小説(両性) | ナノ

▽ ライルの章


帝国に数多い皇子の一人と妹が結婚することになった。


皇帝と公爵家の間で決められた、政略結婚であって、私にはどうでもいい事だった。

妹の嫁ぎ先としてはそれほど悪くない、皇帝に溺愛されている皇子の一人だと聞いていた。

だから初めて会ったのは、妹の結婚式だった。


一目見て、しまったと思った。

どうして結婚する相手が妹であって、私ではないのかと。

私には妻がいた。当然、皇子を妻として迎え入れるわけには行かなかったので、皇子の結婚相手として皇帝に選ばれるわけはないのは、当たり前のことだった。

だが、欲しいと思う気持ちは抑えきれるものではなかった。

結婚の誓いを口にする皇子を見ていると、どうしても妹には渡したくはない。自分のものにしたいという欲望しか芽生えなかった。

閉じ込めてしまえばいい。皇子は身体が弱く、国政にも携わっていない。公爵家の城の一つに幽閉してしまえば、誰にも知られずに皇子を自分だけのものにできる。

妹は、実は恋人がいた。政略結婚で泣く泣く皇子に嫁ぐことになったが、私が隣国で恋人と裕福に暮らせるだけの金を持たせ、2度と戻ってくるなと言えば、喜んで恋人と手を取り合って、国を出て行った。

子どもも産まない妻は、釣り合いが取れる家から嫁いできた、何の愛情も持たない女だ。彼女も邪魔なので、事故死してもらうことになった。

皇子は、どうして妻の兄に幽閉されるのか分からないと言って泣き、私を拒んだ。ただ心が拒んだとて身体は拒む術は皇子には持っていない。

軍人として鍛えた私と、剣一つ持たずに育った皇子に私を拒否することは不可能だった。その身を蹂躙するのはあまりにも容易く、愛おしかった。

妹には頃合を見計らって、病死してもらうことにした。隣国にいるので、すでに彼女はいなかったが、戸籍上いつまでも皇子の妻では、困る。

皇子は正式に私の妻にしたいからだ。そろそろ病死したと公表しようとした頃に、皇子が私の子を身篭った。勿論皇子が私の子を産んでくれるのは嬉しい。だが少しタイミングが悪かった。

今妹が病死したことにすると、皇子の産む子の母親がいなくなってしまう。皇子を私の妻にしたいが、今そうすると生まれてくる時期が合わないことになる。

妹が病死してすぐ、結婚することは体裁上からみても不可能。仕方がない。生まれてくる子は、妹が産んだ皇子の子とするしかないだろう。

皇子が私の子を産むと、すぐ妹は病死したことにした。


これで皇子が独身となったので、皇子を私の妻にと皇帝に願ったが、皇帝は妹と結婚させて、死んだら兄とは、外聞が悪いので許可できないと言う。

皇子の父であり皇帝ではあるが、我が公爵家がなければ、広大な帝国領を維持することなどできないくせに、私がただ一つ願った皇子をまた他の女と結婚させようとしていた。


ならば、皇子と私を結婚せざる得ない状況にしてやろう。

制圧した領土の内乱に、私と他の皇子たちが赴き、私の皇子以外はすべて戦死した。

新しい皇太子をたてないとならないが、皇子は身体が弱く、また帝王学を収めていない。皇帝も皇子に無理をさせるのを嫌い、表向きは妹との間にできた私との子を皇太子にと望んだ。血筋的には全く問題はない。

公爵家で擁した公子が皇太子になるのだ。その影響は皇帝と言えども無視はできない。そして皇子は2人目の私の子を身篭っていた。皇太子の妹か弟が私生児になるのは、皇帝としては避けたいだろう。

何よりも、最後に残った皇子が、私と結婚したいと望んでいるのだ。

ライルと結婚したいと、そう父である皇帝に懇願する皇子に、とうとう皇帝は私との結婚を許可した。

これでようやく皇子は私の妻になり、公爵夫人と呼ばれる立場になる。


あの結婚式の日から長かったが、ようやく皇子を自分のものにできた。

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