1
俺はニートだ。
自慢じゃないが、この部屋に篭ってもう2年目になろうとしている。
正確にはこの部屋に閉じもって539日目になった。
でも、好きでニートになったわけではない。それなりの理由が俺にはあった。
ニートに好き好んでなったわけではないことを、説明したいと思う。
これでも539日前には、前途洋々たる未来が用意されていたように思えた。
それなりの名家に生まれた俺は、同じように名門のお坊ちゃまが集まる名門全寮制高校に入学した。
高等部から入るのってかなり難しいから、俺の偏差値は自慢じゃないが、県内でもトップクラスだった。たぶん、東大も余裕で入れるレベルだったと思う。
俺が間違ったのは、この高校を選んでしまったこと。
そこでヤツに出会ってしまったのだ。
突然だが、俺には前世の記憶がある。
生まれた時からあったものではない。
今は思い出したが、俺は何度人生をやり直しても、ヤツと再会した瞬間に思い出すのだった。
だから、ヤツに入学式で、ヤツが新入生代表で、俺が席に座ってヤツを見上げた瞬間、分かってしまったのだ。
まだ出会ってしまったことを。
そして、ヤツも分かったのだ。俺が俺だって。
嬉しそうに微笑んだ、その笑みは、もう何度も見たものだったからだ。
何度、人生ってやり直しても同じことを繰り返す馬鹿っているんだ。それがヤツだ。
俺は何度も何度も同じ運命を繰り返すまいと足掻くのだが、ヤツは懲りない。同じことを繰り返して、何度も何度も生まれ変わる。
これで、何度目の転生になるのだろうと、俺は涙が出そうになった。
たぶん、他の皆も生まれ変わることがあるんだったら、俺は生まれ変わりの回数が多い。多いというか、人生サイクルが短いので、それに伴って生まれ変わる回数も多くなってしまう。
何で、そんなに人生サイクルが短いって……そう、ヤツのせいなのだ。
それはもう、ヤツとの前世は酷いものなのである。
prev /
next