王子様の憂鬱のお話

 下着越しでも分かるほど、奈々美ちゃんの中心は濡れていた。それが嬉しくて、俺は調子に乗ってすぐに下着に手をかける。焦らす余裕もなく、奈々美ちゃんを寝かせて脚を大きく開いた。

「っ、恥ずかしい……」
「大丈夫、綺麗だから」

 内ももを撫でながら中心に舌を伸ばす。触れた瞬間奈々美ちゃんの体がびくんと跳ねた。

「あああっ、」

 じゅるじゅると音を立てて蜜を吸ったり、上の突起に吸い付きながら舌でチロチロと舐める。奈々美ちゃんはシーツを掴んで必死に快感に耐えているようだった。眉間に寄った皺がまたセクシーでたまらない。

「っ、あ、いく、」

 奈々美ちゃんの体に力が入っていく。はっ、はっ、と浅く荒い呼吸の合間で、奈々美ちゃんの「イク、」という小さな声が聞こえた。

「っ、……!」

 一際大きく跳ねた体。次の瞬間力が抜けて、くたっとなった。
 余裕のない俺は奈々美ちゃんを気遣うことすらできなくて。濡れそぼりひくひくと痙攣するそこに指を挿し入れた。

「ひっ、う、」
「すごい、中までひくひくしてる」
「は、ああ、ふ、」

 真っ赤な顔、閉じられたまぶた、ハクハクとひくつく唇。初めて見た好きな子の感じた顔。蠢く中は俺の指をきゅうきゅうと締め付けて。

「挿れたらきもちよさそう」
「ん、も、きて……?」
「ごめん、余裕なくて」

 苦笑いする俺を奈々美ちゃんが抱き締める。柔らかい肌も、シャンプーの香りも、全部、全部。

「ずっと、こうしたかった」

 俺には夢の中のような出来事だ。

「ふっ、ん……」
「はぁ……」

 抱き合ったまま繋がる。俺が座って奈々美ちゃんが腿の上に座る体勢で。奈々美ちゃんの顔が見える。キスもできる。触れていないところがないほど、ぎゅっと抱き締めて離れたくない。

「好き」
「ん、俺も」

 深いキスを交わしながら、何度も腰を打ち付ける。熱い中は俺の自身を包み込んで、締め付けてくる。気持ちよくて癖になりそうだ。

「あっ、ん、ああっ」
「奈々美ちゃん」
「はっ、あ、あっ」
「名前、呼んで」
「んん、あ、ゆき、とさ、」
「……ん」

 ぐちゅぐちゅ、パンパン。卑猥な音が部屋を満たす。奈々美ちゃんの部屋で、奈々美ちゃんのベッドで、俺は今、奈々美ちゃんを抱いているのだ。
 熱く、深く。奈々美ちゃんの中を犯して。奈々美ちゃんがイッたのと同時に、俺も果てたのだった。

***

「あー、何か勘違いさせたみたいでごめんね」

 次の日、いつものように付いてきた相川が奈々美ちゃんに謝った。俺としては相川のおかげで奈々美ちゃんの素直な気持ちを聞けたという思いもあるのだが。

「いえ、おかげで素直になれたので」

 ああ、やっぱり奈々美ちゃんは女神に違いない。俺の脳と下半身にダイレクトに攻撃してくる。可愛い。

「いやあ、俺も嬉しいよ。だって幸人、高校生の頃から好きだったもんなぁ。ずっと脚見てたもんなぁ」
「……おい」
「言わなくても俺には分かったよ、幸人って実は脚フェチだって」
「違う!」
「あはは、知ってるので大丈夫ですよ」

 奈々美ちゃんは朗らかに笑う。違うのに。俺が好きなのは奈々美ちゃんの体全部なのに。もちろん、心も含めて。

「触らせてやってね」

 それはいい提案だけどな、相川。

「先輩になら」

 やっぱり奈々美ちゃんは女神だ、天使だ。溢れ出る劣情を必死で抑えていたら奈々美ちゃんが俺を見て恥ずかしそうに笑った。
 ああ、可愛すぎておかしくなりそうだ。俺はきっとずっと奈々美ちゃんに心臓を撃ち抜かれ続けるのだと思う。それは俺にとって、幸せすぎる憂鬱なのだ。
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