小説(両性) | ナノ

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好きな時に来れば良いと言ったので、ライルは毎夜のようにユインに会いに来ていた。若いだけあって我慢が効かないのか、こう連日のこととなると、内密にしようとしていても周囲にはそれとなく知れてしまう。

相手は知られずとも、ユインに愛人ができたのだと。

「陛下……俺たちのことがばれたら、もう会えなくなりますか?」

「まさか…皇帝が愛人の一人くらい作ったところでか?誰も俺の行動を咎める権利なんて持って無い」

だが歴代皇帝が愛人を持つことが許されていたのは、跡継ぎがいたからだ。跡継ぎがいないのに、愛人遊びに現を抜かしていたら皇帝といえども、臣下から叱責を食らう。

「陛下!皇太子の問題があるというのに、愛人にかまけていらっしゃるのはどういう訳でしょうか?」

「お前達が皇太子、皇太子と煩いからだろう…感謝されこそ、文句を言われるとは思わなかったな」

過去には何十人と寵妃をはべらせていた皇帝もいたというのに、ユインはたった一人作っただけで何故こうも責められないといけないのだろうかと、いい加減辟易してきた。

「陛下我々は、陛下に皇太子を産んで頂きたいとお願いしました。今更女を侍らせた所でそれが叶うとも思えません」

「だから男を選んでやった。副議長、お前の孫だ……文句はないだろう。俺の愛人はライルだ。お前たちの望みどおりな」

掃き捨てるようにそう告げてやれば、信じられないと言うように、一同は目を見張った。

「何だ?俺が素直にお前たちの要望を叶えてやったのに、不満なのか?俺だって皇太子の重要性は認識していたさ。だから、嫌々でも男に抱かれてやったんだ」

「まだ孫は……ライルは12歳です」

「だから何だ?ライルなら血筋も家柄も容姿も、問題無いだろう?お前たちが理想とする種馬そのものだ」

意地悪く微笑みながら、そう尋ねてやった。元老院が寄越した男たちは名家だがいわば権力からは遠い所にいる家柄の出だ。ところがライルは軍閥の出で、父、祖父とも確かな権力の中枢にいる。ユインの相手として歓迎できる相手ではないだろう。

だが、その血筋、家柄と文句のつけられない相手であることも確かだった。皇族の血を受け継いだ、まさにサラブレッドともいうべき容姿。

「どうしてライルをお選びに?……あれはまだ男とも言えません」

「だから良いんじゃないか……お前たちが簡単に押しつけてくる男たちをまさか俺が歓迎するとでも思っていたわけは無いだろう?……本当だったら男に抱かれるなんて死んでも嫌だった。それでもライルを選んだのは俺だって皇帝しての責務を感じているからだ」

流石に長く続いていた国を自分で滅ぼすわけにもいかないからだ。

跡継ぎを作る必要がある以上、誰かを選ばなければならない。だからライルを選んだ。ちょうどライルもユインを好きだというし、一石二鳥だ。

「どうせ放っておいたところで、ライルもそのへんのカマキリのように情事に長けた貴婦人の餌食になるだろう?」

だからユインがライルと関係して何が悪いと目で問えば、ライルの祖父は黙った。彼にしてみれば悪い話ではないからだ。元々こんなふうに詰問してきたのも他の元老院の面々のこともあって形だけのものだろう。彼もライルがもっと大人だったら必ず種馬候補としてライルを送り込もうとしてきたはずだ。

「しかし、副議長の孫ではっ!」

「お前たちに都合が悪いか?……知るかそんなこと。ライルだから我慢していられる。他の男なんか無理やりあてがってみろ……お前等を皆殺しにしてやる」

そう半分本気で薄笑いを浮かべながら放った言葉は真実味があったのだろう。

それ以上の反論はなかった。

「なら……やっと議論に入れるな」

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