【DC夢】終身嘘つき | ナノ


▼ 自業自得の2人

「また来たんですか」
「また来ちゃった」
「おにーさんも安静なのに」
「まあでも暇だしー。ちょっと早いリハビリってやつだよ」
「調子いいですね。変な風に骨がくっついても知らないですよ?」
「そこはだいじょーぶだよ。実はそこんとこバレてて、めちゃくちゃ蒸れるけどがっちり固定されたから」
「、、、胸張るところではないような」
「まあ、気にしちゃダメだよ、うん」

骨固定するにしてもなんだか厳重だなと思ったのはそのせいか。
爆弾事件後、私と萩原さんは仲良く吹っ飛んだ影響で骨がいくつかポキビキしたのと萩原さんは内臓もちょっとダメージを負ったので、ある程度回復するまで入院することになった。

事の起こりは先日の爆弾事件。
爆弾騒ぎに全く気づかず作品制作に集中していた私は、何の知らせかふと外が嫌に静かなのに気づき、階の廊下を玄関から覗きこんだところ退避!逃げろ!と目の前で叫ぶお兄さんこと萩原さんにばったり遭遇。
巻き込まれ続ける長年の勘だかわからないものに従い、とりあえず何か危ないらしい廊下からお兄さんを逃がそうと、咄嗟に彼を部屋の中に引っ張りこんだ。
火事場のバカ力もあるだろうけれど、上手いこと引っ張り込めたと思った瞬間、人生初の衝撃を受けてそこから記憶がない。

ここで話が戻るのだが、どうもこの時私たちは廊下にあった爆弾でぶっ飛んだらしい。
吹っ飛んだわりにダメージが少ないのは、爆発の衝撃から無駄に頑丈だったマンションのドアが守ってくれたから。セキュリティがしっかりしてるところだったからか、ドアもちゃちいのじゃなかったから良かったらしい。
瓦礫のなか、ドアが盾になって二人分の空洞を空けていたというのだからドア様々である。
まあ私の怪我が軽度なのは、これだけが要因ではないのだけれど。

ともあれ、目覚めた私に待っていたのは見舞いにきた両親による説教だった。母には笑顔で、父には静かに怒られた。
というのも、私の怪我の程度は正直爆発に巻き込まれたのに大したことはない。軽い?骨ポキで擦り傷切り傷、軽度火傷と額をちょっと切ったくらいだ。今目の前でけらけら笑ってる萩原さんより実は全然軽い。
のにも関わらず、私が目覚めたのは萩原さんが目覚めるよりも後の日付だった。
そしてここが両親の怒りポイント。

私は当日、極度の睡眠不足と軽度の栄養失調だったのだ。

胃の中すっからかんだから、爆発の衝撃でゲロっても胃酸しか出てこない。寝不足のところですこんと意識が落ちて怪我もしたのだから、体は問答無用で回復のための休養の体制に入る。
怪我自体は前述のとおり大したことはなかったので、結果として、私は足りない睡眠を補うようにそれは深く深く眠った。栄養は点滴でバッチリだったので、私の体は何の問題もないと判断したのか、夢も見ないほどぐっすりだった。

爆弾事件に巻き込まれたと連絡を受け、一応ちょっと焦って海外から帰ってきた両親と、その両親と合わせるようにして病院に駆けつけた弟は、一連の報告を医師から受けて拍子抜けしたそうだ。
爆傷で苦しんでいるだろうはずの娘は、体調管理を疎かにしたことの方が大きな要因で、こんこんと眠っているのだから、仕方がない。

こうなったのも、制作に集中しすぎると寝食を忘れる私の悪癖のせいである。
たまたま仕事が連続で入ってど修羅場だったことも原因の一つだ。要はタイミングが悪かった。

というわけで、私は両親に怒られ、両親による告げ口で担当さんにはザリッと仕事を減らされ、弟には失笑を貰った。怪我も入院も不可抗力、、だというのに、酷いものである。

「初穂ちゃん?ぼんやりして、どうしたの?まだ具合悪い?」
「ああ、いえ。なんでもありません。すみません、心配させましたか?」
「怪我より体調不良のほうが深刻だって聞いてるからね」
「、、、萩原さんまで知ってるだなんて、、、不覚」
「だって全然起きないんだもん。俺も一般市民巻き込んでしまったし、すごく心配したんだよ」
「あー、ホントにすみません」

因みに巻き込んだ形の萩原さん、病院に突っ込まれているのも本件の処罰である謹慎の一貫である。完治するまで出るな、だそうだ。

減給だの階級落としだの免職だのいろいろ重いことになりそうだったが、ここは犯罪頻発都市米花町。一々巻き込んだ云々で免職したり階級落っことしてたら警察に人は居ない。
事件吸引機と事件に好かれる男達の住むヨハネスブルクにおいて、殺気ゲージはいつでもMAXだ。お願いだからみんな落ち着いて振り上げたナイフから手を離してほしい。ナイフがダメなら銃に爆弾とか言わないで。忘れないでここは日本。閑話休題。

兎に角、萩原さんは謹慎と復帰後の特別訓練とデスクワーク(曰く雑書類処理係。本人がとても苦手としていることらしい)、その他なんかあるらしいが比較的軽い処分ですんだ。
巻き込まれた本人の嘆願と、私が家族にお願いして出してもらった嘆願書の結果である。

そもそも玄関のチャイムを鳴らして知らせてくれたらしい警告に気づかなかった私が悪いし、目が覚めなかったのもやっぱり私のせい。何より私がかなりの軽症で、萩原さんばっかり怪我したのはドアのせいだけではなく、彼がとっさに私を抱え込んで庇ってくれたからである。つまり彼の余分な怪我も私のせい。余分な怪我分は、自分が防護服脱いでいたせいだから気にするなと萩原さんには言われたけれど。
まあ、気にするよね。

「ホントにご迷惑お掛けしました。お陰で体調の方はもうばっちりです」
「怪我の方は?」
「それも順調です。むしろおにーさんの方が心配ですよ」
「あっははー心配させてごめんね。ホントに大丈夫だよ。さて今日は何話そうか?」
「この間は私の秘密の友達のお話でしたので、今度は萩原さんのお友達のお話が聞きたいです」
「そうかー。なら、俺の友達の中で一番人間離れした奴の話をしよう」

人間離れ?見た目は美形だが中身はゴリラな俺の同期の話だな。え、濃い、、、。
えっとなー、なにから話すかね、とにこにこ笑う萩原さんを見て、お互い怪我したししこたま怒られたけど、生きててよかった、としみじみ思った。

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