「だから、僕は王子として育った中では、一番両親の愛に恵まれていたと思っています。他のお兄様方は母親と引き離されて顔も知らないまま育っていましたから。でも……やっぱり5歳まではお父様たちとずっと一緒にいた記憶があったからでしょうか……寂しいと思うときもたくさんありました。だから、ギルバードは僕たちが育てたいんです。王位継承者として規律の厳しい育て方をしたくはありません。分かってくださいますか?」

「なら、エミリオとギルが一緒にリエラに来ればいいよ! ちゃんと両親の元で育てられるようにするから!」

「エミリオはこの家の跡取りですし、リエラのような風習が違う国で苦労させたくはありません」

なんか……言っていることがマトモ過ぎる。

「アーク……もう良いだろう? ここにいたほうが、ギルフォードもギルバードも幸せになれるんだ。一緒にいられないのは寂しいが、もう我がままを言ってはいけない。ギルフォード、リエラのことは気にしなくて良い。ここで幸せになりなさい」

「はい、お父様」

ウィルは潔すぎるな。基本的にギルフォードはウィルの性格を進化系(変態方面)にしたものかもしれない。だから普段はまともなのかもしれない。

「……ギルバードをウィルに抱っこさせてあげても良い?」

「ええ、勿論です」

ギルフォードは一度私のほうを見て、良いかな?とでも言うように見た。勿論私もそれくらい拒否はしない。
先ほどリエラ国王がギルバードを抱いた際は、ウィルは抱っこしていなかったからな。まあ、護衛の騎士がそんなことできるはずもないから仕方がないが。

「可愛いね……ギルが生まれたときみたい」

「ああ……ギルみたいに素直で賢くて良い子に育ってくれたら」

……賢いのは認めるが……素直なのも……ある意味欲望に素直だが。良い子……? 騙されて、家出(婿)されたというのに、今でも良い子だと思っているのか?
まあ、孫との団欒を邪魔してはいけないので黙っているが。

「……ねえ、エミリオ。時々ギルバードに会いに来ても良い?」

「構いませんよ」

まあ、それくらいなら。

「可愛がってね」

「勿論です」

いくら変態に無理矢理孕まされたとはいえ、虐めるわけはないだろう。

「ギルのことも大事にしてね? 婿にあげるんだから」

「は……」

つい『はい』と反射的に答えようとして黙ってしまった。
ギルフォードを大事に?
……部屋の片隅に置いてやるつもりくらいで、婿に引き取ったというのに、大事にしろと?

別に虐待はしていないが、更々大事にするつもりはなかった。
せめてウィルのような男だったら大事にしてやろうと思わないでもないが、何と言っても変態だからな……

が、彼らにしてみれば、命がけで出奔して生んだ大事な息子だろう。
その彼らの目の前で、大事にしたくはありません。だって変態ですから、とは流石の私も言えない。


「その……(私なりに)大事にしようと思います」

「嬉しいよ! エミリオ! 僕も凄くエミリオを大事にする! 幸せにするからね!」

「そうか……」

「ありがとね……ギルバードが将来リエラの国王になりたいって言ったら、邪魔しないでくれる?」

「……まだ言っているんですか?」

「無理強いはしないよ!……でもさ、将来大きくなったら王位に興味が出てくるかもしれないじゃない? 自発的になりたいって言ってきたら認めてくれる?」

ギルバードはうちの家の跡取りなんだが……この国では大貴族だが、さすがに国王レベルじゃないし、もしかしたら将来国王になりたいと言い出す可能性が0とは限らない。

「もし、本人が分別のある大人になって、それで王位に興味があるというのなら、反対は出来ません。でもリエラのように風紀がなっていない国に行かすことはできないので、一夫一妻制にすることが絶対条件です」

もし本人がどうしてもリエラの国王になりたいと言い出したら、いくら親の私だとて反対するのはエゴだろう。その権利を持っているのに、親の私が邪魔をしてはいけない。だが、できるだけリエラに興味のないように育てよう。

「ありがとうね、エミリオ……ギルもこの国に戻ってくるのは宿命だったのかもね。来る途中で思い出したんだけど、ギルが生まれ育ったところって、エミリオの領地だったんだよね。ギルが大好きで結婚の約束したリオ君覚えている?」

「リオ君? 記憶にありませんね」

「小さかったもんね、覚えてないか。リオ君と結婚するんだってずっと言っていたんだけど、エミリオ。親戚にリオ君って子いないの? 領主の息子さんか親戚の子だったような気がしたんだけど」

「いえ! そんな子はいません!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

私は全力で否定した。
私はリオ君という呼ばれ方で、思い出してしまった。

確か7歳になったばかりの頃だったと思う。父の領地の見回りに連れて行ってもらい、田舎で夏を過ごしたことがあった。
父は領民と仲が良く、よく交流会をしていた。
もうすでに剣を習っていた私に領民の子どもたちに剣を教えるように言い、剣を教わりにきた3歳くらいのとても愛らしく素直で利発な天使のような少年にプロポーズされた覚えがあった。

天使のような少年に僕のお嫁さんになってくださいと言われ、嫌だなどと言えるはずもなく、良いよと答えたのだ。
少年はまだ3歳で上手くエミリオと呼べず、リオ君リオ君と私のことを呼んではとても懐いてくれていた。
私も懐いてくれる少年が弟のようで可愛く、とても可愛がっていた。

夏が終わり王都に戻ることになった時には、その少年は泣いて泣いて、行かないでと私に縋った。
また会えるよと言って宥めたが、絶対に大きくなったら結婚してねと言われ、お嫁さんに迎えに行くからと約束させられた。

それから数年後に領地に行ったが、もう天使のような少年ギルちゃんはいなくなっていた。

3歳の約束が、まさか15年もたって……確かに顔は似ているし面影はあるが、愛らしかった性格は見るまでもなく変態になっている。

いやいや、私もギルフォードもすっかり忘れていたし、変態にいたっては今も覚えていない。

しかし無意識のうちに覚えていて、私に付きまとっていたとかないよな?


「どうでも良いです。リオ君なんて知らない子のことは……エミリオだけいてくれれば良いんですから」

お前、私を目の前にどうでも良いとは。いや、待て、ここで貴様が結婚の約束をしたのは私なんだと言えば『え? 本当? やっぱり運命なんだね! 僕たちは愛しあって、結婚するって決まっていたんだよ!』とか言い出すに決まっている。

このことは私の胸の中にだけしまっておくしかないだろう。

決して運命の相手なんかではない。

本当に覚えていなくて良かった。覚えていたら、18歳の時に再会したギルフォードに『婚約不履行』だと言われて、無理矢理結婚させられていただろうからな。


「ごめんね、エミリオ。両親が突然きて、迷惑をかけて」

やっと帰ってくれたリエラ国王たちに疲れ果てた私は、ギルバードの世話を夫に任せて半分寝ていた。

大事にしろといわれたが、こき使っているように見えないが、本人がやりたいといっているのでやらしている。

なんだろう。いい夫いい父親でも目指して私の気を引こうという魂胆なのだろうかと思っていたが、本人の生い立ちのせいかもしれないと思うと、少しギルフォードが可哀想に思えないこともない。
生い立ちのせいで、王宮に場所を作りきれず次期国王を作るという使命を負担に思って、ここで妻子との居場所を作りたかったのかもしれない。
変態だけといい父親なのは認めてやらないといけないな。

「いや、孫には会いたかっただろう。私も気が回らなかった。映像くらい送って差し上げるべきだっただろう」

「けど良かったの?ギルバードがなりたいんだったら王になるの許すって」

「まあ、私たちの息子だからそんなものに興味はないだろうが……もしどうしてもなりたいんだったら、反対はしない」

これからの教育しだいだな。

「じゃあ……じゃあ、もしギルバードがリエラに行った時に備えて、この家の跡継ぎを作らなくっちゃね!!」

「おい!」

「もう一人作ろう? もう医者も産後解禁しても良いって言っていたよ? 今度はエミリオに良く似たカッコいい子を産んで!」

勿論、私が同意しない限りギルフォードの体質では子どもは出来ない。
だが、子どもを作る行為は問題ないわけで………

「せっかく少し貴様の株が上がったと思ったのに、これで台無しだ!!!!!」

しかしへばり付いてくるギルフォードを離すことは不可能で……やはり変態な夫を大事にするのは無理なようです。


END

あとがき
リエラの王位継承権がどうなっているか&パパの登場が見たいというリクから、何故かこんなに長くなってしまったパパ編でした。
思ったよりもパパ愛されてびっくりで、調子に乗って長くなってしまいましたが。
うちでは非常に珍しい純愛&両思い&攻めが変態ではない トリプル三重苦でしたが、たくさんコメントありがとうございました。ウィルが死ななかったのは、やはり読後みなさんにほっこりしてもらいたいので、殺しませんでした。けど、前国王が死ぬまでは牢屋に閉じ込められて、あえなかった二人でした。一年ぐらい。
ちなみにギルバードがリエラの国王になるかどうかは・・・・子ども編が書けたら、お披露目します。
長い間お付き合いくださりありがとうございましたww



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