私たちは隊長の後任で悩んでいた。

隊長はこの度国王になることになり、流石に何時までも兼任はできないからと後任を探す事になった。

本当だったら隊長が後任を指名していけば良いのだが、隊長も色々忙しい(エルとエッチすることを考える事に)ため私とクライスで後任を考える事になったのだが。

「クライスが結婚していなかったら、クライスが隊長に繰り上がりで何の問題もなかったのにな……」

もともとクライスほど優秀な男だったら順調に隊長まで出世していたはずだ。それを何を間違ったかユーリとなど結婚してしまい、妻と言う立場では隊長職は得られない。出産育児でたびたび休む立場の妻は、最高でも副隊長までだ。通常は分隊長クラスどまりなことが多いが、すでにクライスは結婚した時には副隊長だったのでこの限りではない。

「エミリオを押そうにも、お前も奥様……だしな」

副隊長が駄目ならNO,3の私が、と言う事になるが、私もあいにくと妻と言う立場だ。これ以上の出世はもう無理だろう。

同じ部隊の下の階級、通常は副隊長だが、それが駄目でNO、3も駄目ときている。

「普通なら他の部隊から副隊長を引っ張ってくるべきなんだろうが……」

第一は同じ部隊の副隊長が昇格。
それが駄目なら他部隊から副隊長を引っ張ってきて隊長に昇格させる。
または他の部隊の隊長を移動させる。(その部隊は副隊長が昇格)

など、色々方法はあるが。今回それが難しいのは、すべて隊長のせいだった。

「……隊長が色々やらかしすぎましたからね……」

「そうだな、隊長のせいで他の部隊から隊長を連れてくるのは、可哀想だな」

そう、これまで真面目だったはずの隊長が変態に変貌をして久しい。それで何が起こったかと言うと、エルウィンの同室の隊員を虐待したり、パイパン令を出したり、私を巻き込む変な作戦を命令したりと、部隊が機能していない。最近やっと私とクライスが産休から復帰したばかりで、頭の痛いことだが、部下達が皆変態化していて収拾がつかなくなっているのだ。

隊長に感化された……のだろうか。これは隊長の魅惑魔法が原因と思われる。突然だが隊長は生まれながらに魅惑魔法を身につけていて、それを発揮している。真面目だったころは皆に尊敬され、変態になった後は皆にちょっと軽蔑されながらも決して嫌われはしない。むしろ憎めない人だとそのカリスマ性を増しているように思える。何故エルウィンには隊長の魅惑魔法が聞かないのかが不思議だ。
そして一番近くに待機する分隊長達はその刺激?をもろに受け、感化され、大部分が変になってしまったのだ。要するに変態化をしているように思える。

隊長の変態さを秘密にしていたので、できれば他の部隊の人間を入れたくない!


「ユーリを移動してもらって、この部隊を任せて……いや、駄目だ。仕事まで一緒にいたくない」

まあ、ユーリなら隊長の変態さも弟で知っているし、変態な部下たちを任せても大丈夫だろう。しかしクライスが嫌らしい。職場まで仲良く一緒では。俺も嫌だしな。きっとユーリは堂々とクライスにセクハラをするだろう。

「分隊長の中から隊長を選ぶか?……」

分隊長から隊長に一気に就任する事などほとんどない。しかしこの非常事態だ。そうも言っていられないだろう。

「俺とエミリオで補佐すれば、何とかなるだろう。今だって隊長が不在も同然なんだしな」

「……隊長も不在、私もクライスも産休でどうやってこの部隊起動していたんだ?」

不思議だ。

「じゃあ、10人の分隊長から候補を……いや、5人か(−−;」

「分隊長も半分は妻だしな……」

これは俺が悪いとも言える。ほぼ全ての分隊長たちがあの作戦に参加をし、罰として媚薬漬にし、結果あびきょうかんの全裸祭りで、結婚したカップルが多数できてしまったのだ。従って今妻な分隊長を除外すると、5人しか分隊長は残らない。

「ジュリアはどうだ?」

「ジュリアは……この前、私が隊長になったらパイパン令を復活させます! パイパンは素晴らしい……とか、妻にパイパンをさせてます……私が毎夜剃ってあげてます、とか言っていたぞ」

「何故、魔法で剃らない……いや、問題はそこじゃないな。パイパン令なんか復活させたら……パス」

ジュリアはなしになった。まあ私はどっちでも良い。パイパン令があろうがなかろうが、うちの夫もそういうのが好きで、やってやってと強請られているのだ。ただTOPとしては当然アホとしか言いようがないだろう。

「次……エリオットだが」

「エリオットは駄目だろう? あいつは、性欲が強すぎる」

エリオットは妻になった同僚を、あの罰の際、最後の最後までやり続けていた。24時間媚薬の効果はとっくに切れていてもだ。妻も余りの性欲に婚姻届のサインを戸惑ったが、サインをしないともっとやり続けると脅してやりながらサインさせたらしい。非番の日は官舎から怪しい声がずっと聞こえてくるらしいし、僅かな休憩を見計らってはトイレに妻を連れ込んでいるらしい。妻と訓練をすると言っては、24時間耐久レースをする!と言って、部下達を呆れさせているらしい。
こんな男隊長にしたら、仕事もせずにやり続けるだろう。

「リーセットは?」

「こいつは強姦魔だぞ、隊長に相応しくない」

「いや、皆、強姦魔だろう……お前が媚薬飲ませて」

「いいや、リーセットはあの事件の前から結婚している。媚薬飲んでも妻に操を立てて姦通するくらいなら死ぬと、自殺をしようとしたやつだ。それは見事だが……」

「だが?」

「リーセットの妻は以前結婚していたんだ。なのに不自然な形で伴侶が死んで……死別の翌日、リーセットと再婚している……その、無理強いしたとも言われているし。黒い噂があるから駄目だ」

次は……紙をめくる手が憂鬱だ。

「次……イアンか」

「イアンか……」

「うん、まあ、良いんじゃないか?」

「いや、だが裏商売をしているぞ。人形を高価な値段で売っているらしい」

「人形師だし、別に売るのは良いだろ? 高級ビスクドールなんかは高く売れると聞くしな」

「イアンは性具として売っているんだぞ!」

「いや、それは誤解だ。あくまで片思いの可愛い夜のお供程度のものしか市販はしていないらしい。プロトタイプに顔を似せるだけらしい」

犯罪ではない。自分の特技を金に換えているだけで、人間誰しも愛する人の人形くらい欲しいだろう。私は結構寛大な気持ちでいた。クライス、お前は夫は変態じゃないんだからもう少し変態に寛容になってもいいんじゃないのか?

「あいつ、隊長にエルウィン人形パイパンバージョンを献上したらしいぞ。そのせいで、隊長はイアンが次の隊長に良いかもしれんな、とか言っていたんだぞ!」

「賄賂か……じゃあ、駄目か」


って、あと一人しかいないぞ!

「最後は……ロレンスだけど」

「ロレンス、ロレンス……は、なあ……ほんとにこれで最後なのか?! 俺はアイツだけは嫌だぞ!」

「お前の家に居候しているからな……」

「居候が問題じゃない! 花嫁の塔に閉じこもって、何をやっているんだアイツは! こいつのせいで分隊長が一人消えたんだぞ!」

あの事件の後、ひっそりと消えた分隊長がいた。死んだわけじゃないんだけど……今は多分ロレンスの妻として花嫁の塔に住んでいるっぽい……ロレンスは私の又従兄弟だ。隊長たちにとっても又従兄弟で……私の一族なので、ロレンスのことは何とも言えない。どうして花嫁の塔に居候するんだ? としか思えないだけだ。お前だって城くらい持っているだろうと言いたい。

ロレンスは公爵家の一族なので、隊長の後任として押すべき人物だ。しかしクライスが嫌っているしな。あいつは昔から言っていたよな。僕は花嫁の塔に住むのが夢だってな……公爵夫妻も今住んでいる人いないからいいよと気軽に許可を出したのだろう。


「じゃあ、隊長どうするんだ? 適任者いないだろ?」

ジュリア・パイパン伝道師
エリオット・性豪
リーセット・強姦魔?
イアン・変態人形師
ロレンス・花嫁の塔の住人

確かに……ろくなのがいない。

「やっぱり、他の部隊から頼んで、引っ張ってくるしか……」

「いや、駄目だ! 見ろ、このとんでもない部下たちを! 恥ずかしいのと申し訳ないのでとても来てもらえない!」

「じゃあ、やっぱりユーリに来てもらうしか」

「いいや、駄目だ! あいつにこれ以上借りを作りたくない!」

夫なんだから甘えればいいのに、クライスは頑なに拒否をするな。借りを作ると何か要求されるのか? いや、可哀想なので聞かないで置こう。

「こうなったら消去法だ。俺はロレンスは駄目だ」

「私はリーセットは暗黒すぎるから駄目だ」

「エリオットも嫌だ。俺は隊長の性欲過多なのを見てきている。もう性欲が強い男の下にはつきたくない」

「……私は、ジュリアとイアンだったら、まあ、どっちも変態だけど……もうどっちでも一緒のような……」

ただ、性欲を見せ付けるというか、パイパン!って叫んでいる男だから、クライス的には嫌なのだろう。

「ジュリアは駄目だ! 二度とパイパンなどやらん!!!!」

「じゃあ、イアンしかいないぞ?」

「いや、でもアイツも……人形売りをしているし」

「だけど、以前は人形抱いて全裸で歩いていた時もあったけど、結婚してからは人形を捨ててグレイシアの躾も行き届いているようだし。同僚には無料で人形配っているせいで、部下からの人気も一番高いし。ここで手を打たないか?」

「……仕方がない。もうイアンしかいないのか」

「もうイアンで決まりで良いだろう」

イアンは私を怖がっている所があるしな。私的には一番楽な気がしないでもない。


しかし、こうして候補者達を見ると、見事に変なのしかいない。

何でだ? 全部、隊長の責任なのか? 昔は皆もっとまともな人間だったような気がしないでもないけど。けど、イアンなんかは昔からグレイ人形ちゃんを持ち歩いていたしな。

本当だったら、結婚さえしていなければ、いや婿なんか取らなければ私が隊長になれたかもしれないのに。クライスは本来妻になるような魔力の持ち主じゃない。夫ととなり隊長になるような男だった。けど、そのクライスがユーリと結婚しているんだ。私にとってこれは非常にチャンスだったはずなのに。
私の魔力では隊長はほんの少し高望みの地位だったんだが、このような場合なら有り得たのに。

「ギルフォード、貴様のせいで私はもうこれ以上出世できない」

「え? え? ええ??」

「隊長の後任になれたかもしれないのに、貴様を婿に貰ってしまったせいで……はあ」

「ご、ごめんね。エミリオ……エミリオの出世の邪魔しちゃったんだよね。でも、僕どうしてもエミリオのお婿さんになりたかったんだ。今も僕がエミリオの出世の邪魔をするって分かっていても、絶対に諦められなかったと思う」

犬のように纏わりついてきてゴメンネ、ゴメンネと謝るギルフォードは……まあ、私もそんなに怒っているわけではない。ただ、ちょっと変態ばかりの中から選んできたせいで、愚痴って当たりたくなっただけだ。

「それに、それに…僕がエミリオの夫にならなかったら、ギルバードは生まれなかったよ。エミリオ、ギルバードのこと愛してくれているよね?」

「それは当たり前だろう? ギルバードは私の大切な宝物だ」

夫そっくりだが、だから愛さないというわけではない。愛らしい大切な息子だ。

「だから、出世より僕とギルバードが手に入ったって思って、許してくれない?」

「はあ……ただの八つ当たりだ。また変態が上司になると思ってだな。復帰して思ったんだが、変態が多すぎて頭が痛い……」

ただでさえ家にも変態がいるのに。

「じゃあさ、変態の上司はクライス副隊長に任せて、また産休取らない?」

ギルフォードはとても美しい顔をキラキラさせて、ギルバードの弟を作ろうと誘ってくる。ずっと第二子を欲しがっていたしな。私が作ろうとしないので、何時も強請るだけで終わってしまうのだが。

「……そうだな。それも良いかもな」

「え? ほんと? ほんとに、ほんと? エミリオの意思で僕の子を産んでくれるの?」

「ああ…」

「凄く嬉しいよ! エミリオ愛している!」

仕事で変態を見慣れたせいか、普段のギルフォードはとてもまともな人間に見えて、職場から逃げたいあまりに二番目の子どもを作るのもいいかもしれないと思い始めた。

ギルフォードもこんなに欲しがっているし、そろそろ良いか。

クライス、あとのことは頼んだ!

全裸になって飛び乗ってくる夫を見ながら、クライスに全て押し付ける事にした。


END
エミリオたん&ギル第二子ですw

おまけ

「……エミリオまで戦線離脱をされたら……俺は、俺は耐えられないかもしれない」

「ちょっと個性的なのが第一部隊に残っちゃったね」

「ちょっとどころじゃない!!!!」

「なら、俺がクライスのために第一部隊に移動しようか?」

「……いや、遠慮しておく」

「そう? 遠慮しなくて良いのに。でも、クライスが隊長になれていたら素敵だったのにね。俺、クライスが上司で俺が直属の部下で、上司のクライスを押し倒してみたかったな」

「お前が部下なんて、変態ぞろいの分隊長たちだけでもう充分だ!……ああ〜仕事に行きたくないっ!」

「なら、エミリオみたいに子作りして産休にしようか♪ そろそろ3人目出来てもいい頃だし。ジュリスが生まれて一年半経っただろう?」

「うっ……そうだな。それも良いかもしれないな(錯乱状態)」

「え? 本当? クライスが自分から子作りしても良いって?……俺のことを好きになってきた?」

「そういうわけじゃないが……どのみち、3人目約束していたし……どうせ産ませられるんだったらこのタイミングが良い様な……(-_-)」

「うん、そうだよ。思い立ったら吉日だから今すぐ子作りしよう! 3人目はクライスに似てくれるかな? 楽しみだね!」

「いや、今日出来るとは限らないだろう」

「いや、間違いなく出来るよ! だって、初めてクライスが自分から産んでくれるって言ったんだよ! これまで無理矢理孕ましても出来たんだから、クライスが受け入れてくれるんだったら絶対出来るはず……楽しみだな。俺の三番目の息子」





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