「クライス疲れたのか?」
「……おかえり」
「大変みたいだな、第一部隊は。大丈夫か?」
精神的に疲労がたまりすぎている。肉体的には監視なのでそれほどではない。
「……隊長のことが好きだった黒歴史を忘れたい」
ついそう言ってしまった。するとユーリは華麗に微笑んだ。
「俺が忘れさせてやるよ……ううん、忘れさせたい」
そう言ってユーリは俺に覆いかぶさってきた。
「俺じゃ駄目?やっぱり嫌い?」
ユーリは俺の目をじっと見てくる。魔力が戻った今、ユーリの暗示にはかからないはずだ。だが目力が強いユーリの目を見ていると、操られそうになるような気がして思わず目を逸らした。
ユーリは……パンツは被らない。パンツの臭いも嗅がないはずだ。少なくてもそんなシーンに出くわしたこと無い。
「お前は……」
パンツ被らないか?と聞こうとして、隊長に毒されていたような気がして止めた。それでもユーリは俺が何を言いたいか分かったようで、くすりと笑うと。
「クライスが目の前にいるのに、兄さんみたいに代用品を求めたりしない。俺が欲しいのはクライスだけだから」
クライスが欲しいと囁かれると、なんとなく抵抗しようとも思わなかった。疲れていたのもあったし、ずっと恋焦がれていた人の正体を知って、もうどうでも良いというのが正直な感想だった。
隊長に比べればユーリのほうがまだマシ……かどうかは怪しいが、ユーリは世間的には常識があるように見える。やることなすこと最低な男だが、優しいし、兄と比較すると色んなところで、まだユーリのほうが良いのかもしれないと思えてしまったのだ。
確かに酷い事を散々されてきた。でも離婚も出来そうもないし、兄よりも悪い人間じゃないかもしれない。少なくても変態じゃない。ならユーリで妥協して上手くやっていくしかないのかもしれないと、思い始めていた。もう操をたてたいと思う人もいないし、と今日の隊長を思い出しながら、ユーリとキスをしていた。
少なくても逃亡計画を立てるよりも、こう思うのは建設的なことじゃないだろうか。
「クライス……嬉しいよ。初めて嫌がらないで俺を受け入れてくれているね?」
YESとは言わなかったが、抵抗も罵倒もせずにユーリの雄を従順に受け入れていた。久しぶりだからだろうか、ユーリが興奮しているのか以前に受けいれていた時よりも苦しく感じる。
「ユーリっ…もっとゆっくりっ」
「ごめんっ、ずっと我慢していたから、ちょっと抑えるのは無理……ごめん、クライス。もうちょっと我慢してくれ」
とは言っても、ユーリの手つきは無理矢理抱いていた頃よりも優しく、我慢できないほどではない。
「我慢はするけどっ……避妊はしろよ」
避妊というか、ユーリが孕ませようと意識しなければ、男同士は男女間のように自然には妊娠しないんだが、こいつならやりかねないからな。
「大丈夫、クライスを繋ぎとめる子は一人産んで貰ったから、当分はまた俺が独占したいから安心してくれるかな?……でも、もし俺から逃げようとするなら、何度でも孕ますけどね」
「今は逃げ出す気はない……」
「なら良いよ。大丈夫、俺と一緒にいて絶対に後悔させないから……愛しているよクライス」
俺は今日この日、初めてユーリとでも上手くやっていけるかもしれない、やっていこうかなと思った。
ベッド脇に隊長がいるのを目撃するまでは。
「たっ、隊長!何でっ!?」
この城は隊長の実家でもあるから、いてもおかしくはない。しかし、ユーリの寝室にいるのはおかしいだろ?しかも俺は全裸でユーリと抱き合っている最中で。
「なに、エルウィンとの初夜のためにユーリに頼んで観察させてもらっていたんだ。気にせず続けてくれ。私は黙って見ているから、続きを観察したいんだ」
隊長は普段の生真面目さそのままに、観察に没頭したいのだと主張するが、そんなことを許可できるわけが無い。
「ユーリ、き、貴様!!!!」
「兄さん、クライスに気がつかれない様に見てって言ったのに。クライスは恥ずかしがりやだから、あとは未来の花嫁と実践をしてくれないかな?」
「そうか……副隊長すまなかったな」
謝罪は普通にするが、交わされる言葉はまともではない。
「ユーリ………どういうつもりでっ!」
「兄さんを幻滅して欲しくって……幻滅してくれた?」
「幻滅どころか、軽蔑だ!隊長もだけど、あんな男を好きだった自分を軽蔑するわ!」
「兄さんよりも、俺のほうがマシだろ?……俺のことを好きになってきた?」
馬鹿だ……
もうすでに幻滅しきっていたのに、追い討ちをかけたところで好感度0→好感度マイナス100になっただけだ。
「比べられるか!?同じくらい最悪のゲス兄弟だ!!隊長の好感度も下がったけど、隊長と比べてせっかくちょっと上がりかけていたお前の好感度が、今回の隊長と正比例してこれ以上下がりようもないくらい下がっただけだ!」
変態の兄に、ゲスな弟に、どうやって好意を抱けというんだ!!!!
あんな男を好きになったことも、こんな男に好かれたことも……全部全部無かったことにしてしまいたい。
「え……酷い。こんなに頑張ってクライスに好きになってもらおうと努力しているのに」
「死んじまえ!!お前なんか一生好きになるか!!!!!」
俺は、どんなことがあっても絶対にユーリのことを愛さないと、再度心に決めた。
「もう二度とお前とやらないからなっ!」
「無理矢理するから良いよ」
ニコヤカに反省も無く、全く悪気のない笑顔を見て……変態よりもユーリのほうがマシかもしれないと思ったのを反省した。どっちもどっちのアホ兄弟と思ったのも、撤回する。
ユーリのほうが最悪最低の男だ!
この先、例え何度コイツの子どもを孕まされて、暗示をかけられようが、絶対に絶対に、ユーリだけは好きにならない!
それが俺なりのプライドだ。
END
*ユーリ×副隊長お付き合いありがとう御座いましたw
何気に管理人の中ではユーリたん、好きです。欲望の赴くままw
やっていることは似たり寄ったりのゲス兄弟ですが、ユーリたんのほうがスマートでした。
ちょっとでも楽しんでくれたら嬉しいです
何かコメントがあったら喜びますw
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