「待ってくれ!……なんか一度にいろんなこと言われて頭が混乱している。酔いがさめてからちょっと考えたいんだが。明日よく考えて返事するからっ」

「駄目だよ……明日になったら、僕が勇気がなくなっちゃう。正気になったらウィルとこんなことできない」

僕にはウィルと一緒になる権利なんかない。こんなことウィルのことを考えたらしてはいけない。
僕はたくさん妻を持つ権利はある。だけど夫を持つ権利なんてない。
ウィルとのことがばれたら……とても危険なことをしようとしていることは分かっている。
分かっていても理性ではとめられない。どうしてもウィルと抱き合いたかった。

「お願い……抱いて、ウィル。一生のお願い」

「アーク……」

「好き……」

さっきは寝ているウィルにキスをしたけど、今度は意識のある彼の唇を奪う。一度離して、もう一度ウィルに好きと言って、また口付けた。

「アーク!……嫌だと言われたって、止められないぞ?乱暴にしてしまうかもしれない」

「いいの……ウィルの好きにして?……無茶苦茶にしてくれたって良い。全部ウィルの物だよ」

今夜だけは。今夜だけでウィルへの思いは断ち切るから。

僕の言葉にウィルは上に乗っていた僕と上下入れ替えて、上になった。そしてウィルからキスをしてくれた。
凄く嬉しかった。ウィルが自分から僕にキスをしてくれている。一生そんな日はこないって思っていた。
今日くらい、一生の内で一度くらい、僕の物になってくれても良いよね。

「やばいなっ……こんなことならちゃんと娼館で練習してくれば良かった。俺、下手かも」

「そんなっ…僕、ウィルの初めてを貰えてすごく嬉しいのに!……僕がウィルの初めての男だって一生覚えていてもらえる」

二人目、三人目は覚えていなくても、きっと初めてだけは覚えてくれるはず。

「お前が経験豊富なのに、俺だけ……」

少し悔しそうにそう顔をゆがめるウィルに、初めてが恥ずかしいのか、それとも僕の相手に嫉妬をしてくれているのか。両方だろうか。

「僕も初めて……」

「え?……そんなはずないだろ?」

「僕も抱かれるのはウィルが初めて……」

4人も子どもがいてたぶん人数なんて覚えていないほど、そういうことはしてきた。
でも抱かれるのはこれが初めてだった。

「だから、僕も緊張している。ほら、心臓がドキドキ言って、止まらない。大好きな人とするのは初めてだから」

ウィルの手をとって心臓の上に導く。そしてそのままウィルの手にキスをする。

「アーク……俺もずっとアークを愛していた。他の人間で誤魔化そうとしてきて、でも駄目だった。15歳の俺に勇気があれば、お前に辛い思いをさせなかったのにっ!」

「今、僕を抱いてくれているから、良いんだ……ねえ、ウィル僕とっても今幸せだよ?」

確かにウィルの手は巧妙とは言えなかったかもしれない。無骨な手が乱暴に僕の肌を這い回って、痛みを感じたこともあった。
でもそんなことはどうでも良かった。ウィルが僕に触れてくれているだけで、一生分の運を使い果たしたんだって思った。
ウィルがくれる痛みなら喜んで受け取った。
余裕がないのはウィルが初めてだから。ウィルの初めての相手は僕だから。僕に欲情してくれているから。僕を愛してくれているから。

全部ウィルからくれるものは僕を幸せにしてくれた。

「ごめん。痛くないか?……俺、我慢できなくって。慣らすの足らなかったかも」

痛いほどウィルを受け入れている部分が彼を締め付けているのか分かる。ウィルも痛みを感じているかもしれない。

「僕は大丈夫っ…でも、ウィル痛いよね。もうちょっとこのままでいてくれたら慣れるかも……」

僕はウィルがくれるなら痛みだって平気だった。
ウィルを受け入れていると思うだけで、下腹部が痛いほど張り詰めている。
だから痛いのは平気だったけど、初めて男を受け入れるのには気持ちは高ぶっても、身体までは自由にできない。もっとウィルを楽に受け入れてあげれたら、ウィルも楽なんだろうに。

「良いよ。来て……もう大丈夫だから。ウィルで一杯にして?」

ウィルに揺さぶられて、ウィルに愛されてこのまま死んでしまいたかった。
だって、帰ったら僕には義務がある。王子だってことは、ウィルに抱かれたって変えられない。
ウィルの腕の中で死ねたら良いのに。

ウィルの若い情熱に愛されて、身体は疲れきっていたけど、どうしても眠りたくなかった。
ウィルをずっと見ていたい。ウィルに触れられていたかった。

「……アーク、ごめんな」

「どうして謝るの?……僕が抱いてって頼んだのに」

「俺、考えなしだった。俺どうしてだか分かんないけど、何時も結婚の許可がでないんだ。お前とのことを軽く考えたくないんだけど、こんなことしておいて結婚できるかどうか分からない。それに俺は長男だし、お前も」

「……ウィル、そんなこと考えなくたって良い」

ウィルが僕とのことを真剣に考えてくれるのは、僕のことを好きだから。だよね?

けど、どうやったってそんなことは無理だ。

「だけど!」

「僕がウィルのことを愛していて、ウィルが僕のことを好きでいてくれて……それで充分なんだ」

高望みなんかしていない。僕は一夜のことだって割り切れる。
今夜だけでもウィルは僕の物になってくれた。

だからウィルはウィルで幸せになって欲しい。

「ね?僕を抱きしめて眠ってくれない?……ウィルに抱かれて眠りたいんだ」



*パパは純愛派。



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