さてリオンの心の支えである隊長一家は、リオンとラルフの夫婦の危機など当然知らずにいた。
エルウィンを妊娠させ、リオンよりも余程辛らつな扱いを受けている隊長は、エルウィンが次男サラを身篭った際温泉に行ったので三男の今回も行きたいという願いを当然かなえた。
皆でワイワイ行きたいという願いのもと、参加人数は多い。
エミリオ一家やクライス一家、義理両親たち、それに兄弟である長男エイドリアン一家(夫は隊長の従兄弟)と次男エドガー一家(夫はリオンの従兄弟)と辺境伯家+ローワン一家だ。

ちなみに裁定を任されたローワンは涙目であった。
リオンは年に二回が四年に一回になるなんて、それに勝っても自分に利は何もなく、ラルフには負けても現状維持で勝ったら利があるこの勝負は不公平だと、泣いて懇願した所、リオンが勝てば年に四回にしてくれると言われ、隊長のほうがすごいはずというのに賭けた。

「ラルフさん、お久しぶりです。前回、記憶喪失時にご迷惑をおかけしたようで」

「王妃様、そんなことありません。俺に、フェレシアと仲直りをさせてもらえる切欠になって感謝をしています」

ラルフは感謝をしているのはフェレシアとのことで、リオンと年に二回になったことに感謝をしているわけではない。やらなくて良ければやりたくはなかった、のが正直な感想であり、それまで拒んできたのに年に二回もする羽目になってしまったとリオンのことについては感謝はしていなかった。

「紹介します。こちらが隊長の弟のユーリ様にその妻クライス様、親戚のエミリオ様、それに義両親アンリ様とユアリス様と子どもたちです。あと、兄のエイドリアンとその夫アレクシア様、次兄のエドガーにその夫のシモン様。シモン様は辺境伯家の方なのでご存知でしょうが」

ラルフとエドガーはお茶会をするくらいには顔見知りだった。

「うわっ……クライス様にユアリス様って凄い綺麗な方々ですね。流石美人好きで有名な家系だけありますね」

そう、公爵家は辺境伯家の反対に美人系イケメンが大好きな家系だ。
しかしそのせっかくの美貌も、夫たちがそれほど積極的に社交界に連れ出さないため(この国では普通)他国で評判になることはあまりない。
そしてラルフは一族の集まりですら積極的に出ないので、余計知らない。

「ラルフ! 妻は、人見知りで公爵家の方々と初めて出会って緊張しているようです」

リオンは慌ててラルフを背中に隠した。元々ラルフはフェレシアのような美しいタイプが好みだ(少なくてもリオンはそう思っている)妻タイプの美人が好きなので、クライスのような美人に見惚れているラルフを今すぐ隠したい衝動に駆られたのだ。
というか、美人がタイプならリオンも綺麗系で美人なのだが、何故かラルフにとってリオンは好みのタイプではない。確かにいくら美人とはいえ、リオンは毛深くあそこもでかく性欲もありすぎるため、ラルフの中でリオンは美人の領域に入っていない。むしろ入れてはいけない領域だと思っている。

「じゃあ、裸の付き合いをすればラルフさんも緊張がおさまりますよね。一緒に温泉に入りましょう(^▽^)」

奥様は一人で入るのが普通だ。もしくは家族風呂で夫にしか肌を見せない。しかしこの王妃にその理屈は通用しない。

「ラルフには専用風呂を予約をっ」

「心配しないで下さい。キャンセルしておきましたから(^▽^)リオンさんたちも夫たちと一緒に汗を流してきて下さい」

あ、ちゃんと湯着を着ますから安心してくださいとラルフは王妃に誘拐され、リオンは呆然と立ちすくんだ。

そのくらい妻を、同じ妻と言う立場とは言え、他人に肌をさらさせる事などありえないのだ。

「リオン、エルウィンは言い出したら聞かないので、耐えてくれ」

「へ、陛下っ!」

勿論隊長も愛しい妻エルウィンがエミリオやクライス、ラルフその他大勢と一緒に風呂に入ることなど許せる事ではなかった。しかし、散々やらかして手前(やらかしていなくても)エルウィンに逆らえるはずもなく、この温泉旅行に来ることになってしまったのだ。

「全く、温泉に一緒に入ったくらいでどうこうなるはずもないのに! ねえ、ラルフさん」

「本当に……」

「まあ、そう言うな。あれが王国貴族の夫というものだ」

「エミリオ分隊長のギルフォード王子は煩く言わないんですか?」

「まああいつはリエラの出だし、微妙にうちの国の夫たちとは常識が違うしな。一緒に風呂に入ったくらいで何も言わん」

言わないわけではないがギルフォードがわがままを言うべき所を弁えているので、言った所でどうせ一緒に温泉に入ることは変えられないので、不興を買うような事を言わないだけである。

「ラルフは普段自由にさせてくれるんですが、俺が別に何もするわけでもなく閉じこもって誰にも会わないので、束縛するタイプだったなんて初めて知りました」

別段リオンは束縛するタイプというほど束縛はしていない。ただ裸を見せたくないだけである。しかしラルフからしてみると、なんて狭い心の持ち主なんだと………リオンで狭い心の持ち主ならユーリはいったい……と言った感じである。

「じゃあ、温泉入りましょうか」

裸と言っても、湯着を着ている。いわゆる温泉の時肌を隠す浴衣の薄いバージョンだ。薄いといっても大事なところは見えない。湯着を着せても嫉妬するのだから、やはり狭い心の持ち主だとラルフはリオンのことをそう感じた。

「今頃ちゃんとローワンさん、判定していてくれるんだろうか」

「え? ラルフさんが温泉に来てくれたのって、ナンバーワンが誰なのか知りたかったからなんですか?」

「はい。余りにもリオンが自分は大きくないと言い張るので」

別に大きくないと言い張ったわけではない。過大評価をされている、陛下のほうが大きいはずと言っただけだが・

「リオンさんがどのくらい大きいか知らないし……う〜ん。確かに辺境伯家の方って大きいイメージはあるけど」

エルウィンは今第一部隊隊長になったイアンが全裸でいるところをよく見ていた。入隊したばかりの頃は、何故あの分隊長は全裸で人形を抱いているのだろうか、とか、毛深いのが転がっているとか思っていたが、それよりも隊長に思われてアタックされているほうが余程ショッキングで頭の痛い出来事だったので、あの異常時のことをそれほどおかしいという記憶は無かった。だが思い出してみると、イアンもかなり大きかったよなと思い出してしまったのだ。

「けれど、自分の夫がナンバーワンかどうかなんて知ったって、悲しくなるだけと言うか……知らないほうが心の平穏があるかもしれないですよ。ねえ、エミリオ分隊長、グレイシア分隊長」

「まあ、そうだな……俺はイアンがナンバーワンだと知りたくはない。それにあいつは三男だから、どう考えてもリオン義兄上のほうがでかいんじゃないか?」

「うちのギルフォードは、うちの国では珍しく僕は大きいんだって主張しているけどな。まあ、私も自分の夫の順位などわざわざ知りたくはないな」

知った所でどうしようもないし、また夫であるギルフォードが拗ねると面倒くさいのでそんな順位などないほうが良い、というのが大半の妻の意見だった。

「良いんです。リオンは嘘つきなので、自分がいかに大きいかを順位で知らしめさせて、それに一番になったら四年に一回にしてもらうので、俺に利がありますから」

「リオンさんが流石に可哀想じゃ………」

エルウィンは自分が鬼嫁なのは知っている。だが隊長は散々墓穴を掘りまくり、エルウィンの怒りに触れるようなことばかりした結果なのである意味当然といえる。隊長の自業自得なのだが、それに比べてリオンは4年に一回にされるようなことは何もしていない。自分の股間をちょっと小さく見積もったくらいである。
ラルフの命を救い、ずっと愛していたのに、その態度はちょっと鬼嫁過ぎるんじゃ、と王国一の鬼嫁のエルウィンでさえ思った。

「ちょ、ちょっと可哀想とか思わないんですか?」

「リオンのことは尊敬していますし(本当か?)命を救ってくれたことに感謝もしています。性欲が絡まなければ優しくしてあげたいと思っています。ただ……何時も発情しているリオンを見ているとどうしても優しくしてあげられないんです」

発情→拒否→余計発情→軽蔑→やらせてくれないので欲情
の悪循環なのである。

「エッチな脱ぎたてのパンツでもあげたらどうですか? エッチしたくないんだったら」

「……気持ち悪いです。そんなことをするリオンは」

「挿入が嫌なのか? じゃあ、素股とか」

「入れなければ良いってもんじゃ有りません」

「手でしてやるとかも駄目なのか?」

「あんなグロテスクで巨大な物に触るべきじゃないと思います」

パンツすら駄目なんだ…これはエルウィンよりも厄介な嫁を辺境伯は貰ったんだな……と、そこにいた皆は思った。

ちなみに、妻に散々ディスられているリオンと言えば……

「リオン、何故そんな湯着など着るのだ?」

公爵家の面々はそれはもう堂々と股間を晒し、まっぱで温泉に入っていく。流石王国を支配する一流貴族という堂々振りだ。

一方、辺境伯家の面々は妻達が着る湯着を着て、入っていこうとする。

「わが辺境伯家は、普段から肌を曝さないように生きておりますので」

曝さないんだったら、判定しようがないでしょう!!!!!(BYローワン)

「何を言う。温泉は全裸と決まっておる。そんな無粋なものを脱いで、堂々と股間のものを晒し入って来い」

と、国王に命令されたら全裸で入らないわけには行かない辺境伯家の面々であった。
リオンとしては自分の股間は晒さないで、ローワンに隊長が一番でしたといわせたかったのだが。

「お兄ちゃん! 何でお兄ちゃんが全裸になろうとしているの!!??? 駄目だよ! お兄ちゃんは嫁入り前なんだから、本当は妻風呂に入らないと駄目なくらいなんだから、ここにどうしても入るって言うんだったら湯着を三枚くらい着込まないと!」

ローワンは別に自分の股間をさらけ出すのに羞恥心は無い。親戚ばかりだし、確かに他の親戚に比べて明らかに小さいが……この一族ではでかいほうがコンプレックスなので、小さい自分の股間を恥じたりはしない。



「おお、そなたは嫁入り前なのか。では湯着を着ないといかんな」

「はい、陛下! 兄は、僕と結婚前で…他の男に裸を見せちゃいけないってお願いしているんですが」

「おお、弟のところに嫁入り前なのか。それならやはり厳重に着込まないといけないな」

厳重に締まっておかないといけないのは、貴方の股間です!陛下!とても素晴らしい物をぶらぶらと……

「いえ、弟と結婚なんてっ! 弟が勝手に言っているだけです!」

「気にしなくても良い。わが一族でも兄弟で結婚している夫婦もいる。何かの縁だ。許可状は何時でも出してやろう。いや、兄弟でも貴族は結婚できるように法律を改正しようか」

近親婚について真面目な人は物凄い禁忌と思うのが普通である。法律でも許可をされていない。
だが、愛に盲目な人からしてみれば兄弟の何が悪いの? 法律? 陛下に許可状を貰えば問題ないよね?くらいにしか思っていない。実際、魔力の関係上、遺伝子上の問題は上位貴族では起こらないので問題ないと言えば問題ない。

「ありがとうございます! 陛下! ぜひ、兄弟でも結婚できるように法を改正すべきだと思います!!!!」

実は過去の花嫁の血を引いて、似ていない兄弟は山ほどいる。そして好みバッチグーの兄や弟を見ると、ハアハアする兄や弟は想像する以上に多かったりするのだ。

そして兄にハアハアする弟と一緒に股間を晒しながら入っている様を、ローワンは呆然と見上げた。
弟の股間って………
あれと結婚することになるの?




- 271 -
  back  






×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -