余計なことは考えず、口から出る言葉に任せてみよう、と思ったのだ。それは少し卑怯な気もしたが、今はこうするのが最善だと思った。
「…気に入ってもらえて、光栄だ。」
「一番好きなのは、グレープフルーツ味。イチゴは、あんまり好きじゃないわ。不自然で。」
「そっか。」
シリウスが呟いた瞬間、大広間からきゃーっと大きな歓声が聞こえてきた。2人は驚いてぱっと後ろを振り返ったが、特に何も見えず、また前を向いた。
「皆羽目を外してるわ。」
「そうだなー、明日はクリスマスだし。」
するとシリウスはまだ少しお酒が残っているナマエのゴブレットをやんわりと掴んで取り上げた。ナマエはシリウスの行動の意味が分からず首を傾げる。
「シリウス?」
ナマエが尋ねると、シリウスはちょっと笑ってナマエを見た。
「これを飲み終えたら、ナマエは皆のところへ戻っちゃうだろ。」
ナマエはぽかんと口を開けたまま、シリウスを見上げた。しばしの間の後、シリウスはポツリと続けた。
「そんなの寂しい。もう少しだけでもナマエを独り占め出来るなら、」
そう言ってシリウスはナマエの手の届かない雪の上に、自分のゴブレットと並べて置いた。ナマエは居た堪れなくなって、遠く前を見据えた。
その時、ナマエの顔の横をふわふわと妖精が漂った。きらきらと光を振り撒きながら、まるで蝶のように飛んで行くそれを、ナマエは目で追った。
「ねぇシリウス見て、妖精よ!会場から逃げ出してきたのかな?すごい、本物だ。」
興奮するナマエを他所に、妖精は知らん顔で頼りなさげに飛んでいる。少しの間ナマエの顔の周りを飛んだ後、妖精は不意に風に煽られて舞い上がった。妖精の動きにつられてナマエの目線も動いた。雪に手をつき、ぐっと身を乗り出す。
「あ、シリウス!頭に妖せ 」
かたん、と小さな音を立ててゴブレットが倒れて、ハチミツ酒があたりの雪を少し溶かした。
シリウスは、ナマエの手の上にそっと自分の手を重ねてナマエにキスをした。
ナマエは目を閉じる暇も無く、実際は数秒にも満たない時間を永遠のように感じていた。
「ナマエ。」
シリウスはおでこがくっつくほど至近距離で、とても大事にナマエの名前を囁いた。顔を伏せようとするナマエを、視線で縫い付けて放さない。
「ナマエ。」
ナマエは、シリウスの手にぎゅっと力が入るのを感じた。どちらの手も、少しだけ震えていた。
「…ぁ、うん。」
やっとのことでそれだけ口にすると、シリウスの手をぱっと振り払った。何とも言えない空気が辺りに漂った。
「嫌、だった?」
シリウスは、搾り出したような声でそう言った。ナマエはじっと固まって動かなかった。
「でも俺、謝らないから。ナマエ、」
シリウスが名前を呼ぶと、ナマエは突然立ち上がった。
「ナマエ。」
「見ないで!」
シリウスも慌てて立ち上がろうとしたが、ナマエは大声で叫んでそれを制した。
「見ないで、お願い。」
シリウスは仕方なく、言われた通りに腰をおろした。ナマエはシリウスに背を向けたまま、両手で顔を覆っていた。
「母は今、1人でイギリスの家に住んでるわ。」
突拍子も無いナマエの話に、シリウスは純粋に驚いた。いきなりあんなことをして、混乱しているのかと思って口を挿まずにいると、ナマエは衝撃的なことを話し出した。
「父は仕事でドイツにいるの。愛人と2人で暮らしてる。小さな子供もいる。」
ナマエの思いがけない一言に、シリウスは目を見開いた。ナマエは背を向けたままひらひらと手を振った。シリウスは、ナマエが今どんな顔をしているのか知りたくなった。シリウスが知っているナマエは、どこからどう見ても愛されて育った女の子に見えたから。
「前に、伯母さんとお祖母さんがヴォルデモートに殺された話をしたよね?」
「…うん。」
「母は、本当にショックだったの。」
ナマエは一言一言を噛み締めるように言葉にした。
「毎日毎日声を上げて泣いては、疲れて眠る。時には私をぬいぐるみか何かのように抱き締めながら、時には父に抱き締めてもらいながら。私はまだ幼かったから、意味が良く分からなかった。ただ、母が必死になって私や父の名前を呼んで「そばにいてちょうだい」って頼むから、そうしたの。」
ナマエの髪は見事なほど夕方と変わりなくきちんと結われていて、一片の隙もなかった。それがなぜか、ナマエの弱さを強調しているようで、シリウスは少しだけ目を逸らした。
「そんな日々が続いたわ。そして、私が学校に上がると段々、父が家にいる時間が減っていったの。母が滅入っているのが鬱陶しかったのか、煩わしかったのか知らないけど、とにかく、父は家に寄り付かなくなった。母の手紙には毎回、寂しい気持ちが綴られていた。私は何度も父に頼んだわ。「お母さんのそばにいてあげて」って。だけど父は私には笑って誤魔化すだけだった。そして、そのうち勝手に単身赴任を決めて家を出てしまった。」
ナマエは付け加えるように「証券会社は転勤が多いから。」と言った。会場からは、さきほどよりも大きな笑い声が聞こえてきているが、2人の耳には入らなかった。
「夏休みのある日にね、母は突然思いつめたような顔をして父の単身赴任先のドイツへ行くと言い出した。私は心配だったから着いて行ったの。その時は分からなかったけど、母は多分女の勘で、父に別に女の人がいることに気付いていたんでしょうね。ドイツの、父が借りているアパートメントの前で、母と私は何を見たと思う?父が知らない妊婦の肩を抱きながら歩いているところを見たのよ!母は、父に声をかけることもなく、逃げるようにその場を立ち去った。そして、近くの裏路地で自分のこめかみに震える杖を突きつけた。あんなに恐ろしい瞬間は無かったわ。私が大声で叫ぶのも気にせず、母は呪文を唱えたの。忘却術よ。でも失敗した。あの日以来、母は楽しいことや嬉しいことしか覚えていられなくなったの。悲しいことや嫌なことは1分と経たず忘れてしまうわ。それがどんなに惨めで哀れなことかさえ、分からなくなってしまったの!」
シリウスは、口を半開きにしたままナマエの話に聞き入った。明るく笑うこの女の子にこんな過去があったなどと、一体誰が想像しよう。パーティで会った、あの美しい女性がこんな過去を背負っていたなどと、誰が想像しよう。
「ねぇシリウス、例えば、誰かが誰かを愛するって、何だろう?ただ好きなのとは違うんだよね?愛し合うって、どういうこと?」
突然、びゅうっと大きな音をたてて風が吹いた。ナマエのドレスの裾が大きく翻る。
「男女の間に、本当に愛が存在するなんて、私にはとても信じられない。」
冷淡な声とは裏腹に、ナマエの眼からはころころと大粒の涙が零れた。シリウスは無言で立ち上がると、自分のローブをナマエの頭からかけた。そして、ローブごとナマエをぎゅっと抱き締めた。ナマエは小さく震えていて、とても温かかった。
「見てない。これなら、見えない。」
シリウスの言葉に、ナマエは泣きながら少しだけ笑った。
「シリウス。」
もごもごとくぐもった声で、ナマエはシリウスの名前を呼んだ。シリウスは悲痛な顔のまま、ナマエを抱き締めていた。
「例えば、シリウスがこうやって私を甘やかしてくれるのは、愛?」
シリウスは答えない。答えられなかったのだ。
「愛なんて、まぼろしよ。一瞬だって、本当に存在することなんて無いんだわ。もし今シリウスが私を好きで私がシリウスを好きでも、その気持ちはずっとは続かない。そのうち他の誰かに移っちゃうの。だから私はシリウスの気持ちを受け入れない。受け入れて、傷付きたくない。シリウスを想って嬉しくなったり悲しくなったりしたくない。」
ナマエの小さな声は、シリウスの耳に届く前に空気に溶けてしまいそうだった。
「私たち、ずっと友達でいたほうがいいのよ、シリウス。」
ここで、大声で「違う!そんなことはない!」と叫べたら、どんなに良かっただろう、とシリウスは思った。例えばジェームズのように、自他共に認めるほどナマエに一途だったなら、自分は叫ぶことが出来ただろうか。
自分が不甲斐なくて情けなくて悔しくて、シリウスは泣きそうになった。
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