在りし日の風景






 夜間任務に就く前のほんのひととき。

 カカシは火影屋敷に必ず立ち寄りナルトと共に過ごすことに決めている。
 この日も朝方任務から帰ってくると、報告もそこそこにナルトに逢いにやってきていた。

「なぁ、かーしにぃちゃは、くちよせのじゅちゅ、できるってば?」


 天気のいい麗らかな午後。

 ナルトに与えられた部屋の窓を開けると、心地よい風が吹き抜けていく。
 縁側にほど近い柱にカカシが背を預けそこに凭れ掛かると、すぐさまナルトが膝の上に乗っかってくる。小さな手には、忍術大全集巻の一が握られていた。
 ナルトは大好きなカカシの膝の上に腰を据えると、さっきまで読んでいた本を広げる。
 ナルトを抱き抱えるようにして、カカシはナルトの手には大きな本に手を添えてやった。

「もちろん出来るよ?」
「なによべんの?」

 出来ると云われ、ナルトはワクワクとして目を輝かせた。

「んー?俺は犬だねぇ」
「ワンワンだってば?」
「そうだよ〜。ただの犬じゃなくて俺のは忍犬ね。8匹呼び出せるよ」
「8匹も?!かーしにぃちゃスゲーってばよ!!」

 口寄せが出来るばかりか8匹も呼べると聞いて、ナルトは称賛と尊敬の眼差しをカカシへと向けた。すげーすげーと騒ぐ。

「そうかな?んじゃ今度呼んで見せてあげーるね♪」
「うん!!ナルでも仲良くなれるってば?」
「あぁ。みんないい奴ばかりだから、すぐ仲良くなれる〜よ」

 良かったとナルトはニッコリと笑った。
カカシも一緒に微笑む。

「なぁかーしにぃちゃ‥。いつかナルにも出来るようになるかなぁ?」

「んーそうだねぇ。ナルが大きくなって、忍者になれたら、きっと出来るようになーるよ」

 不安そうに見上げるナルトに優しく微笑んで、幼い身体をぎゅっと抱きしめた。
 するとナルトも安心して、カカシに嬉しそうに頬摺りをすると身を預けてくる。

「ナルね、かーしにぃちゃが大好きだってばよ」
「ありがと。俺もね。ナルの事大〜好きだよ」


―それは過ぎ去りし日の、
いつかの風景―





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