サーレイ・・・主人公。国で最も多くの竜騎士を輩出する血脈の家の出。現在は兄が竜騎士。士官学校在学中。

グレハム・・・幼馴染 同じ士官学校入学

ロディアン・・・サーレイの兄。竜騎士。

レイモンド・・・ロディアンの親友。竜騎士隊長





大陸中で最も権威ある聖王国。それがサーレイの生を受けた国だった。

聖王国、言葉の通り大陸中で統一された、教えの頂点に立つ国。唯一神を仰ぐ国が、遠い昔に他国に蹂躙され、武力を求めた。
それが竜騎士団のはじまりだ。

サーレイは貴族であり、聖王国で最も多くの竜騎士を輩出してきた家柄だった。
竜騎士は生涯独身で通す決まりだ。そのためサーレイの実家では長女が遠縁から婿を向かえ、血筋を伝えてきた家柄だった。
生まれたときからサーレイは竜騎士となるように言われ、自分でもそうなるのが当然と思って生きてきた。

貞節を神に誓い、竜騎士となる名誉は国で最も尊いものと言われていた。
だから、戸惑いなんてものは、あの日までなかった。



サーレイはエリートコースを絵に描いたようなと言われる、高等士官学校2年生だった。少なくても自分以外の誰もがそう思ってはいただろう。
士官学校に入学した頃は、この国に人生を捧げると言うことにサーレイは何の疑問も感じていなかった。
生まれた時からずっと竜騎士になることしか考えたことは無い。そういう家に生まれ、そういう国に生まれついたからだ。
誰しもがなれるわけではない選ばれたエリート中のエリート、それがサーレイの歩む道だったはずだ。いやエリートという認識ではなく、国のために尽くしたい。そう思いずっと生きてきた。

竜騎士とはまず、この高等士官学校に入学することから始まる。まれに高等士官学校を卒業していない竜騎士も存在するようだが、それは竜にたまたま選ばれたイレギュラーな存在に過ぎない。
この高等士官学校に入学する際に、様々な制約を受ける。勿論誰しもが入学できるわけではない。
血筋、容姿、学力、運動神経、全てにおいて恵まれ、規定をクリアしないと入学すらできないのだ。そして、入学できたからと言って、全てが竜騎士になれるとは限らない。
半分以上は最終学年である3年生になる前に落とされ、また難関を掻い潜って3年までこれたとしても、その先が最も厳しいのだ。


竜とはこの大陸先端に位置する、北方の山脈地帯に住んでいるという、人間ではない別種族だ。巨大で頑丈な肉体と、人間よりも数倍生きると言われる寿命。鱗で覆われた巨体から吐き出す炎。
人では使うことのできない、魔法も自在に操ることができるという。
その彼らの住む場所まで行き、彼らを見つけ、契約をしてもらわなけかればならないのだ。そして契約をし、竜を連れ帰って、初めて竜騎士となれるのである。

人間と竜とは別種族だ。

人間の理屈が通じない、いわば契約していない竜は冷酷そのものだという。
気にいらない存在が自分のテリトリーに入ってくるだけで殺されてもおかしくはない。ただ会うだけで命がけの使命なのだ。
そして人ざらぬ身を国に使えさせることは、並大抵のことではない。

気に入られなければ、人間に比べ長寿の身とはいえ、諾とは言わない。
何が竜の琴線に触れるのか、分からないのだ。
だから聖王国では、少しでも竜に尊敬の意を表していると言うかのように、美しく見目のよい青年たちを送る。それが正しいかは別としてだ。
そして選ばれたエリートの中でほんの少しだけ、竜に気に入られて、竜を連れたって戻ってくることができるのだ。
生きて卒業できるのは、ほんの数名にしか過ぎない。それでもその国を挙げての崇高な任務に、毎年数多くの若者が命を落として行っている。

拒否権は存在しないのだ。

サーレイは今の2年生では最も有望視されている生徒だった。
この『最も』は、成績などは二の次だった。

勿論成績が優秀なことは重要だったが、そんなことが竜と契約できることになにか重要な要件になるかと言えば、答えは『分からない』だ。
竜が騎士の何を気に入るのかは、竜自身にも実は分からないのだと言う。
分からないが、竜が気に入る血脈と言うのは確かに存在するようで、サーレイの家系は確率から言うと、他の貴族たちに比べ、竜騎士になれる確率は数倍高いのだ。何故かは解明されていない。ただ好まれる血筋の家系だろうと言われている。

勿論サーレイは成績は文句なく優秀であったし、その容姿は親族の中でも最も美しかったと評判だった兄にも劣らない。
青みがかった銀髪は少し長めに切りそろえられ、緑の目をふちどっていた。
美しいと言うよりは、男らしく整っていて冷たい感じのする印象を与える。水の女神のようだったと評された兄と比べ、氷の男神のようだと称えられていた。
男らしく鍛えられた肉体は、180センチをゆうに超える長身だ。
サーレイに持っていないものは何も無かった。一見そのように見えた。
何故なら、人が羨む全てを兼ね備え、そして最も竜に愛される血脈に生まれた男。それがサーレイだったからだ。

ただ、サーレイ自身は自分の未来に絶望していたが。


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