「マリウスに裁ききれないほどの縁談が着ている」

「流石私とメリアージュ様の子です」

「断われよ、そんなもの。マリウスは俺と結婚するって決まっているんだし」

「そうだな。マリウスはロベルトともうじき結婚だからな。早くロベルトが18になれば結婚させられるのに。兄弟だからいくら弟と結婚させると言っても、断る名目だと思われてなかなか信じてもらえないのだよ」

「まあ、兄弟結婚合法化されても、さほど兄弟婚が多いわけじゃないから、そう思われても仕方がないだろうな」

俺マリウスは小さな頃から弟のロベルトと結婚する事になっていた。
俺の魔力が低いからだ。当主になれないほどじゃないけれど、転移魔法も使えない俺では相応しくない。本来当主の役目とは領地の管理と一族の統率だ。だから領地の端々まで目を光らせて、何かあれば瞬時に転移魔法で現地に向って対処しなければならない。
俺ではその役目はできない。できない場合は、一族の転移魔法が使える者に代理に頼むか、または婿養子を取る。
俺の場合は弟のロベルトが魔力が高く、弟に協力を頼むか、婿を取るか、または弟に当主の座を渡すことの3つの選択肢があった。これは俺の魔力が中途半端なため、当主から外すほどでもないし3つの選択肢があればどれでも良いというレベルなのが原因だ。
けれど普通なら弟に相応しい魔力の持ち主があれば、弟に譲り渡したほうが簡単だ。

俺の家族は俺に苦労をさせたくないので、ロベルトに当主を譲ると言われていた。それに関しては異論は無かった。ロベルトのほうが相応しいし、それによって両親や弟が俺を蔑ろにするわけでもなく、凄く可愛がって育ててくれた。
当主としてはそれほど相応しくない魔力だけど、嫁に出すのだったら魔力が高いと思われて、こんな俺だけど嫁に欲しいと言う話が結構多いらしい。とてもありがたいと思う。

けれどこれも子どもの頃からロベルトが俺と結婚するから外に嫁には出さないと言い、両親もそれが良いのではないかと弟ながらロベルトは俺の婚約者だった。子どもの頃はこの家を出て行かなくて良いんだと、大好きな弟と結婚できると凄く嬉しかった。ずっとここにいれて、大好きな家族とずっと一緒にいることができる。何の不満もなかった。

「ロベルトにもたくさん申し込みが着ているよな……」

「そんなもの今すぐゴミ箱に捨ててくれ」

「当たり前だろう。マリウスっていう婚約者がいるのにしつこいな」

「マリウス日取りは何時が良い? 新居も決めないと」

両親は本当に俺なんかで良いんだろうか。もっとロベルトに相応しい嫁を探そうとは思わないんだろうか。でもそうだよな。実子だから俺がどんなに不出来な子でも可愛いんだろう。だから当主の座を奪ってしまったから代わりに妻の言う座を用意してくれたんだ。
ロベルトだってそうだ。本当だったらもっと綺麗で頭が良くて魔力も高い子をお嫁に貰えば良いのに、俺が子どもの頃ずっとお父さまやお母さまロベルトと一緒にいたい、この家を出たくないって泣いていたから、お嫁に貰ってくれるって言ったんだ。
俺の事を可哀想な兄って思っているんだろう。一族の次期当主として俺に対して責任があるんだときっと思っているんだ。

ロベルトは好きでもない兄を妻にして、抱かないといけないなんて。
誰だって兄弟と結婚したいなんて思うわけないのに。

俺は結婚式の話が終わると、部屋のゴミ箱に捨てられた見合い映像を取り出すと、自室に持ち帰った。


「お父さま、お母さま……ロベルトとの婚約は破棄して欲しいんです」

「突然何を言い出すんだ? マリウス。何が不満なんだ?」

「お前はロベルトと結婚できると喜んでいただろう?」

そう、俺は嬉しかった。昔から弟が、ロベルトが大好きで、当主の座に何の未練も無かった。当主では無くロベルトと結婚できると言われたとき、たまらなく嬉しかった。だって俺はロベルトが生まれた時から恋をしていた。弟だからいずれ俺以外の男と結婚するんだろうって子ども心に知ったとき、涙が止まらなかった。だけどロベルトは俺と結婚してくれるって言った。その時から凄く幸せだった。
小学生の頃から周りの嫡男は皆、勉強に魔法に領主になる責務にとがらん締めだったけど、同じ長男でも俺は弟と結婚して弟家を継ぐんだと言うと、楽で良いなと笑われた。周りは弟に負けてしかも結婚するなんておかしいと思ったんだろう。いくら兄弟結婚が許されていても、それほど兄弟同士で結婚する人はいない。
周りから見たら俺は負け犬で、ロベルトはそんな負け犬の俺がかわいそうで結婚する事で責任を取る弟としか見えないだろう。

「……俺、ロベルトを弟以上には見えません」

嘘だ。それはロベルトのほうだ。ロベルトが俺を兄以上に見てはくれない。

「この方と結婚します」

ゴミ箱に入っていた見合い写真の一番目の人を差し出した。ロベルトじゃないんだったら誰と結婚しても同じなので誰でも良かった。
誰でも良いから結婚してこの家を出て、ロベルトに自由に結婚できる権利をあげたい。

「馬鹿な! こんな粗チンと結婚させれるか! マリウス!こいつはな、短小で有名な男だぞ!!!! お前にはなお父さまよりも小さな男に嫁がせるつもりは無い!!!!」

「メ、メリアージュ様。そんな基準で選ぶ物では」

「煩い! お前は黙っていろ!!! マリウス、お前を嫁に出すとしたら最高の男じゃないと駄目だ。その点、ロベルトは顔とあそこはロアルドに似たので合格だし、お前を愛して大事にしてくれる最高の男だ。ロベルトと結婚しろ」

「じゃあ、クライスと結婚する!」

クライスは従兄弟で昔から仲が良かった。クライスは婚約者もいないし、俺にもしロベルトと結婚するのが辛いのなら代わりに結婚をしても良いとまで言ってくれていた。
優しくて頼りになって甘えさせてくれる従兄弟だった。俺はロベルトのことを弟じゃなくて男として見ている分、クライスが実の弟のように感じられた。

「クライスか……悪い選択肢じゃないが、お前はロベルトを愛しているはずだろう? 俺たちもマリウスが一番愛する男と結婚して欲しいから婚約を許可したんだ。まあ、お前にずっとこの家にいて欲しいというのもあったが、マリウスが一番幸せになれる方法を俺たちなりに考えたつもりだったのだが?」

お父さまも隣でうんうんと頷いていた。

お母さまの言う事は正しい。俺が一番幸せになれるのはロベルトと一緒にいられるときだ。でもそれはロベルトの幸せじゃないんだ。

「どうしてもロベルトと結婚したくないっていうんだったら強制はしない。だが婚約破棄はロベルトが受け入れたらだ。お前から結婚しないと言え。ロベルトが納得したら俺たちはもう反対はしない。二人で話し合って決めるんだ」

「マリウス、私たちはマリウスの幸せを一番に願っているんだ。例えロベルト以外と結婚しても何時までも私たちの息子だ。勿論ここにいてくれるのが一番嬉しいがね」

お父さま、お母さま、俺みたいな息子に何でそんなに優しいんですか。
出て行かないといけないのに、行きたくなくなってしまう。

クライスにロベルトと婚約破棄をするつもりなので、俺と結婚してくれるかと再度訊ねた。昔嫁に来ても良いといわれたのは大分昔だったのでもし知らない間に恋人が出来ていたら申し訳ないと思ってだ。
そうしたら、俺は良いけど、少し厄介な男に絡まれているので当分結婚はできないけれど、それでも良いんだったらと言われた。別に構わない。ロベルトと婚約破棄をするためにクライスの名前を出したいだけだからだ。

でもあんなに強いクライスが厄介な男って言うのって誰だろう?

「マリウス? 話って何なんだ?」

ロベルトは帰宅したばかりのようで、風呂からあがったばかりだったみたいだ。腰にタオルを巻いて、髪を乾かしていた。最近は同じ屋根の下でも婚約者通しということで、同じ部屋に行く事もなかった。未婚の婚約者どおりで二人きりで部屋に閉じこもっているのははしたないと思われるからだ。だからロベルトの裸を見たのは凄く久しぶりでドキっとしてしまった。
どうしてこんなに格好良いんだろうか。お父さまと似た顔つきと身体だけど、もっと精悍に見えるし、凄くセクシーだ。まだ17歳なのにこんな年齢からこんな色気があったら、誰でもロベルトの妻になりたいと恋焦がれるに違いない。

「お父さまとお母さまには話したんだけど……婚約を破棄して欲しい」

「……どういう意味だ?」

「クライスと結婚しようと思うんだ。ほら、やっぱり兄弟で結婚はおかしいと思うし」

「………おかしい? 合法だけど?」

「でもっ……お互いに恋愛感情はないし」

「……じゃあ、クライスにはあるのか? クライスと結婚してクライスに抱かれたいのか?」

クライスはこの国で一番美しいし、クライスに抱かれるとしても嫌悪感はないと思う。あんな綺麗なクライスなら嫌なはずは無い。けれど、やはり俺が抱かれたいのはロベルトだけだ。

「大丈夫」

「大丈夫なのか? 抱かれたいじゃなくって。なら俺は? 俺がマリウス以外の男と結婚して抱いても良いんだな」

ロベルトが綺麗で優しい妻と結婚する。それが俺の希望だ。ロベルトが好きになった人を抱いて欲しい。そう思ってのこの婚約破棄だ。

「あのな、何で泣くんだったら婚約破棄をして欲しいなんて言うんだ?」

「泣いてなんかっ」

「泣いているだろう? お互い恋愛感情はないって言うけど、マリウスは俺のことが好きだろう?」

「………あ、あの…見えてる」

ロベルトが俺が何時の間にか流していた涙をぬぐうために俺の座っていたソファに乗り上げてくると、その拍子にロベルトの腰に巻いていたタオルが外れてしまった。

「別に構わない。妻になる人に見せて何が悪いんだ? マリウス、俺の裸を見てこんなに赤くなって鼓動が早い。これが俺の事を好きじゃないなんて言っても嘘だって丸分かりだぞ?」

「そ、それはっ……」

「それに、俺もマリウスを愛している」

「そんなの嘘だ!」

「そうじゃなきゃ、何で兄と結婚するんだ?」

「……だってっ、俺がこの家を出て行きたくないって子どもの頃に言ったから!……お母さまたちとずっと一緒にいたいってっだから、ロベルトは同情をしてっ」

「マリウスが俺ともいたいって言ってくれたからだろう? 俺もずっと一緒に居たかった。愛しているから。そうじゃないなら兄となんて結婚しない。あの頃からマリウスのことをお兄ちゃんって呼ばなくなっただろう? マリウスと結婚して夫になるんだからお兄ちゃんなんて呼んでいられるかって思ったし、兄じゃなくて恋人だと思っていたからだ」

「そんなの嘘だっ!」

きっと俺は都合の良い夢を見ているか耳が嘘の情報を仕入れているに違いない。ロベルトが俺なんかのことを愛してくれているなんて。

「言葉は嘘をつけたとしても身体は嘘をつけない……ほら、マリウスを思うだけでこんなだ。握ってくれ」

ロベルトに言われるがまま、何か分からないまま握らされると、それは凄く熱くなっていて太かった。

「あ、あのっ……こ、これっ」

「マリウスを思うだけで、こんなになるんだ。愛していなければ無理だろう?」

「………でもっ」

「ああ、もうグダグダ言うな。今からその身体に分からせてやるから、身体で覚えこむんだ……俺の愛を」

それから俺は何度もロベルトの熱くて大きな物に貫かれて、何度も体内に熱い液体を注がれた。
凄く痛くて、でも気持ちが良くて、気を失ってもロベルトは俺を抱き続けてくれて、目が覚めてもロベルトが俺の中にいてくれて凄く嬉しかったんだ。

俺みたいな出来損ないにお嫁になんて本当に良いの?と泣いて縋っても、ロベルトは良いって言ってくれた。
兄なんて妻にして後悔するかもしれないのに、もっと綺麗な子をお嫁さんにしたほうが良いのにと言っても、マリウスよりも美人はいないって抱きしめてくれた。
クライスとの結婚なんてもっての外だし、他の男とも絶対に結婚をさせないと言ってくれた。

同情だったとしても抱いてくれて幸せを感じたし、少しでも欲望を感じていなかったら兄なんて抱けないだろうと言われると、そうなのかと思ってしまう。たぶんそう思いたかったんだと思う。

俺がこの家を出て行くって言ったから、クライスのことを好きじゃないのを分かっていたから、たぶん俺を宥めるためにロベルトは俺を抱いてくれたんだと思う。俺は馬鹿だから、いくら口で違うって言ってもロベルトのことが好きなのを隠しきれていなかったんだと思う。だから両親もロベルトも俺の幸せのために、婚約破棄をさせようとしないのだ。

俺は嘘が下手で、ロベルトへの愛も隠しきれない馬鹿なんだ。

「マリウス、もうこれで他の男に嫁に行きたいだなんて言えないだろう? 処女じゃないのに、この家から嫁に出したら恥になるから、俺以外には嫁にいけないぞ?」

そのために抱いてくれたって分かっている。

俺がこの家にいて良い理由を何時もロベルトは作ってくれる。

そのために、兄なんかを抱いて。俺の事を嫌いじゃないだろうけど、それだけのために勃起させれるのは凄いと思う。

「こんなに俺のをたくさん入れておいたら、すぐにでも妊娠するかもしれないな? 明日にも籍を入れないといけないだろ?」

俺は嫁にいけなくなっても良い。ロベルトは幸せな結婚をして、俺はずっとその幸せを独身のまま見ていたって良い。むしろロベルト以外に男にはできれば抱かれたくないから、誰とも結婚したくなかった。

でもロベルトに一度でも抱かれたら……もう一人でいられる自信が無い。
ロベルトを離したくなくなってしまう。

「ごめん、ごめんねロベルト。兄のくせに……お兄ちゃんの癖に弟を好きになっちゃって……」

「ったく、これだけ身体で愛しても、言葉でも愛しているって言っても何で信じてもらえないんだ? マリウス、愛しているよ。子どもの頃からそう言っていたのに、何万回言っても信じてもらえないのは何でだろうな」

このままロベルトのお嫁さんになるなんて駄目なのに。抱かれたって、そんなことで責任を取ってもらうわけにはいかないのに。

「マリウス、上になってくれ。俺に無理矢理抱かれたって言い訳にしないで、自分からも欲しがったって、自覚をするんだ」

なのに俺はロベルトに言われるがまま、ロベルトを下にして、貪欲に受け入れて自分から何度も動いて、その精を受け止めた。
いけないことをしているのに、こんなに気持ちが良いから止められないんだ。

「愛している、マリウスは?」

「……ごめんね。愛して」


*******
「って……予知夢か? それとも未来視なのか?」

最近、自分の母親の生まれを知ったせいで、持っているはずないと思っていた独自魔法が使えるようになった。
無自覚で来世を見たのか……

「何で、来世でもあんなにネガティブなんだ? おかしいな……家族みんなに愛されているのに、どうして生まれ変わっても性格変わらないんだ?」

このマリウスのネガティブさは、あの両親のせいのはずだと思っていたのに、実は素でネガティブだったのか?
胸の中で寝ているマリウスを見てそんな事を思って。

「この性格はこれはこれで可愛いけど……来世ではもう少し自信を持って欲しかったのに、俺は来世でも愛を疑われ続けるのか?」

今は自業自得だと思っているけど、来世でも両思いなのに片思いという訳の分からない現象が起こるのだろうか。

「まあ、可愛いから仕方がないのか? できれば普通の恋人になりたかったけど」

来世でも不審人物で両思いになれそうもない人(ユーリ)が出てきていたので彼よりは余程上等な人生なんだろうなと、自分を慰めた。

「それにしても……来世でもエッチな身体だったな、マリウス」



END
生まれ変わってもネガティブでした!



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