可愛いわがまま

「すずちゃん!お願いだからどこにも行かないで、ずっとそばにいるって約束したよね?君がいないと俺はもう生きていけないんだ!すずちゃん……!」
「翔さん、あの……ちょっとうるさい」
「ごめんそうだよね、お粥作ってくるね」

 すずちゃんが熱を出した。ちょうど仕事が休みだからつきっきりで看病をしているのだけれど、すずちゃんは少し迷惑そうだ。心配なだけなんだけど、どうして伝わらないかな。ちょっと拗ねながらキッチンに入る。早く風邪が治るように、野菜もたっぷり入れた翔さん特製のお粥。すずちゃんだけの特別メニューなんだけどな。

「翔さん」

 突然声が聞こえて驚いた。ベッドにいるはずのすずちゃんが何故か後ろに立っている。真っ赤な顔で目も潤んでいるから熱は下がっていないだろうに。

「どうしたの?喉渇いた?」

 すずちゃんは首を振る。とにかく寝ないと、と一歩近寄れば、すずちゃんは俺に抱きついてきた。ぎゅうっと胸に顔を埋めて、背中に回った手はまるで縋り付くようで。ああ、甘えたかっただけか。よしよし、と髪を撫でてあげた。

「……一緒にいて」
「お粥食べないと。ね?すぐ行くから寝てて?」
「……いやだ」

 いつもほとんどわがままを言わないすずちゃんがこんなにわがままなのは珍しい。きっと今の俺は顔面が蕩けそうなほどニヤニヤしているだろう。悠介に見られたら気持ち悪ぃって言われる。

「んー、じゃあすぐ作っちゃうから待ってて」

 すずちゃんは少しだけ離れて、今度は俺の背中に抱きついた。そのままお粥を作る。背中に感じるすずちゃんの体温はいつもより高くて心配なのに、わがままで可愛いすずちゃんもたまらない。俺に移ったらどんな看病をしてもらおうなんて考えながら、俺はニヤニヤするのを必死で堪えたのだった。

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