木ノ葉カンパニー支社ビルの最上階。
スイートルーム張りの、超がつくほどの素晴らしい景色が拝めるこの場所は、この支社の最高権力者が君臨する部屋である。
今日も朝から仕事に勤しむこの部屋の主は、傍らに佇む可愛らしいし秘書を眺めてうっとり目を細めた。
ブラインドの隙間から差し込む光に反射する、綺麗な金髪を眩しげに見つめる。
主の熱い視線に、全く気がつかないのか、傍らに佇む秘書は、バインダーに挟まれた本日の業務内容を、呪文を唱えるかのように何度も呟いていた。
「ナールト。覚えてるトコ悪いんだけどねぇ。今日20時の会食、先方の都合で20日に変更になったから」
そうあっさりと云ってのけるこの部屋の主に、ナルトと呼ばれた少年は、サファイヤ色の眸で主の顔を睨んだ。
「はぁ?また変更だってば?そんじゃ…今日の予定は…」
云われた情報を元に、ナルトは手元のスケジュール管理表を修正していく。
「それでさナールト♪夜の予定空いたしさ。今夜一緒にディナーでもどう?」
真剣にスケジュールとにらめっこしているナルトを、カカシは膝の上に引き寄せる。
「うわぁ!!いきなり何すんだってばよ!!」
慌てて膝から降りようとするナルトをカカシは抱き寄せた。そして満面な笑みを浮かべる。
「ねぇナールト。用事ないならデートしようよ。いいでしょ?」
甘えた声でそう強請ってくるカカシをどうにか諦めさせようと、ナルトは机の上に放置されたままの書類の山をチラッと見た。
「終業時間までに仕事を真面目に片付けてくれんなら、いくらでも行ってやるってばよ!!」
会食が1つ潰れたぐらいでは、この有能な支社長の仕事量は対して変わらない。
寧ろ社にいる分、いつもよりいろんな書類処理が回ってくる。今だって机の上には重要種類がたまっていた。
これなら終業時間までに本日の仕事を完璧に終わらせるのは、いくら有能なこの支社長でも無理なはず…とナルトは高を括って、宣言したのだ。
なのに。
何故かその宣言を聞いた途端、カカシはにんまりと満足げに笑った。
「そう。なら仕事なんか早く片付けて、お前をじっくり口説くとしようかな♪」
いつの間にか緩まされていたネクタイとシャツの隙間から覗く素肌にカカシは軽く口付けをすると、ナルトを膝から解放する。
柔らかかった表情を厳格な経営者の顔つきに変えて、書類に目を通して判を押してゆく。
「あ、ナルト」
「なんだってば?」
乱れた衣服を整えながら、ナルトはカカシの方へ視線を向けた。
「今日19時に予定入れておいてくれる?」
「? 何のだってばよ?」
「ん〜?もう忘れちゃったのか?お前とのデートでしょ〜よ」
さっきまでの厳しい顔つきは何処へやら。
ナルトを見つめるカカシは、だらしなく表情を崩している。
「嘘とか冗談でした、はナシだからね?約束を守ってくれるのなら、この前連れていったレストランに、また連れていってあげるよ?」
お前気に入ってたでしょ?
と殊更優しい声音で話しかけた。
自分なんかとデートしたいが為に、本気で仕事を終わらせようとしているカカシに、ナルトは心底驚いた。
同時に些細なことを覚えていてくれた事にちょぴっとだけ感動して、なんだかやけに嬉しくなってしまう。
「1分でも過ぎたら、デートはナシだかんな」
強気でつれない態度をしつつも、ナルトはカカシの仕事が早く片付くように、一生懸命手助けをした。
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