何を恐れる事があろうか。


Title Sponsor,,,愛故
残念ながら閉鎖されていたそうですが、リンクはこのままで。



※注意※シリアスです。
    零式クリア後推薦です。
    まぁほんのりって感じのネタバレですが…





私達は強い

私達は美しい

私達は0組……そして、

私達はマザーの子であり、

私達は一緒だと。




*----*----*----*


誰の血だ?
皇国の兵士か、蒼龍の民か。
はたまた玄武の生き残りか…



私は深緑の森の中で息を潜めながら、頬に散った生暖かい血を手の甲で拭う。

隣では重傷を負ってしまい、思うように動けないナインが息を切らしている。

ナインも心配だが、私は見回りに行ったエイトも心配だった。
エイトも相当な深手を負っていた筈だが。



「比較的軽傷のセブンが、一番酷い傷を負ったナインを見守るのが最適だ」


そう言って森の奥へ消えたエイトの後を追い加勢しようとしたナインは、右足の靭帯が切れてしまっているのか足を引き摺って行こうとしたので…私はナインを手で制した。



「……行かせろ…」



まるで獣だ。
死に瀕しているにも関わらず、その眼光は鋭い。戦いに飢えているとも取れるが、今のナインはそうではない。



「その傷では…足手まといだ」

「…っ……!」

「エイトは足が速いからすぐ帰ってくるさ。…大丈夫だ」



ナインは舌打ちをする。
視線を私から外し、エイトが駆けていった方向をじっと見つめていた。


ナインは自分より小さなエイトを心配している。
…自分が行ければよかったのに、と後悔している。

その気持ちが、痛いほどわかる。
私もナインも、エイトに止められたから。



エイトが私をナインの見張りにしたのは、きっとナインが追いかけてこないようにという訳ではないだろう。

役目を受けた私もナインと共に、ここへ縛り付けておけるからだ。

エイトは…優しすぎる。



頭上の繁った木々の葉の隙間から、夕陽が私達に降り注ぐ。
その色は、何だかとても不安にさせた。


…もうすぐ日が暮れる。
朱雀で私達の帰還を待つ隊長や兄弟たちは、いったいどうしているのだろうか。
彼等の無事も…願いたい。



*----*----*----*



日はとっくに暮れ、僅かな月の光が葉の隙間を縫ってナインや私の髪を輝かせた。

エイトはまだ帰って来ない。



「遅ぇ」



あの会話から、私に背を向けて黙っていたナインが苛立ちを露わにさせる。
私もそう思っていた。エイトはどこまで見回りに行ったのだろうか。



「…確かに遅いな」



私はナインの呟きを返した。
まだ怒っているのか確認したかっただけだったが、ナインは



「セブンも遅ぇなって言うなら、遅ぇんだな」



と言った後、自分の槍を出して弄ぶ。
もう済んだこと、なのかもしれない。



座りながら頭上で槍を回すナインは、私と同じ無力感に苛まれているのか分からない。


ただ風を斬る物悲しい音が、ナインの心を代弁しているようだった。


そのとき、近くの茂みが左右に揺れた。



即座に鞭剣を手にした私は、その茂み上部を狙い薙ぎ払う。

丸かった茂みは上部を平行に裂かれる。
その時、1体の人影を目で捉える。

私の攻撃と同時に、ナインも槍遊びから持ち方を変えて私の前へ飛び出し、相手のカウンターに備えてみせた。



人影が動く。素早い…相手は身軽だ。
月の光が私達の周りだけを照らしている。人影のいる場所は暗闇だ。

ナインが槍を握りしめる。



人影は突然、私達との間合いを詰めてきた。
私は防御の体制を整えた、が。
ナインは槍を突き出して攻撃した。



「おらぁぁああ!!」

「くっ…」



人影が呻き声をあげて飛び退いた。あと少しで月の光に照らされて正体が分かっただろうが、また漆黒の闇に隠れる影。

だが、私は気が付いた。



「ナイン……あれはエイトだ」

「あ?…あいつ攻撃してきたぜ?」

「仕方がない…今のエイトには何も見えず、何も聞こえてはいないのだから」

「…何で分かんだよ、俺は意味わかんねぇぞコラァ!」



ナインはむしゃくしゃするのか、私に怒声を浴びせてくる。
そうだな、ナインに分かるように…か。


私はこう考える。

私やナインは月の光の中にいるのだ、私達から人影…エイトは見えないが、エイトからするとはっきりと捉える事は出来るはず。


そしてナインの怒声。
これを聞いて0組だと気が付かないエイトではない。
だが、人影は飛び退いた。つまり聞こえていないか、私達の敵だ。



「つまりエイトだ」

「意味わかんねぇって!」

「皇国兵はこの場合、近距離を行わずに銃器で狙い撃ってくる筈だ」


私達の武器が遠距離でないことは、形状からして察する事ができるだろうし、魔法も攻撃対象が明確で無ければ空振りに終わる可能性も高い。

私が皇国兵なら、距離を取って撃つ。


この説明には納得してくれたナインだが、ナインはしっかりと質問してくれた。



「蒼龍兵っつーことはねぇのかよ」

「蒼龍兵は、銃器の代わりに槍を投げてくる。ナインも、普通は闇から狙い投げるだろう?」

「お…そーゆー事かコラァ…」




ナインが言い終わると同時に、背後の茂みが動く。
人影がまた間合いを詰めてくるのだろう。

私とナインは再び身構える。



「攻撃はせずに受け止めてくれ」

「んなのわかんねぇって」

「受け止めてくれ」

「………がんばるぜ」



私の押しに、ナインは渋々了解した。



私の観察が正しければ、あの人影がエイトならば…間違いなく敵に遭遇してきた後だ。

目に血が入って霞んでいるのか、鼓膜が破けてしまったのかは知らないが、間違いなく重傷を負っている。

そんなエイトを、これ以上傷付けるわけにはいかない。
ナイン、しっかりと受け止めてくれ。



今度は茂みを斬らず、じっと待つ。
カウンターはナインに任せ、私はキャッチで捕縛することを任務とする。


そして人影が間合いを詰めた。


月光に照らされた影は、赤いマントを纏い、その剛拳をナインに揮った。



「マジでエイトだぜ!」



今まで半信半疑だったのか、槍で受け止めた際に叫ぶナイン。
ナインは確実に受け止めてくれた。
エイトの表情が驚愕を浮かばせ、行動が止まる。

私は見逃さない。



「はぁっ!」



伸びる鞭剣は跳び去るナインだけを逃し、目的のエイトを確実に捕縛する。
少し呻くエイトは、まだ戦意を失ってはいない。



「ナイン!蒸留水があるだろう!」

「おう!これか!」

「頭から掛けてやってくれ!」



ナインは私の指示より早く、常備している蒸留水を頭からエイトにぶっかけた。
目から血を流しているように見えるエイト。額が裂かれているので、その血が入ったのだろう。


目が洗い流されたのか、エイトは眉を顰め、瞬きを繰り返した後「すまなかった…」と一言詫びた。

視覚は取り戻したらしい。
エイトは捕縛されながらも続ける。



「耳がやられた」

「うお、マジかよ!セブンすげぇ!」

「凄いのはエイトだ。触覚と嗅覚と気配だけで戦っていたのだから」



私はナインにそう返答したと同時にキャッチからエイトを解放し、指で地面に「心配無い。エイトこそ大丈夫か」と書いた。

エイトは肩を回しながら微笑み、空いた片手で自分の目を指差しながら言う。



「セブンやナインの口の動きで、何を言っているかは読める。目があれば十分だ…本当に悪かった」


「そんなことは無い。…無事で良かった」



労いの言葉を掛けながら、エイトの身体を確認する。

膝辺りの銃創。
焦げたマント。
火薬の匂い…

間違いなく皇国兵だ。



「エイト、敵は近いのか?」

「ああ、コロッサスやプロメテウス、ヘルダイバー等が蠢いていた。兵力は…数え切れない」

「それ、逃げれんのかコラァ!」

「絶望的だ」



エイトの報告は、私達の帰還が最早不可能に近い事を悟らせた。


MPは無く、チョコボも死に絶え、ポーション一滴さえない。
精鋭任務だったので、リザーブメンバーはいない。

…万事休す、か。



肩を落とした私は、考える事を放棄した。
そうか、こんな所で死ぬのか…そう思った。

けれど、ナインは豪語する。



「俺様がぶっ殺す」






…これだけの情報を聞いて、3人の中で最も深い傷を負ってまで、豪語した。

ナインの目は、戦いに飢えている。
それだけではない…

生きたいと、願っている。



呆気に取られた私は目を見開いた。
ナインは…どうしてそんなに強い?

そして、エイトから笑い声が漏れた。
まさかと思い、エイトを凝視する。

エイトは本当に笑っている。
可笑しそうに、楽しそうに。


エイトは一通り笑った後、一息置いてナインに言い放った。



「特攻は頼んだ…ナイン。俺も…できうる限りサポートはしよう」



エイトが言い切る。
私はいつの間にか、口が空いていた。



「セブン、口が空いてるぞ」

「虫入っぞコラァ!」

「え…あ、ああ………」



慌てて口を噤む。

何だろう、この空気は。
軽い…軽くて、心地いい。
今が戦地でないような感覚。


そんな私にエイトは言った。



「あの日みたいに、隊長が飛空艇を手配してくれるさ」



その笑顔の後、ナインは私を見下すように言ってのけた。「俺様が、お前らを守れねぇ訳ねぇし」




彼等は 信じている

仲間と 自分を

そして

生きて帰る事を 望んでいる。




「……私はいつの間にか、柔軟な思考を忘れていたらしい」



私は笑った。

そうだ、今…私達は生きている。
生きている限り、死の間際であっても、生きているのだ。


生きているから、希望が持てる。
エイトやナインは、当たり前のように希望を持っていた。

私はそれが、ひどく格好良く見えた。



「おいセブン!後ろはそっちに任せたからサボんじゃねぇぞコラァ!」

「ほらセブン。帰ったら…この体験談を皆に聞かせてやらないと拗ねるぞ」


「…そうだな」







私は鞭剣を強く握る。



この2人の背中を護るのは、私だ。
帰るんだ。朱雀へ。


0組へ。マザーのもとへ。




今なら、どんな軍勢にも勝てる気がする。


そう。


…何を恐れる事があろうか。






私はこんなに満ちている。
此処で朽ちようと、朽ち果てれない。




私は帰る!



2人を連れて朱雀へ!








「エイト、ナイン。私の後ろを2人が護ってくれるのなら、私も背中を護ろう」


「だからよ!俺は護るついでに皇国兵皆殺しにしてやるから見とけコラァ!」


「セブンがそんな事言うなんて…貴重だな」







私達は笑った。



近くで皇国兵の合図が聞こえる。



コロッサスが私達に砲を向けた。



私達は襲い掛かった。



ナインは特攻し道をつくる

エイトは補助で、私達をサポートした

私はー……彼等の背後を守った。





必ず、生きて帰ろうな。







何を恐れる事があろうか。
7(私には、仲間がいるから)

企画サイト愛故様のお題をお借りしました。
掲載当時は企画でありましたが、残念なことに今は閉鎖…とのこと。お疲れ様でした。そしてありがとうございました!



すみません、長いことすみません←
捏造加減が尋常じゃないです(笑)

ここまで読んで下さった皆様!
心より感謝いたします!


さて、今回「愛故」という7の企画に参加させていただきました!ありがとうございます!
タイトルに惹かれ、でもギャグは書けなかったので零式初シリアス…(自重しろよ)

楽しく書けたので、宰としてはかなり満足でした!ビバ自己満!←

あのあとは…クラサメ隊長が0組連れて助けにきたら、敵部隊全滅の3人瀕死とかなのかな(なんだそれ)
気力尽きて書けませんでしたすみません!←


タイトル提供して下さった企画「愛故」様には特に感謝しております!
本当にありがとうございました!


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