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2017/11/25 

山田「須田さん。ご飯まだ?」
須田「約束はしない約束でしょ。ちょっと待ってよ。店閉めるから」
山田「大事な話があるんだけど……」
須田「あれでしょ。時計買ってほしいんでしょう。僕だって買ってほしいよ」
山田「時計はもういいよ。そんなんじゃないって」
須田「それより聞いて。気に入りの靴をさ、裏打ちしてもらいたくて持ってったら、いつものご主人じゃなくてね」
山田「ああ……駅前の幸山さん?若いけどしっかりしてるよね。二足持ってったら、何にも言わずにサービスしてくれてたよ。レシート見るまで気づかなかった」
須田「あそこはいつもそうだよ。でさ、雇われのおじさんに変わってて。まあおじさんって言ったって、僕よりずっと年下だけど」
山田「うん」
須田「『これ合皮ですよ。裏打ち三千円。打ったところで底がもたないよ。新しいの買ったら?』って調子なの」
山田「消費世代だね。年、僕くらいでしょ。嫌な言い方だけど、物に対するこだわりを数字でしか決められないんだよ」
須田「『いや。これ五年履いてて、もう修理代は原価よりずっと高いし、僕が履くことで三万くらいの靴になってるんですよ』って反論したかったんだ」
山田「代わりに文句つけてきてやろうか」
須田「そこで幸山さんが帰ってきてさ、『ああ、須田さん。いつものですね。任せてください』ってニコッと笑って。『あと五年はもたせますからね』と言ったときの雇われの顔、見せてやりたかったなあ。山田さんにも」
山田「ふふふ。で、元はいくらの靴なの?」
須田「三千円」
山田「新しいの買えよ!むしろ俺が買ってあげるよ!」
須田「消費世代だね。合理主義だね」ハァ…

山田「時計さ、俺が買ってあげたらね。須田さん捨てられなくなる?」
須田「止まったまま何年も置いとくよ。引き出しの中に」
山田「時計の電池って、相変わらず二年しかもたないんだよなあ。なんでかなあ」
須田「傘と時計は、これ以上進歩しちゃいけないよ」
山田「なんで? あ、雪だよ。参ったなあ、タクシーひろおっか。それともアキちゃんとこにする?」
須田「傘はさ、雨から身を守ってくれるためだけじゃない。人と顔を合わせるのがツラいときにも、役に立つ」
山田「……時計は?」
須田「時計はさ、時間を刻むためだけじゃない。巡りめぐって、また明日があるなって確認するために、そこにいるんだよ」
山田「ロマンチストだねぇ」
須田「だからさ。はい」
山田「……なにこれ。え?」
須田「誕生日の花。すごく時間かけて用意してくれたらしいし、そのお礼」
山田「……」
須田「高いのじゃなくて、すみません」
山田「値段じゃないよ。気持ちだよ!」
須田「もしかして泣いてる?」
山田「泣いてねぇよ。バカじゃねぇの!」グスッ
須田「」フフッ








お粗末さまでした。靴の裏打ちは二足五千円。ヒールだけなら七百円です。十年間で四足持ってって、一足看取って今年一足買い足しました。買値は全部で一万くらいだけど、修理代はたぶん十万越えてるね。バカでしょ?アハッ☆

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