「はは……嘘だろ?」

妊娠って、妊娠って。胃痛ではなくつわりだと宣言されて、部隊から除隊された。妊夫を部隊においておくわけには行かないからだ。
こうなっては実家に戻るわけには行かない。結婚もしていない息子が妊娠して戻って来たなんて知ったら父親に殺されるだろう。冗談ではなく、間違いなく殺される。
この国では未婚で身篭ったことが公になれば神殿に連れられていき処刑されるのだ。俺の場合はかろうじて貴族なので見逃されたが、それは死刑にならなかったのではなく、貴族は内々にそんな不祥事を起こした者を処罰するためだ。貴族の見栄というやつだ。だから俺は実家に戻ったら死刑だし、戻らなくてもどこにも居場所がない。
こんな俺には誰も家を貸してくれないだろうし、物も売ってくれない。死んだも同然の扱いしかしてくれないのだ。
それほど重い罪なのだ。

「俺が何したっていうんだ」

ただ酔ってやらかして隊長のプロポーズを断っただけだろ?
なのにもう寝る場所もないし、食べるものもない。子どもだってどこで産んだら良いんだ?いや、そんなことよりもこのままじゃ、餓死してしまうだろう。

「うう……」

本気で泣けてきた。お先真っ暗だ。誰も助けてくれる人はいないけど、ひょっとしたら副隊長なら助けてくれるかもしれない。唯一優しい声をかけてくれた人だったから。
だから俺は誰にも見られないように副隊長の部屋に助けを求めに行った。

「副隊長」

そっと扉を叩こうとした瞬間、後ろから怒鳴り声がかかり、驚いて振り向くと隊長が立っていた。

「お前は、やっと私の元に助けを求めに来たと思ったら、何故私の部屋を通り越して副隊長のところに行くのだ!?」

「た、隊長っ!……」

「ここで私のところに何故来ない!?私以外に何故頼るんだ!?」

「そ、それは」

隊長のことが好きではなく、隊長の子どもなんて産みたくないからです。しかし、相変わらず怖くて俺は言えなかった。
色々隊長には言いたいことがある。こんな理不尽な扱いを受けて文句がないはずもない。
だが隊長のマッチョで威圧的な長身が前にあるだけで何も言えなくなるのだ。




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